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Noble Mind pierces through the world -DEA- ... 17


 厳冬期、2月の杜王町、である。
 今年は雪が多いらしい。日本の東北部に位置するM県は、太平洋側にあるため普段は雪は少ないと聞く。雪に慣れていない割に、しっかり除雪がされていて歩きやすい。
 ジョセフがホリィや仗助に会いたいから日本に行くというので、セオもついでに着いてきた。セオもホリィ達に会いたかったのもあるが、もう1つ、楽しみにしている予定がある。

「こんにちは。」

 カランカラン、と、ドアに付けられたベルが音を立てる。

「オー!セオさん、お久しぶりデス。」
「お久しぶりですトニオさん、また貴方の食べに来られて嬉しいです!」
「それはそれは・・・サア、中でお2人がお待ちデス。」

 セオを迎えたのはトニオ・トラサルディー、イタリアンレストラン「トラサルディー」の経営者だ。彼もスタンド使いで、彼の料理を食べると、身体の不調がことごとく良くなるのだ。
 トニオに促され、セオは店内で一番奥にあるテーブルへ向かう。日本人には珍しいくすんだ金髪と、ヨーロッパ人らしい鮮やかな金髪のコントラストが目に入った。

「康一さん、ジョルノ!」
「セオちゃん!」
「チャオ・セオ!」

 広瀬康一とジョルノ・ジョバァーナだ。日本に行くと康一に連絡をした際、何がどうなったのか彼から「ジョルノも日本来るって」と返事が来た。聞くと2人はイタリアで知り合ったそうだ。3人共通して知り合い同士であるなら折角だし、と、昼食を3人でとることにした。

「まさか2人が知り合うなんて思わなかったなぁ、吃驚だよ。」
「ぼくも康一くんとセオが知り合いだとは思わなかったね。でもSPW財団関連ときいて納得しましたよ。」

 不思議な縁も合ったものだとセオははにかむ。3人はボンゴレパスタと、サラダとスープのセットを頼んだ。トニオのスタンド入りではない、普通の美味しい料理だ。

「ジョルノはね、ぼくが承太郎さんに頼まれて調査に行った対象だったんだよ。今ではたまにメールのやり取りをしたり、話をしたりできる仲なんだけど。」
「いつも愚痴ばかり漏らしてしまって。」
「へえ。」

 康一が食べる手を一旦止めて、セオにジョルノとの出会いを説明する。そういえば岸部露伴の家で、康一が承太郎に頼まれてイタリアに行ったことがあると言っていた。
―――待てよ、セオの中に妙な感覚が生まれる。

「・・・とある男、の、息子を調査しに行った・・・んでしたよね。」
「そうだよ。」

 セオの問いにジョルノは無反応。興味がないのか、無関心を装っているのか。どうだとしても、わざとらしい無視の仕方に感じる。のは、セオの主観のせいだろうか。

「ということは・・・?」
「そういうことですよ。」

 核心に触れようとセオが言葉を続けると、それを遮って、ジョルノがうんと頷いた。聞き間違えようのない肯定の言葉だ。セオの身体がじわと熱くなった。いくら承太郎に問うても解答の得られなかった自分の兄の存在、それが、まさか、ジョルノだというのか。

「ディオ・ブランドー、それはジョルノの父親の名前ですか?」
「ええ、間違いありません。お蔭でSPW財団には警戒されっぱなしです。」

 そう思ってみればDIOと同じ金髪、そこしか共通点は見つけられない、が。苦笑いで肩をすくめるジョルノ。特に、ジーノ・ボゼーという女性にはね、と言葉を続けた。なるほどミスタがジーノは協力的ではないと言っていたのはそういうことか。ギャングがどうこうではなく、DIOが関係してのことだったか。

「へえ・・・。」

 言いたいことが沢山あるはずなのに、セオはそれしか返せなかった。もしかして、反応が薄かった理由を、DIOやその息子であるジョルノを恐れたからか、と、2人に思われただろうか。

 お兄さん、と呼んでみたい。この世に唯一、同じ父親から血を受けたもの。ジョセフでもホリィでも、承太郎でもない、より近い存在。心臓の動きが速くなってきた、胸の鼓動で肋骨にヒビが入るのではと思ってしまう。
 SPWの上層部しかセオがDIOの娘であることを知らない。ジョセフ達が意識して隠している。康一の前でしていい話であろうか、分からないから口を噤んでおこう。その後食べたものは全て味が分からず、まるで食べていい物かわるい物かも分からないほどだった。しかしセオには折角の料理をもったいないと思う余裕すらなかった。






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