Fate | ナノ



liebhaber / 06


 その晩、セオが村に帰ったのは、夜の7時頃のことだった。通勤で使う、家最寄のバス停で降りたころには、日はすっかり山の向こうに沈んでいた。

「うちは直ぐそこです。……よく見知ってると思いますけど!」
「えーと……ごめん……そうだね、知ってる……。」

 プロウマンの一件があってセオの身が心配になったウェイバーは、明日も予定が無いことをセオに伝え、彼女の家まで付き添うことに決めた。セオも正直なところ、独りでは不安だったので、彼に悪いと思いながらも、むしろお願いしますと返事をした。
 デートは今日だけの予定だったが、ウェイバーはもし明日の朝起きにくい状態になっても良いように、と、明日の予定もすっかり空けていた。つまり「そういう期待」もあったことになる。

 フェレ邸はバス停から直ぐだった。ウェイバーも使い魔を通して時々見ていた家である。

「ただいま帰りました。」

 セオは後ろでドキドキしているウェイバーなど知らんぷりで玄関の扉を開けた。お帰りなさい、と、セオより年上の女性の声がして、ウェイバーはいよいよ固まってしまう。まさかデート初日に両親に会うこととは思わなかった。さすがにそんな勇気はなく、バスを降りた時点で、ここでお別れ、とウェイバーは言ったのだが「もう今日の最終バスは出てしまっていて帰れませんよ」と、セオが意地悪い笑顔で返した。彼女はバスに乗った時点で、ウェイバーが帰れないことを分かっていたのだ。淡い期待とは別方向の結果になったが、せめて明日も休みで良かったと思う。
 バタバタと2人分の足音がした。玄関までやってきたのは、母親のエリシャと弟のアベルだった。ウェイバーはまだ家に入らず、玄関前で固まっている。エリシャとアベルはセオに駆け寄り、その黒焦げの姿を触っていた。

「本当に黒焦げじゃない……!お父さんが待ってるから、早く行って話して来なさい?」
「はい……。アベルごめんね、心配かけたね。」
「お姉様ぁ……。」

 ウェイバーの知らないに、セオは家族に今日あったことを伝えていたようだ。エリシャとアベルはセオの腕を引っ張って、はやく奥に連れて行こうとしていた。ウェイバーは待ってと声を掛けたかったが、緊張で声が出ない。

「ここまで一緒に来てくれた方がいるので、上がってもらってもよろしいですか?」
「あら!良かった、1人で帰って来たのではなくて。上がって頂きましょう。」
「ウェイバー!隠れてないで来てください。」
「あ、あぁ。」

 セオに呼ばれて、ひっくり返ったような声が出るウェイバー。彼は声に引っ張られるようにして玄関に上がり、エリシャとアベルに対して小さくなった。来てしまってすみませんとでも言いたそうである。
 アベルの顔が強張った。大好きな姉が見知らぬ男を連れてきた、その事実だけでアベルは見知らぬ男に怒り……敵対心を抱いてしまう。対してエリシャは本当に良かったというように笑顔である。襲撃を受けた後のこんな夜に、大切な娘が1人で出歩いたのではなかったと、心からの安堵である。

「この方は、現代魔術科のロード・エルメロイU世です。」
「ろ、ロード!?」

 声を上げたのはアベルの方だった。どこの誰かと訝っていたら、思った以上……というか、想像しなかった大物で、驚きしかない。エリシャも驚いてはいるが、ロードと同等の知り合いは少なくないもので、アベルほどの衝撃ではない様子だ。
 ウェイバーはペコと頭を下げる。他のロードなら頭など下げず、もっと堂々としていたかもしれない。

「エルメロイU世です。このような時間にすみません。」
「まさか現代魔術科のロードがいらっしゃるなんて!充分なおもてなしは出来ませんが、どうぞお上りください!」
「あ、や、お構いなく……。」

 エリシャの感激に押され気味に、ウェイバーはまた小さくなっている。このまま小さくなって消えてしまうのではなかろうか。彼はエリシャとアベルに挟まれて応接間へ連れて行かれた。セオは家族2人がウェイバーにべったりなので、自分がエスコートしなくても良いかと思い、さっさとリビングへ走った。ウェイバーが捨てられた子犬の様に悲しそうな目をしていたのは知らない。

「お父様!」

 ヴァントーズは、リビングのテーブルの上に薬品を広げてセオの帰りを待っていた。セオが部屋に入ってくるなり、早くこっちに来いという様に娘の腕を引っ張った。

「誰に何をされた?詳しく話しなさい。」
「プロウマンと言う男です。……名前を教えられたのではありませんが、時計塔の職員がそう呟いていました。40代くらいで、痩せた男です。」
「プロウマン……ああ、大昔に枝分かれした分家にそんな家があったな……代々植物学の講師をしている家だ。」

 セオはソファに座り、腕をまくって刺青を露わにする。ヴァントーズはその刺青に欠けた部分がないか、くまなく見ている。身体に流れ込んだ電撃からセオを守りつつ、地面に電気を逃す避雷針の役割を持つこの刺青は、怪我などで皮膚の一部でも欠けてしまうと、役割を果たせなくなる。もしまた直近に使う必要があるかもしれない、その時にもし効かなければ、セオの命が危ない。ヴァントーズはそれを充分理解していて、だからこそ一番にこれをチェックしている。

「植物の……ツタの人形に襲われました。薬品を地面に流すと地中で育って、土を掻き分けて地上に出てくるものです。接触はしませんでしたが、雷火事で焼けたので、特に複雑な術式ではないようです。……あ、あと、時計塔に『フェレ感知陣』を敷いていたと言っていました。」
「今、その男は?」
「時計塔で気を失わせて……あ、その前に、今日のことは忘れてもらいました。あとは全部魔術協会がどうにかしてくれると思います。」
「賢明な判断だ。」
「ありがとうございます。」

 刺青に問題はなかった、このまま継続して使える。あれほど激しい戦闘は滅多にしないものだから、自分の身体に一体どれだけの負荷がかかったのか分からない。魔力の消費は疲れになって感じているのだが、どこにどれくらい疲労が溜まっているのか、自分で測りかねている。

「……アベルの入学前で良かった。大変な思いをさせたが、感知に引っかかったのがセオで良かったよ。」
「わたしもそう思います。……それと、プロウマンは先月の魔霧騒動に噛んでいたようです。わたしが前回時計塔に行って感知に引っかかった時には、こっちに来ていたような事を言っていました。」
「そうか……。明日、ロンドンに行ってくる。プロウマンの家の奴にそいつのことを問いただす必要があるからな。」
「わたしも行きます。」
「頼む。」

 リビングのドアがバタンと大きな音を立てて開いた。ドアの横に立っていたのはアベルで、彼は姉と父親が真剣に話しているのを見て、ごめんなさい、としょんぼり呟いた。

「大丈夫。どうした?アベル。」
「お姉様のお客様が来ているので、お父様をお呼びしてとお母様が……。」
「ああ、ウェイバーですね。お父様、現代魔術科のロードがいらしてるので、応接室に。」
「……は?現代魔術科の……って、あの、新しい若いのが?どうしてまた。」
「時計塔で助けてくださったんです。その後、独りでは危ないからとここまで。」
「はあ……ロンドンからここまで来てくれたって……?極度のお人好しなのか?」
「悪い人ではないです。」

 付き合ってます……とはセオから言えず。そこまで言うかどうかは、ウェイバー次第だ。

「来てるならそれを先に言え。」
「すみません!」

 ヴァントーズは慌ててリビングを出て行った。彼はそのまま真っ直ぐ応接室に飛び込む。セオとアベルも父親のあとを追った。
応接室でウェイバーは小さくなっていた。心情的にもだし、縮こまっていすぎて物理的にも小さくなっているように見える。おもてなしの紅茶とエリシャ特製のアップルパイには全く手を付けていない。

「ロード・エルメロイU世……ですね?」
「は、はひ。」
「私はヴァントーズ・ブロンテ・フェレです。この度は娘のセオが大変お世話になりました。このような遠くへんぴな場所、夜になりバスもないというのに……この上ない感謝を申し上げます。我々は魔術協会から排斥された身。まさか時計塔のロードにこのような慈悲をかけていただけるとは思いませんでした。もともとプロウマンというのは、大昔にフェレから別れた分家で、たしか、当時の当主の妹の家系です。風や大気を扱うよりも植物への興味の方が深く、代々時計塔の植物学で末端ながらも講師の身分を頂いている者で……現代魔術科のロードとは全く関わりのない、弱小講師です。時計塔で問題を起こした以上、彼はもうそちらには居られないと思います。セオから話を聞いただけではありますが、こちらに非はないようですし、助けてくださったロードにこれ以上ご迷惑をお掛けすることはないでしょう。この周辺には泊まる場所などございませんから、ロードがよろしければうちに泊まっていってください。ゲスト用の部屋はいつでも綺麗にしてますから。……ああ!夕飯はいかがですか?手前の妻は料理が得意でして、今晩はラム肉を焼いておりました。そちらのアップルパイも是非!あ、いや、デザートが先というのは違いましたね、夕食後に改めてお出ししましょう。ところで私は貴公がロードになったのは3年ほど前と記憶しておりますが、若くしてそのような実力のある方のお話を聞いて見たいと常々思っておりまして……。」
「お父様。」
「すみません。」

 ヴァントーズはコホンと小さく咳払い。テンションが上がって話が長くなってしまったようだった。あまりの饒舌ぶりには、家族3人も驚いている。エリシャの口はあんぐりと開いていた。彼女も、彼がここまで口を開き続けたことはなかったようである。それほどまでに、ウェイバーが来たことが嬉しかったのだろうか。そんなヴァントーズを目の前にしたウェイバーはドン引きしている。彼女の父親が初見でこれなのだ、無理もない。

「私としたことが……お喋りが過ぎました。時計塔のロードが……しかも、あの聖杯戦争の生き残りの方が、まさか我が家に来られるとは思いませんでしたから。」
「ああ……はは……。」

 ウェイバーは変わらず苦笑い。それを見たヴァントーズも、申し訳なくなっての苦笑いだ。

「お父様、夕飯にさせてください。」
「そうだな。」
「ウェイバー、案内します!行きましょう。」
「ああ……。ええと、し、失礼します。」

 セオはウェイバーを呼んで、2人で先に部屋を出た。セオが後ろ手に応接室の戸を閉めると、ウェイバーは声を出さないように気をつけながら、大きく息を吐いた。まるで応接室で吸った空気をすべて吐き出しているかのようである。

「生きた心地がしない。」
「だと思います。」
「まさか今日家に呼ばれるとか思わないだろっ、普通。」

 ウェイバーは小さな声で怒っていた。

「成り行きというやつです。」
「ぐぬぬ……。」

 応接室からヴァントーズを筆頭にフェレ家3人が出てきたので、ウェイバーは口を閉じてリビングに連れて行かれた。ヴァントーズは机の上に広げっぱなしだった薬品類を棚に戻し、ウェイバーを上座に座らせる。彼の両隣をセオとヴァントーズで挟み、アベルはセオの隣に座った。

「今日は教室は?」

 興味津々なのが丸見えのヴァントーズが問う。

「土日は基本的に何も入れてません。」
「そうですか。お蔭で今日は本当に……セオの奴を助けてくださりありがとうございました。見ず知らずの魔術師を助けて、しかも危険を顧みずその家まで付き添ってくださるなんて。今の時代に珍しいです、貴方のような方は。」
「実は、今日知り合ったわけではなくて……ええと……。」

 ウェイバーはちらりとセオを見た。セオはウェイバーから向けられた視線で、彼が何を言わんとしているかなんとなく察する。

「5年前、わたしが日本旅行をした時に知り合ったんです。」
「もしかして、向こうで知り合った聖杯戦争の参加者っていうのは……?」
「ええ、ウェイバーです。」
「…………そうか、そうだな。言われてみればそうだ。あの戦争での生存者のうちイギリス出身者はロードだけでしたね。その方がロードになって……いやあ、僕としたことが。」
「お父様は『現代魔術科のロード』の話はしてくれましたけれど、それが誰かとまでは言いませんでしたから、わたしも全然分かりませんでした。」
「セオ、お前、知らなかったのか?」
「先月時計塔に連れて行かれた時、たまたま再会したんです。それまではさっぱり音沙汰無くて。」
「すみませんでした。」

 エリシャが料理を持ってきた。オリーブオイルで焼かれ、塩コショウを浴びたラム肉の香りが部屋に充満する。

「ロードは姉と付き合っているわけではありませんよね?」

 料理の香りに一同がウットリしているところに、アベルが爆弾を落とした、彼は攻撃的な目をしていた。ウェイバーが固まる。セオは目を見開く。ヴァントーズはそんな突拍子もないことを、と微笑んでいる。
 ウェイバーは再びセオを見た。

「わたしは大丈夫ですよ。」

 そのセオの発言で、ヴァントーズとアベルの表情が凍り付いた。何が大丈夫なのか。それが何なのか、ヴァントーズとアベルには分かってしまった

「……1ヶ月ほど前から……お付き合いさせて……いただいています……。」

 ウェイバーの心情は、まるで自分で自分の死刑を宣告しているかのようだった。フェレ家の面々の表情は固まったままだ。焼けたラム肉の乗った盆を持ってくる途中のエリシャも足を止めていた。

「そういうことです。」

 セオは明るく付け足した。ヴァントーズにウェイバーのことを否定されるかもしれない、今までウェイバーに友好的だったのが、急に手のひらを返したようになるかもしれない。だからせめて、少しでもプラスの方に持っていけるよう、明るく振舞っておかなければ。
 しかしヴァントーズは、セオの不安をよそに、丸く開けた口の端を徐々に上げていく。

「……なんだ!セオ!お前、いい縁談が無いものだから、自分で見つけてきたのか!よくやった、大したものだ!!」

 むしろ彼こそ明るく、心から喜んだような笑顔だった。彼はウェイバーとの交際を受け入れるような反応を返した。頑張って笑顔でいたセオの口元が引きつる。

「え!?」

 ヴァントーズの態度に驚いたのはセオだけではなく、ウェイバーもその通りであるし、アベルも一番に声を上げるほど驚いている。アベルはセオの結婚相手についてヴァントーズがあれはダメだ、これは良くない、だのと、なんやかんや言っているのを横で聞いていたから、こんなにスンナリとヴァントーズが受け入れたのが意外中の意外だったのだ。

「ロード!うちのセオをどうぞよろしくお願いします。何の面白味もない娘ですが、これは勘の良い魔術師なので、大いに役に立つと思います。」
「み、認めてくださるんですか?」
「ええ、もちろんです。こちらは時計塔とは疎遠の身ですから、その点でロードにご迷惑をお掛けするかと思いますが。」
「そんな!ボ……私こそ、ロードとは言っても、私自身の家は魔術師として全く歴史のないところで……セオさんには釣り合わない男ですし……。」
「私は大歓迎です。確かにロードの魔術の腕や魔術回路についてはいささかきになる点が多いが……いえ、いえ!貴方のような真っ当な人間はこの界隈に少ない。ありがたいことです。」
「お父様……!」

 隣で弟が恐い顔をしているのは、ウェイバーには長い時間見てられなかった。
 ヴァントーズに認められて素直に嬉しい。ウェイバーはまだ緊張が解けない中でも、セオの父親に自分のことが認められたのが嬉しくて仕方なかった。それに、自分と同じように喜んでくれているセオが、思ったよりも自分のことを好きでいてくれているようで、それがまた幸福でならない。好きのベクトルが違うとか、ちゃんと好きになれると思うとか、そんな曖昧な表現でもウェイバーは満足しているつもりだった……今は、まだ。そうだったのに、セオはやはり自分と同じ意味で、自分を好きでいてくれているのだ、と、今感じる。
 照れ笑いをしているセオが可愛い。ウェイバーは彼女のことをずっと見ていたくて、このまま時が止まれば良いのにと思った。しかし彼の脳裏に、チラリと彼女が継がなくてはいけないこの家のことがよぎる。ヴァントーズがその辺を考えていないわけがない。なのにそれに全く触れず、彼が手放しで喜んでいるように見えるのはどうしてなのだろう。今言う必要のない彼なりの考えがあって、いつかそれを伝えてくるのだろうか。
 フェレもエルメロイも同様に名家である。しかしウェイバーはエルメロイ姓を名乗ってはいるが、それはいつか返納するものである。ヴァントーズはそういったウェイバーの境遇を知っていて、それならばフェレ家に呼びやすいと思って歓迎しているのだろうか。今のウェイバーにはそんな憶測しかできないでいる。もし本当にそうだったら嫌だなあと彼は思うが、自分は強く言える立場ではない事はよくわかっている。

「あとはアベルが時計塔で学問を修めて次期当主になる日が来れば、僕は大満足だ。」

 ヴァントーズがこまねいた腕をワクワクしたように上下させている。

「……フェレ家を継ぐのは、セオさんでは……?」

 ウェイバーはヴァントーズに恐る恐る訊いた。ヴァントーズの発言は、ウェイバーが考えてきたことの前提をすべて覆してしまうような、だいぶ重たい一撃になっている。

「大抵皆そう思っておりますね。」
「ボク……私もです……現にフェレ家の魔術刻印はすべてセオさんが受け継いでいると聞きましたし、見ましたし……。」
「見ての通りアベルはセオと歳が離れています。アベルが生まれるまでは、セオにすべて引き継いでもらう予定でいましてね。魔術刻印の継承をした後すぐにアベルが生まれて……伝統に則って、ここはやはりアベルに継がせるのが一番と判断しまして、これが成人するまでは、セオに刻印を鍛えてもらうつもりなんです。……周りにはセオが跡継ぎだと思わせておいた方が何かと楽ですから。」

 まだ未熟なアベルよりは、魔術師として充分力のあるセオの方が、悪意のある外野からの対応に困らないから。と、ヴァントーズはそう続けた。

「ロード、もしかして、セオが嫡子であるからと、様々悩んでくださっていたのですか?」
「ハイ……。」
「ウェイバー!そこまで考えていてくださったのですか!」
「え、や……そりゃあそうだろ……!」
「さすがですロード!いつでもセオのことは持って行ってくださってかまいませんからね!」
「や、そんな急には……!」

 悩んでいても仕方ない、とはよく言ったものだ。この一瞬でウェイバーの悩みの殆どは解消されてしまった。セオの父親が友好的であること、セオが跡継ぎでないこと、結婚の申し込みをする前から推奨されてしまったこと……。都合よく出来上がった夢なのかもしれない、しかしテーブルの下で手の甲を抓ってみるととても痛かった。
 呆然として話を聞いていたエリシャが、やっと意識を取り戻して料理をテーブルに並べた。アベルは未だにムスッとした顔をしている。

「ロード、貴方は今日こうして私の所に来るつもりではなかったのでしょう?」
「え、ええ……。」
「心の準備ができていないままに、話を進めてしまってすみません。どうか今後とも我々をよろしくお願いします。」
「よ、よろしくお願いします……。」

 のちに今日のことを話す機会があって、ウェイバーは「料理の味を全く覚えていない」と語った。それを聞いてセオも流石に申し訳なくなったのだが、親の承認を得られたこの時のことは、本当に良かったと思っている。






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