稲妻11-Thanks! | ナノ


「今夜はいつもと違ったことを試してみようか」
 顔に満面の笑みを貼り付けたフィディオが、あっさりと不穏なことを言い出すので、エドガーは身体を反転させて反射的に逃げの体勢を取った。
「おっと、逃がさないよ」
「…ひっ!」
 しかしエドガーの逃亡も虚しく手首をフィディオに素早く掴まれてしまう。こう見えてフィディオは意外に握力が強い。経験測による恐怖からエドガーは思わず叫んでいた。
「離してくれ!貴様の思いつきは大概ろくでもない!」
 抵抗したところでフィディオが大人しく解放してくれないことも、エドガーはよく理解していたのだが。
「思いつきじゃないよ、マンネリ化を防止するための素敵なアイデアじゃないか」
「わ、わたしは普通のセックスでいい…」
「そんなこと言わないでよ。エドガーも結構好きなくせに」
 フィディオはエドガーの身体をベッドに易々と放り投げると、俯せの背中に暴れないように跨った。ズボンのポケットからバンダナを取り出すと、帯状になるように器用に折り畳み、それでエドガーの目を覆ってしまった。
「っや…フィ、ディオ…これ、嫌だ…外してくれ…っ」
「駄目、今日はこのままするんだよ」
「そんな…許してくれ…」
 視界を奪われることには強烈な違和感が伴った。不安がるエドガーが目隠しに手を伸ばす前に、フィディオはピシャリと釘を刺す。
「自分で外そうとしたら手首も縛るからね」
「……っ…」
 そう言われてしまうとエドガーも手を引いて諦めざるを得ない。脅迫めいた圧力を受けて、素直に目隠しを受け入れたエドガーの頭を、フィディオは優しく撫でてやった。大人しく従うなら酷いことはしないと、エドガーに教え込むかのように。


「まずは舐めてもらおうかな…」
「…ん……」
 エドガーの唇にフィディオの先端が押し付けられる。まだ大した硬度のないそれをエドガーはおそるおそる口に含んだ。フィディオの性器は清潔なので嫌な匂いはしなかったが、ちゅぱちゅぱと舐めている内に苦いような変な味が染み出してくる。
 手探りで幹を辿るとかなり硬くなっていた。目で直接確認することはできないが、フィディオが口淫に感じてくれているのだとわかって、エドガーは嬉しくなる。
 そのまま反り立つ肉棒全体を口に収めて、全体に吸い尽くように愛撫する。張り詰めた棹に舌を這わせながら、頬の内側の粘膜に亀頭を擦り付ける。思わぬ手管に息を詰まらせたフィディオは、エドガーの頬を撫でた。
「上手になったね、エドガー」
「…ん、…ぅ…」
「初めてフェラチオしてもらったときは大変だったのにね」
「…そのことは、もう言うな…」
 触れる頬が赤くなる。目隠しの下の瞳も恥じらいに潤んでいることだろう。
 エドガーに初めて奉仕してもらった日のことを、フィディオはよく覚えている。潔癖症のきらいのあるエドガーに頼み込んでフェラチオに漕ぎ着けたものの、男の勃起の生々しさを目の当たりにしたエドガーが、ベッドで貧血を起こしかけたのは今でも忘れられない。
 性器すら直視できなかったエドガーが、今では巧みとも言える技巧で、フィディオの雄を楽しませてくれるのである。偏にオレの教育の賜物だなとフィディオは思って、初々しい恋人を自分好みに仕立て上げる愉悦に酔った。
「…エドガー、そろそろ出すよ」
「ん…ぅ……あっ、フィディオ…?」
 更に吸い付こうとするエドガーの唇から、射精寸前の性器をフィディオは引き抜いた。行為を中断されて不思議がるエドガーの顔面に、生暖かい液体がぱたぱたと降り注ぐ。
「…な、なんだこれは…」
 驚いたエドガーが手で触れて確かめる。ぬるぬると滑り独特の匂いを放つそれが、フィディオの精液であると気づいたエドガーは、羞恥に顔を赤らめた。初めてフィディオに顔射をされた。目隠しをしたまま男の精に塗れる顔を、フィディオに隈無く眺められているのだと思うと、堪らなく恥ずかしい。
「いやだ…見るな、見ないでくれ…」
 顔を背けるエドガーの顎を捕らえて、フィディオは無理やり真正面を向かせた。目隠しをしていても隠し切れない白皙の美貌が、自身の放った白濁に汚された様は何とも言い難くいやらしい。怒るのでなく恥じらう姿も、フィディオの雄の情欲を煽ってならない。
 フィディオは舌舐めずりをすると、エドガーの身体に襲い掛かった。


「あっ…や…フィディオ…」
 視覚以外の感覚が研ぎ澄まされて、身体を辿る指先に普段より過敏に反応してしまう。フィディオもそれを心得ているから、わざとエドガーが驚くような触り方をする。
「ん…そこばかり…いやだ…」
 エドガーの身体をベッドに縫い止めて、乳首を入念に愛撫する。かと思いきや下肢にうずくまり、奉仕で興奮してしまった性器を可愛がったりする。
 一つの快楽が止む度に、次に何をされるか分からないエドガーは、不安と期待に全身を高揚させてしまう。それすら見透かしたフィディオはいい意味でエドガーの予想を裏切り続けた。フィディオの巧みな性技の数々に、エドガーの肉体はあっという間に蕩けてしまう。
「そろそろ欲しい?」
 よく解した後孔に指を三本出し入れしながらフィディオは尋ねた。フィディオが意地悪なことを言う度に、素直な身体は指をきゅっと締め付ける。フィディオに調教されてきたエドガーの身体は、被虐の悦びをよく知っていた。
「言わないといつまでもこのままだよ?」
「っあ、あ…ひ…っ!あぁ…っ!」
 探り当てた前立腺を指先で突いてやると、細い身体が弓なりにしなった。可哀想なくらい過剰に反応する身体を、フィディオは容赦なく責め立てた。ピンポイントで狙った前立腺をぐりぐりと刺激し続けると、悲鳴じみた嬌声がエドガーの口からひっきりなしに上がる。
「あ!はぁ、ん…やっ…だめ…!やめっ…」
「やだよ、エドガーが言うまでやめない」
「ひぃっ…!あ、はぁっ…、あぁ…!」
 指をくわえ込んだ後孔が、異物を搾り取るようにきつく締まる。エドガーの身体が引きつって緊張したかと思うと、次の瞬間に一気に脱力した。弛緩した全身に汗をびっしょりとかきながら、胸を大きく上下させて乱れた息を整えている。先走りを垂れ流す性器は勃起したままだが、他の場所は絶頂した際と同じ反応をしていた。

「はっ…あ……ん、はぁっ…」
 痙攣する体内から指を引き抜いて、ぽっかり開いた穴と反り立つ肉棒を見比べながら、フィディオはひゅうっと口笛を吹いた。
「もしかして、ドライでイっちゃった?」
 男が射精をしないまま達すると、女のように絶頂時の快感が長く続いて、気が狂いそうなほど気持ちが良いと聞いた。エドガーは今まさにその状態にあるのではないか。フィディオは喉を鳴らした。
「すごいなエドガー…もうすっかり女じゃないか」
 ぴんと立った乳首を摘んで弄びながら、フィディオはエドガーの淫らさを揶揄った。柔らかな膨らみなどない薄い胸を、無理やりぎゅうっと揉みしだく。エドガーの呻き声の中には、苦痛以外の色が多分に見え隠れしていた。
「ん…っ、ふぅ…んぁ……はぁ、ん…」
「お尻と胸でこれだけ感じられるんだから、こっちは要らないんじゃない?」
「っひ!あっ…あぁっ…!」
 フィディオはエドガーの髪を解くと、髪を纏めていたゴムで、エドガーの性器きつく戒めた。ピンク色の勃起の根元に赤い髪ゴムが巻き付く様は、何とも倒錯的な様相を醸し出している。
「よく似合ってるよ」
「やっ…フィディオ…許し…あぁ…ん…」
 熱を堰き止められた肉棒を指で弾かれて、辛いはずなのにエドガーは甘い声を上げてしまう。目隠しもされているのに感じられるなんて、全く大した被虐癖だと思って、エドガーの痴態をフィディオは鼻で笑った。
「次はこれでイってもらおうかな」
 フィディオはエドガーの白い太腿に、焦らすように勃起した性器を擦り付けた。柔らかな肉を滑る熱い剛直の感触にエドガーが震える。エドガーの戦慄は何も恐怖ばかりではない。現にフィディオに両脚を大きく開かされても、エドガーはもう抵抗しなかった。
「エドガー…挿れるよ…」
 よく慣らされた蕾にフィディオの切っ先が埋め込まれる。皺が広がって一番太い雁首を飲み込んだら、後は根元まで一気に入ってしまった。
「あ、あぁ…っ…ん、ひっ…!」
「んっ…いい具合に溶けて、気持ちいいよ…」
 肉棒に絡み付く内壁を引き剥がすように、フィディオはぐっと腰を引いた。そして体調の勘所を出来る限り狙いながら、再び腰を突き入れる。指で狙うときほど的確にはいかないが、何度か往復する内に上手く擦れるようになってきた。硬い亀頭が前立腺を捉える度に、エドガーが切ない声を上げて喘ぐ。フィディオはますます煽られて、エドガーの熟れた媚肉を夢中で犯した。
「あぁ…フィディオ…ん、はぁ、あぁ…」
 ふらふらと伸ばされた白い腕がフィディオの首に絡まった。エドガーはフィディオを引き寄せてキスをしようとしたが、目隠しのために唇の位置がわからないようで、顎や頬など見当違いのところに口付けてばかりいる。
 上手くキスが出来なくて倦むエドガーが可愛くて、フィディオは可憐なその唇を奪い取った。開いた口内に舌を差し出すとエドガーに積極的に絡め取られる。随分大胆なことが出来るようになったと感心すると同時に、負けてはいられないとフィディオも舌を吸い返す。腰を擦り付け合いながら、互いの吐息が乱れるまで深く唇を重ね合った。
「フィ、ディオ…もう、これ…取って…」
 口付けの合間にエドガーが懇願した。エドガーが言っているのは目隠しのことだろう。
「何も見えないのは嫌だ…お前の顔が見たい…」
 こんなに愛らしいことを言われたら、お願いを聞いてやらないわけにはいかない。フィディオはエドガーの目を覆うバンダナを外してやった。目隠しの下から現れた、泣き濡れた蒼い瞳の美しさに、フィディオは思わず息を飲んだ。
「フィディオ…」
 暗闇から解放されたエドガーは安堵の微笑みを見せて、フィディオの身体に縋り付いた。目隠しを外されたことが余程嬉しかったのだろう、エドガーの後孔はフィディオの肉棒を情熱的に締め付けた。
 フィディオは堪らなくなって衝動のままエドガーの身体を揺さぶった。エドガーの喉から悲鳴じみた声が上がる。生理的な涙が一筋頬を伝い落ちた。乱れ髪に顔を埋めながら、このまま抱き殺してしまえたらとすら思った。
「ふ、あ、ぁあっ!フィディオ…んぁ…あっ…!」
 二つの熱が卑猥な水音を立てて繋がっている。焼けるように熱い内襞に向かって、フィディオは猛る肉棒を突き込んだ。肉体を貪っているのはフィディオのようで、実のところ搾取しているのはエドガーの側なのかも知れない。淫らに蠢く底無しの筒がフィディオの肉を貪欲に搾り取る。
「っん…!エドガー…いくよ…」
「はぁっ、フィディオ、あっ!ぁあ…んあ…っ!」
 前立腺による絶頂に収縮する秘肉に包み込まれながら、エドガーの身体の奥深くにフィディオは精を浴びせかけた。エドガーの中に全てを出し切り、萎えた性器を引き抜いてから、エドガーの肉棒を戒めていたゴムを解いてやる。はち切れんばかりに膨張していた性器は、根元を解放されたことで一気に絶頂に上り詰めた。
「ひっ、ん、ひあ…あぁ…んぁ、ああっ…」
 快楽に染まった蕩け切った表情を浮かべながら、エドガーは勢いをなくした白濁を、漏らすように外に吐き出した。なかなか止まらない射精と中出ししたフィディオの精液とで、エドガーの脚の間はぐちゃぐちゃに濡れている。あまりに淫らでしどけないエドガーの有り様に、フィディオは自身の熱が再び首を擡げるのを感じた。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -