trance | ナノ



 最近、妙な視線を感じる。昼休みで地上に出ている時、帰路についている時・・・。自分なんかにストーカーがつくわけないとセオは思っているが、それでもこれは勘違いな気がしない。静かな道を歩いている時はよくわかる、決まっていつも同じ足音がついてくる。勘違いだったとしても、いい気持ちにはなれないものだ。

 終業時間、一日の仕事が終わった。タイムカードを切って他の職員達と一緒に事務室を出る。帰り道、またストーカーに遭うのだろうか、そう思うと足が重い。タツベイとガバイトをボールから出してお供にしているから気は紛れても、毎日毎日となると・・・。

「はー。」

 思わずため息がもれる。すると隣を歩いていたノボリが目をパチパチさせて彼女を見た。

「どうしたのですかセオさん・・・お疲れですか?」
「疲れてるのもありますけど、ちょっと・・・。」

 話しにくいなぁと思いながら腕を組むセオ。ノボリは人が少ないところに行ったら話せますか、と、セオの腕を引いて裏道にそれた。こっちでよかったですか?とノボリに聞かれてセオはうんうんと頷く。

「で、何が有ったんです?どうやら深刻な問題のように思われますが。」
「わたしの思いすごしだと思うのですが、先週からストーカーに遭っているようで。道端でしょっちゅう同じような視線を感じるんです。ですから帰り道が嫌だなぁって。」

 セオはモンスターボールからタツベイとガバイトを出して一緒に歩かせる。『がぶぁあ!』ガバイトはセオの通勤かばんを持って、一緒に帰る事が嬉しいと言っているように鼻歌を歌い始めた。

「ストーカーですって!?セオさんを狙う悪質な者がこの街にいるというんですか!許せません!どこの誰なんです?!」
「それが分からないから困ってるんです!正直、ストーカーかどうかも分かりませんし・・・今後ろに居ますけれどね。」
「なんですって?!・・・・・・シャンデラ、偵察に行ってきてください。」

 ノボリのモンスターボールからシャンデラが飛び出て、ふわふわと2人の背後を確認しに行った。すぐにシャンデラは戻ってきて、『でらしゃん、でらしゃ』とノボリに何か報告している。すると彼の眼の色は変わった。

「若い男がついてきているようですよ、セオさんのストーカー決定ですねこれは、なんて卑しい奴なんでしょう!セオさんを悩ませる輩なんてわたくしが吹っ飛ばして参ります!」
「ままま待ってくださいノボリさん大丈夫です!まだ何も被害はないですし大丈夫です!あとで警察に届けておきますから!」

 実際にストーカーがいると知ってセオは安心した。ストーカーがいる事自体には安心出来ないが、いると知ればこれからはちゃんと警戒が出来る。目がイッてしまっているノボリさんを、大丈夫ですからとなんとかしてなだめる。ポケモン達もいるし、なによりも今日はノボリさんがいるから安心ですと言うと、彼は心なしか嬉しそうな顔をしてくれた。

「わたくし、セオさんのお役に立てていますか?」
「ええ、勿論です。ノボリさんはいつでもわたしを助けてくださいますよ。今日だって。」
「そうですか!はああ・・・とても嬉しいですそう思っていただけるなんて。今日はセオさんをご自宅までお送りいたします!」
「え、いいんですか、ノボリさんお家の方向はどちらで・・・?」
「お気になさらないでくださいまし!セオさんを危険な目に遭わせないためでございます!!」
「それは嬉しいです・・・。」

 セオさんが喜んでくださった!とまるで忠犬の様なノボリ。どこかで見たことが有るかと思ったら、ボーマンダがまだタツベイだったころこんな感じだった。
 1週間ぶりに安心して帰ることができたし、楽しい帰路だった。セオはノボリに心底感謝して、彼を見送った。






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