trance | ナノ



「おはようございます、セオさん。早いですね。」
「おはようございます、ノボリさん。今日は始発に乗るので、出来るだけ早くと思いまして。」
「そうですか、良い心がけです。本日も安全運転でお願いしますね。」
「もちろんです。」

 セオとノボリは白線の内側に立ち、線路の向こうの壁をじっと見ている。2人揃って、その場から動けない、少々気まずいのだ。ノボリが再び口を開く。

「今日も寒いですね。」
「ええ、地上も地下も冷えててイヤになります。」
「車両に入れば暖かいのですが・・・。」
「そうですね・・・。」

 会話、終了。線路の奥から吹く風で、頬が冷たい。セオはおもむろに屈伸や背伸びを始めた。朝礼まで、あと1時間30分はある。そしてあと30分もしないと、他の駅員はやってこないだろう。そういえば、クダリはどうしたのだろう。

「あー・・・。」

 ノボリが口を開いたので、セオは動くのを止めて素直に立った。

「セオさんはジョウトから来られたそうですが、寒さには強い方ですか?」

 コツコツと階段を下りる音がホームに響いた。誰か来たらしい。

「元々シンオウ地方生まれなので、耐性はあります。ずっと寒いところだったので。」
「へえ、シンオウ生まれだったのですか、色々な地方を経験なさったのですね。」
「はい、カントーもよく行きます。大体はリニアで毎日行き来するくらいですが。」
「ああリニア、あなたからリニアの話を聞きたかっ、た、」

「おはよう!おはようセオ、おはよー!」
「おはようございます、クダリさん。」
「ねえ、寒いから紅茶淹れて?」
「いいですよ。」

 いきなり現れたクダリは、セオがノボリと話している最中だったというのに気も留めず、彼女の腕を引っ張って事務室に向かった。

「ノボリさん、お話はまたあとで。」
「そうですね。コーヒーをお願いします。」
「あー・・・。」
















(11.05.2010)





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