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P.M8:20 グロズニィグラード 東棟の食堂にて


 今夜は特別に食堂が混んでいる。各部署の休憩時間がかぶってしまったらしい。一歩出遅れたか、と、オセロットは苦い顔をした。とりあえず、料理を持って適当な席を見つけて座ろうとした。

「向かいに座っていいですか。」
「どうぞ。」

 相手の顔を見ずに声を掛けたものだから、帰ってきた声にはっとした。アルマーズ少佐だ。彼女がここにきてから1ヶ月以上、オセロットにはタイミングがなく、一度も彼女と話したことがなかった。

「これはアルマーズ少佐!」
「・・・ああ、はじめまして。」

 これは良いチャンスにめぐまれたものだ、とオセロットは喜び、手を叩いて座った。

「山猫部隊のオセロット少佐です。はじめまして、アルマーズ少佐。」
「君がか・・・噂はかねがね聞いてる。いつも活躍しているって。」
「光栄です。」

 同じ階級でもセオの方が年上、おのずとオセロットは敬体・セオは常体になる。彼女は初対面でも敬語を使おうとは気にしないようだった。

「すぐ挨拶に向かいたかったのですが、生憎任務が建て続いていまして。タイミングが見つけられず遅くなってしまいました。」
「気にしないで、平気だ。忙しいのはどこもだし仕方ない。」

 思ったよりも話しやすい人だとオセロットは思った。あぶなく、初日の挨拶の時のあの固いイメージでくくりつけてしまうところだった。

「一方的にだけど君のことは知っていたよ。毎晩、訓練場で拳銃の練習してるね。」
「え!なんでそれを・・・。」
「夜勤前に練習場の前を通ると聞こえるんだ。」
「ご、ご存知だったのですか・・・。」
「見ていると百発百中じゃないか、あの独特の構え方は格好いい。」
「か、格好・・・いい・・・ですか・・・?」
「え?」

 オセロットの頬が段々赤くなるのが分かる。褒められたのがよほど嬉しかったらしい。

「そういう風に言われると照れます・・・。」
「可愛いなぁ。」
「可愛いってどういうことですか!」

 まだまだ伸び盛りなのだろう、褒められて照れるところを見ると少佐とは言えまだ子供っぽいところが残っているなと、セオは思う。
彼女は夜勤があるからと、食事を済ませると通信室に戻って行った。オセロットはしばらく、セオとの会話の余韻に浸っていたらしい。






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