trance | ナノ



 エルドールとは、ありがたいことにまた仕事で縁があった。今日はとある大学の学園祭のリハーサルで、そのステージイベントのオペを頼みたいと瑠良のバイト先に発注があった。今日もおじさん先輩……山下さんとともに、瑠良は機材を運んで大学へ。そのステージイベントに、エトワール・ヴィオ・スクールの1期生「天上天下」がゲストで呼ばれていた。瑠良達が直接仕事を請けたわけではないが、まあ同じようなものであろう。
 今回は3期生はいないが、瑠良の脳裏にはどうしてもリュカという青年のことがちらついて離れない。今日は彼はいないと分かりつつも、どこかにいるのではと思ってしまう。
 今日は学園祭の準備日。ゲストの天上天下をはじめ、ステージ発表をする学生団体たちとのリハーサルが続く。マイクは山下さんが担当で、瑠良はとにかくCDのポン出しだけがお仕事。

「山下さん、瑠良さん、お疲れ様です。」
「お、朝比奈さん。先月はどうも。」
「今日もよろしくお願いします。これ、天上天下が歌う曲のカラオケCDです。」

 プロデューサーの柚希の後ろには、年齢は瑠良や学生達と一緒か少し下くらいではありそうだが、オーラが違う4人組。CDのジャケットで見たことのある、天上天下の4人だ。

「歌う曲は3曲で、あとアンコールがこれです。」

 柚希からの指示をタイムテーブルに書き写す。難しい作業はないので、楽しく仕事が出来そうだ。
 学園祭の実行委員が天上天下と柚希に挨拶をし、進行について確認をはじめた。瑠良は次のリハーサルが始まるまで待機。

「学園祭かー、楽しみだな!」

 そう思っていたところに、後ろから明るい声が聞こえた。誰だろう、と思って振り返ると、そこには見覚えのあるアイチュウたちがいた。今言ったのはFFの愛童星夜、その隣には湊奏多。そしてIBのノアと……リュカもいる。まさか彼がいるとは、と、瑠良は思わず目を背けて前を向きなおす。同じアイチュウだ、先輩の仕事を身にくることもあるかもしれない、とは、思っていたが、本当に来ているとは。なんといって話しかければいいか、最良の答えが分からないので見なかったことにしておこう。
 しかし背後からつかつかと近づいてくる足音。さすがに無視できないと思って振り向くと、案の定こちらにやってきたのはリュカだった。

「瑠良さん!」
「わ、えと、リュカさん、お久しぶりです、また会えましたね。」
「良かった、会えた。仕事か?……そうだよな、その感じを見ると。仕事をしてる様子、見ていていいか?」
「天上天下さんたちのお仕事を見ましょうよ。」
「……そうだな。」

 そういって瑠良の隣に立ったままステージの方を見るリュカ。メンバーのところに戻らないんかい、と、瑠良は心の中でつっこむ。ステージでは天上天下が並んで立ち位置の確認をはじめていた。そろそろ自分も出番だな、と思って、瑠良は先ほどもらったCDをデッキに突っ込んだ。
 リュカは立ち去らないどころか、ノアやFFの2人もこっちに来てしまった。もっと前の、客席のほうで先輩の仕事を見ればいいものを。

「じゃあ一曲目お願いしまーす!」

 ステージ下にいる柚希から声がかかる。瑠良ははーいと返事をしてCDの再生ボタンを押した。事前に天上天下を調べた時に聴いたことのある『花鳥風月』のイントロが流れ始めた。なぜか星夜が1番興奮したように叫んでいた。リハーサルはスムーズに進んだ。柚希や天上天下のメンバーに音とマイクのバランスを取ってもらいながら、アンコール合わせて4曲のチェックを終えた。

「へー、そうやって音楽とかマイクとかいじってるんだな。」

 声をかけてくれたのはリュカ……かと思えば、天上天下をじっと観ていたはずの星夜だ。彼は瑠良や山下さんの操作する機械を眺めている。

「星夜君は裏方に興味あるかい?」

 自分の仕事に興味を持ってくれて嬉しい、と、山下さんは笑顔で訊いた。

「ああ!それにリュカが熱心に観てるから何がいいのかと思ってなー。」
「お、オレは別に見てなんか……。」
「ガン見してただろ。」
「瑠良さんを見てただけだ。」
「なーんだ。」

 なにが、なーんだ、なのか。リュカの発言に、また瑠良の体温が上がった。目をそらす瑠良だったが、横でノアが笑いをこらえているのと奏多がニコニコしているのが目に入って、余計に恥ずかしくなってしまった。

「なぁ瑠良さん、明日の学園祭の予定は空いているか?ステージ発表があるのは明後日だと聞いた、だから明日はオレと学園祭を回ってほしい。」
「ん!?」

 唐突なデートの誘いにドキッとする。まだリハーサル中だし、隣に山下さんがいるのに。幸いにもリハーサルは天上天下の振り付け確認で停滞していたところだったが。ただ山下さんは、ギョッとした瑠良が彼を確認したときに、同じくギョッとした顔をしていた。

「瑠良ちゃんは明日オフだよ、僕もだけど。次の仕事は明後日のステージ発表だけだよ。」
「そ……そういうことです。」
「じゃあ!」
「でもアイドルの卵と歩いてて妙な噂立てられたくないですし……。」

 それは瑠良の素直な考えだ。スキャンダルになったらアルバイトができなくなるだろう。自分はまだそれだけで良いが、リュカは干されてしまうかもしれない。仕事をなくしてアイドルになる夢を諦めなければいけなくなるかも知れない。そんな責任重大なこと、任せられたくない。

「しっかり変装する。瑠良さんには絶対に迷惑をかけない。」
「わたしというより、リュカさんが……。」
「大丈夫だ。」
「それでしたら……。」
「……よし!」

 結局押しに負けてしまった瑠良が、それってどう考えてもデートだよな、と、確信したのは、リハーサルが全て終わり、機材の電源を落した後だった。リュカは天上天下のメンバーたちと一緒に帰ってしまったので、確認することはできない。というか、今更確認するのも変な気がする。



 服装に悩んだのはこれがデートだからではないぞと瑠良は自分に言い聞かせる。白いブラウス・紺のカーディガン・黒のスカート・少し高さのある靴。悩みに悩んだ結果は、大学に着て行く服のローテーションで使っているものから引き抜いただけの、普通の格好であった。ただ髪型だけはちゃんと気を遣っておいた。バイト中は動きやすさ重視にしていたが、今日はちょっとでも女の子らしさが出ますように。
 大学に着いたのは9時20分。集合の10分前である。門前にはすでにお客さんがたくさんいて、10分後の開場を楽しみに待っているようだ。リュカの姿は見えない。この大学に外国語学部があるためか、外国人のお客さんも多く見られる、これならリュカもまぎれられそうだ。

「おはよう、瑠良さん。」

 きっかり9時30分に現れたリュカ。紺色のポロシャツに、黒のチノパンを履いていて、あまり目立たないような色合いをしている。……しかしこれはペアルックのような……。彼は変装のために、ニット帽をかぶり、茶色いレンズのサングラスをかけている。赤い色の目は目立たなくなっていた。

「……トレビアン……。」

 彼は瑠良を見つけて一言。意味は瑠良にも分かる……すばらしい、か。

「スカート、似合ってるな。髪もいつもと違ってまた良い。」
「あ、ありがとうございます……。」

 率直に言われたものだから照れてしまう。瑠良は照れ隠しに、スカートのすそをちょっとつまんで、見よう見まねのバレエのレベランス。リュカの頬が少し赤くなり、サングラスの向こうで目が見開いたのが分かった。だからそういう顔はやめてください……。

 大学には講義を受ける以外の用事を作りたくないタイプの瑠良は、自分の大学のお祭りに参加したことがないし、お客さんとして行ったこともない。ましてやサークルなど入っていないから、彼女の大学生活はほとんどの人が乏しいものだと思って見るだろう。瑠良は学外での楽しみを沢山持っているので、特段自分の青春について不満はないが。
 校門をくぐって直ぐのテントでパンフレットをもらった。パンフレットの中身を見た感じ、外は屋台で埋め尽くされているようだ。たしかに、市場よろしく客引きの声が聞こえてくる。『お客様の満足度ナンバーワン屋台』を決めるコンテストも開くらしい。

「……焼きとうもろこしがある。」

 パンフレットを見ていたリュカがぼそりとつぶやいた。

「何か気になるものがありましたか?」
「食べたいものがある、来てくれ。」
「はい。」

 リュカはパンフレットを見ながらスタスタと歩き始めた。彼は周りよりも頭半分ぶんほど背が高いので見失うことは無いが、足の長さと歩幅がだいぶ違うので、瑠良は自然と早歩きになってしまう。当初からのリュカの積極性には未だに吃驚しているが、こういうところで女の子の扱いに慣れていないのが見え隠れしていて、瑠良はそんなところが良いなと思ってしまう。なんだかんだ彼女も、少しずつリュカになびきつつあり、友達として付き合っていくくらいなら問題ないかと思い始めている。

「あった。」

 立ち止まって見上げたのは『焼きとうもろこし』の屋台。焦げた醤油ととうもろこしの香りが周りの屋台を圧倒している。

「とうもろこし、お好きなんですか?」
「ああ、日本に来て知った。こんな豪快で美味しいものは知らない。」

 周りの食べ物には目もくれなかったリュカ。その目は煙の向こうで輝いていた。フランスでとうもろこしといったら、コーンスープのようなささやかなものが主だろうか。そうするとこの焼きとうもろこしとは、鳥の丸焼きともなんら変わらない形態か。
 リュカは焼きとうもろこしを2本注文している。有無を言わせずに自分にも食べさせる気かと瑠良は身構える。

「美味い。」

 1つ目を受け取って、受け取ったそのまま口に運ぶリュカ。行動が早い。屋台の人がもう1つ差し出す、それはリュカから瑠良に手渡された。白くて細長いトレイの上に乗せられた、熱々で醤油でじゅわじゅわになった焼きとうもろこし。これは、絶対に、美味い。リュカの目など気にせずにかぶりつく瑠良。一口かじっただけで、とうもろこしの旨味と醤油の香りが口いっぱいに広がった。

「おいしーい!」
「だろ。」
「焼きとうもろこしって自分から選んだことないかもです。美味しい、止まらない。」

 瑠良とリュカは店の横で並んで焼きとうもろこしを食む。屋台の食べ物は食卓に並ぶ同じ料理よりも特別感が強い。今まさにその効果で絶品に感じている。……なんて口に出したら、屋台の人に悪いが。熱心に粒1つ残さないようにがっついているリュカの食べ方が意外で、瑠良はこっそり笑う。フランス出身というから、食事のマナーには厳しいのかと思っていた。郷に入っては……ともいうし、屋台の食べ方に準じているようだ。

「リュカさん、口の周りに焦げたソース付いてますよ。」
「ん、ああ。」

 唇や頬など、とうもろこしが当たった横一文字に茶色い跡が点々とある。

「手でこすったら汚れちゃいます。」

 瑠良はポケットからハンカチを取り出し、リュカの頬に少し強めにあてる。リュカは頬を赤らめながらもおとなしくされるがままになっていた。これでよし、と瑠良が手を離すと、リュカは拭かれたところを触り、その触った手のひらを確認する。

「大丈夫です、綺麗になりましたよ。」

 取れたかどうか確認したのだと瑠良は解釈したが、リュカとしては瑠良にハンカチ越しではあるが触ってもらえた感動をかみしめていた意味合いが強い。

「ありがとう。……瑠良さんはどこか行きたいところあるか?」

「わたしはわたあめが食べたいです。近くにわたあめの屋台があるので行ってみませんか?」
「ああ、行こう。……わたあめか、瑠良さんはブラックコーヒーを飲んでいるところしか見たことが無いから、甘いものは苦手なのかと思っていた。」
「コーヒーは眠気覚ましで飲んでいるんです。甘いものは大好きですよ。」

 というか、飲んでいるものをチェックされていたか。そうと知っていれば、ミルクティーとかカフェオレとか、もう少し可愛げのあるものを飲んだのに。コーヒーは効くかどうかは別として、眠気が覚めるかと思って飲んでいるだけで、特段好きなわけではなく、むしろ苦くて少し苦手だ。山下さんが好きで飲んでいるのを見て真似したというのもあるが。

「良いことを聞いた。」

 そういってにやっと笑うリュカ。どういう意味合いの笑顔か、その意図をはかりかねる瑠良は首を傾けるばかりだ。
 ちょっと歩いたところにあったわたあめ屋はかなり盛況だった。2本形成された列は、隣の出店を圧倒する長さである。なぜこんなに人気があるのかと思ったが、出来上がったわたあめを見て何得した。虹色なのである。これはオンスタ女子が黙っていない。実際、出来上がったわたあめを撮り合いっこしている女子グループやらカップルやらがいる。

「あー……これは難しいですね。」

 わたあめは食べたいが、この列に並んでまでというほどではないし、リュカを待たせるのは悪いからやめておこう。

「並ばなくていいのか?」

 諦めモードに移行していた瑠良にリュカが問う。優しい一言に心を動かされたが、やはり気が引ける。

「リュカさん待たせるの悪いですし、わたあめはまた今度にします。」
「オレは平気だ、瑠良さんと待つなら。」

 リュカの名前を出したのがよくなかったのかもしれない、逆に気を遣わせてしまったか。しかし自分と待つなら、と言ってくれたリュカの言葉が嬉しいような恥ずかしいようなで照れてしまう。自分でもまた顔が熱くなるのが分かった。

「……リュカさんってわたしのこと大好きですよねー……。」
「ああ、好きだ。」

 照れ隠しでいじったつもりだったのに。至極当然そうなリュカの反応に、瑠良の顔はまた熱くなった。

「わたし、リュカさんに好かれるようなところないと思うんですけど……。」
「……一目惚れだった。」
「ひとめぼれ。」

 となるとあのマイクの事件だろうか。というかそれくらいしか思いつく接点がない。あの時のリュカの赤面は良く覚えている、整った顔が可愛くキョトンと表情を変えて、なんかいいなと思ったから。しかし、真面目なリュカから一目惚れという言葉が出てくるのは意外だった。もし一目惚れだったとしても、もう少し慎重に行動するタイプに思えていたし。いきなり距離を詰めるような行動を取るよりは、ゆっくりと友達からはじめるような。知り合った当日に一緒に帰り、また次会った時に少し強引にデートの約束を取り付け、と、なかなか行動派である。

「楽屋に入ってきた時の笑顔に胸を打たれた。」
「あ、マイクより前なんですね。そんな、お仕事用の顔だったのに。」
「一緒に帰ってやっぱりいいなと思ったし、昨日も今日も好きになった気持ちが変わらない。」
「そんな、リュカさんに笑顔を向ける女の子なんてたくさんいるじゃないですか……。」
「それに優しかった。オレの失敗を咎めるどころか、先に心配をしてくれて。」

 瑠良はぐっと黙った。あれは完全に仕事用の応対だった。物よりも出演者の心配をするのは当然の対応だと習っていた。それを優しかった、と言われると、自分の本質ではない部分なので喜びにくい気もする。しかしあれを社交辞令だとは「客」に対して言えるものではない。何より好いてくれたリュカに失礼だ。彼は若いが芸能界に足を踏み入れている者だから、業界のお世辞みたいなものには慣れているだろうと思いたい。もしそれに気づいていないなら、純粋すぎて不安になる。

「物より人のことを心配するのは当たり前のことです。」

 それでも口をつぐんでいられない瑠良はそれだけ言った。遠まわしに特別なことではないと言ったつもりなのだが、リュカはその心意気がまた気に入ったらしく、わずかに頬を紅潮させた。

「そういうところが好きだ。」

 なるほど、自分に優しくしてくれたから好きになった、というわけでは無さそうである。
 瑠良だってリュカに好かれているのは嫌なわけではない。むしろ嬉しい。のだが、瑠良は初対面の時からリュカたちはお客さんだとしか見ていなかった。昨日、このデートに誘われて意識はし始めたが、付き合うかどうかといわれるとまだNOだ。

「困らせているのは分かってる。今すぐ返事が欲しいとか、付き合って欲しいとは言わない。」
「……はい。」
「でも、もし瑠良さんがよかったら、こうやって一緒に出かけて欲しい。もちろん迷惑はかからないようにする。」

 せめてそれだけでも許して欲しい、とまで言いそうなリュカの表情。眉間に眉が寄って、眉尻は少し下がっていた。
 軟派な芸能人から食事でもどうだと誘われたり、べたべたされたりなんていう経験もあるが、リュカほどに真剣な人は居なかった。

「また遊びに行きましょう。」

 社交辞令のつもりはない。それが通じたのか、はたまた純粋なのか、リュカは瑠良の返事に喜び、眉間の皺を消した。客とオフで会ってはいけない決まりはないし、昨日は山下さんも行ってこいと乗り気だった。あとはエルドールがなんと言うか、なのだが、NGと言わないのなら、こうして一緒に居てみたい。そうしてリュカのことを知っていけば、もしかしたら通じ合えるかもしれないし。

「列、短くなってるし並ばないか?」
「リュカさんが良いなら。」
「オレは良いに決まってるだろ。」

 にっと笑うリュカに心臓を持っていかれそうになる。単純な自分が恨めしいが、悪い気はしない。多分、障害は少ないと気づいた瑠良はこのまま加速してしまうのだろう。
 前に並んでいた3組が会計を終え、瑠良とリュカの番になる。わたあめの機械で大きなわたあめを作るおじさんが、片手を出して代金を乗せさせようとする。リュカが財布を探すのが横目に見えたので、瑠良は慌てておじさんの手に500円玉を乗せた。

「……オレが払うつもりだった。」
「そうはさせませんからね。」

 おじさんから渡されたカラフルなわたあめに、瑠良は目を輝かせた。すると横から、カシャ、と、シャッターの下りる音。見るとリュカがスマートフォンを構えていた。テンションのあがっている瑠良はレンズに向かってピース。再びシャッターが下りる。

「写真、送るからLIMEのID教えてくれ。」
「お、策士ですね。」
「今思いついた、写真はオレが眺めるだけのつもりだった。」
「……眺めるって。」

 ため息をつきながらも、瑠良はスマートフォンを取り出してLIMEのアプリを起動させる。IDを読み上げてリュカに伝えると、直ぐにLucasという名前と見覚えのあるベースギターのアイコンのアカウント……リュカと思われるそれからメッセージスタンプが送られてきた。よろしくと言いながらサムズアップをしているウサギだ。

「きました。」
「登録頼む。」
「はい。」

 続いてわたあめに夢中になっている自分の写真と、ピースサインの自分の写真が送られてきた。せっかくだから最初に撮られたほうの写真は、少しぼかしてオンスタに上げておこう。

「食べますか?」

 瑠良がわたあめを傾けてリュカに向けると、彼は何も言わずにわたあめに食いついた。手で千切ってくれるだろうと思っていた瑠良は赤面。フランスだとこれが普通なのかとか、この積極性はなんだとかぐるぐる考えるが、リュカの「美味い」と言う笑顔で全てが吹っ飛んだ。明るい未来は近い気がするな、と、瑠良は心の中でデレっと笑った。






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