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Noble Mind pierces through the world -DEA- ... 18


 康一が露伴と用事があるということで、3人の会合は昼食を食べて直ぐに終わった。セオにとっては好都合、今こそジョルノに訊きたいことを言える。食後のコーヒーをトニオにサービスしてもらい、2人でのんびりしながらも、セオの心臓は変わらず早鐘を打っていた。

「・・・ジョルノのお父さん、本当に、ディオ・ブランドーなんですか?」
「そうですよ、驚きました?」
「驚きました。」

 ジョルノは普通の表情、いつも見せている、少しだけ口角の上がった品の良い笑み。なにか気まずい物を抱えているふうでもなく、臆している様子もなく。セオは自分の肩が熱くなった気がした。DIOの身体・・・元はジョナサン・ジョースターの身体から受け継いだ星の痣、ジョルノにもあるのだろうか。

「ジョルノ・・・あの、左肩に、星型の痣、ありますか?」
「ありますよ、ジョースター家の血を受け継ぐ人に現れるそうですね。」
「それ、わたしにもあるんです。」
「・・・セオにも?」
「わたしも、父親は、ディオ・ブランドーなんです。母親はセオ・フェレといって・・・異母兄妹、なんですね、わたし達。」

 最後の力を振り絞るように声を出した。ジョルノはぴくりと眉を動かし、静かに瞬きをする。

「兄がいるかもしれないということ、耳にしていてイタリアに行ったのですが・・・まさか、ジョルノ、貴方がそうだって言うんですか?」
「・・・やっぱりそうだったんですね。」
「やっぱり?」
「あなたの帰国後、カレル・ブルネッティの事を調べました。DIOに肉の芽を植えられた所為であの騒ぎを起こしたと知って・・・セオ、あなたは父親の償いのためにブルネッティを助けたいと言っていましたね。それでです。」
「そう・・・わたしはDIOのやったことを思って、罪滅ぼしのためにブルネッティを助けることをしました。」

 ジョルノは気づいていたのだ、セオよりも速く。肉の芽、それが彼の中で自分とセオに血の繋がりがあると感じさせる元になっていた。ジョルノ・ジョバァーナ、セオ自身とは似ても似つかない。母親が違うせいだろう、肩の星型の痣くらいしか共通点が見出せない。髪の色も全く違う、セオはジョルノのように金髪に変化することは無かったし、きっとこれからもそうだろう。髪ばかりではない、顔立ちや動作や性格を見ても、セオからもジョルノからも、相手は自分の兄妹だというようには思えない。凄まじかったジョルノの生い立ちと、普通の学生として大学まで上がることができたセオ、恵まれた家族の有無・・・など、違うところを見つけようとすれば、そればかりが見つかる。利用できる他人として出会い、友人になろうと決めた所為か、改めて”兄”というふうに見ることが出来ない。

「ぼくの事を無理に兄と思わなくていいです。思ってもみなかったことだ、ぼくも今更あなたを妹と思えない、友人になりたいと思ってしまいましたから。」

 にこ、と、爽やかな笑顔を向けてくれるジョルノは、まるでセオの心情を察して答えをくれたようだった。彼の言葉に、抱いていた悩みがいやされるような気分。この人に頼れば全ての願いがかなえられるような、そんな全能感、大げさなイメージだが、セオがジョルノを初めて見た時に抱いた印象。今それが彼に備わっているのだと強く思えた。

「改めて、これからもよろしく、セオ。」

 一言だけだったが、敬語ではない、砕けた言葉が嬉しかった。ジョルノはセオの方に椅子を寄せて、彼女の頬に手をそえると、友人へか妹へか、信頼の気持ちを込めたキスを1つ、そこに落とした。





おわり





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