稲妻11-Thanks! | ナノ


 源田が風邪をひいて自宅療養中だという。その連絡(チクリともいう)を佐久間から貰ったアフロディは、箪笥に仕舞いっぱなしだったある物を適当な紙袋に詰めると、それと財布と携帯電話だけ持って源田の住むマンションへ向かった。アフロディは頭で考えるより先に体が動いてしまう行動派である。
 ――そういえば昨日今日と音沙汰が無かった。特に気にも留めなかったが、体調が悪くてメールすら出来なかったのかも知れない。或いは余計な心配を掛けさせないために、わざと連絡しなかったのかも知れない。
 源田くんはなんて健気なのか。電車内でアフロディは涙ぐんだ。しかも佐久間からの情報によると、諸事情があって両親は自宅に不在で、源田は独りきりで寝ているらしいではないか。孤独は病の身にさぞ心細いことだろう。一刻も早く恋人の自分が行って看病してやらねばなるまい。


 合い鍵を使ってアフロディは源田のマンションへ侵入した。玄関から続くリビングはしんとしていて人もいない。勝手知ったる他人の部屋とばかりに、アフロディは源田の部屋へ向かう。
「源田くん!」
 ベッドの上、人の形に盛り上がった掛け布団から、豊かな髪の毛がはみ出していた。
「源田くん、無事かい…!?」
 アフロディは堪らずベッドサイドに駆け寄った。呼び掛けに源田が身じろいで目を覚ます。虚ろな眼差しがアフロディの姿を捉える。
「ア…フロディ…?」
「うん、そうだよ。僕だよ」
「お前…どうして、ここに…?」
「君が風邪を拗らせたって、佐久間くんから聞いたんだ」
 源田の瞳は熱っぽく潤み、その息は浅くて早い。意識朦朧とした様子の源田はとても辛そうに見える。乱れた前髪を掻き分けて額に触れると、案の定かなり体温が高かった。
「ああ、すごい熱…」
 これはさぞかし辛かっただろうと、アフロディは眉尻を下げて同情した。いくら分別の付く年齢といえど、一人で寝かせておくにはあまりにも心許ない。やはり来て正解だったと思う。しかし源田は自分から遠ざけるようにアフロディの肩を押し退けて、首を横に振って接触を拒んだ。
「俺のことはいいから、早く帰れ…」
「こんな君を放ってはおけないよ」
「お前に伝染ったら、困る」
「…源田くん…!」
 病の身でありながら、他人の体調を気遣う源田の優しさに、アフロディの心臓は高鳴った。思わず源田に飛び付いて、布団ごと身体を抱き締める。
「こら…!離れろ…!」
「僕は神だから風邪なんてひかないよ」
「だが…」
「君が心配なんだ…どうか看病させてくれないか?」
 源田の目を見つめてアフロディは真剣にお願いした。ここまで熱心に頼まれてしまっては、源田としても無碍に断れない。
「…わかった、よろしく頼む…」
「うん!精一杯看病させてもらうよ!」


 ――実のところ源田は心配だった。あのアフロディに人の看病ができるのか疑っていたからだ。アフロディが他人の面倒を見ている場面など、見たこともないので想像もできない。漫画もかくやの大惨事にならないといいが…と思って、ハラハラしてしまって落ち着いて眠れなかった。
 しかし源田の安直な想像に反して、アフロディはそれは甲斐甲斐しく、源田の身の回りの世話を焼いた。普段の突拍子もなさは鳴りを潜め、そこに居たのは献身的に尽くす恋人だった。
 部屋の換気をし、寝間着を着替えさせ、身体を拭いてやる。手作りのたまご粥をふーふー冷ましながら食べさせてもらったときは流石の源田も反省して、胸に込み上げるものがあった。
 アフロディの優しい看病に源田は大いに感動した。そして病身でありながら不謹慎だとは思ったが、源田は健気なアフロディの献身に欲情していた。長い髪を一つに結ってエプロン姿で傅くアフロディは新鮮で、まるで新妻のようだと思う。
「おいしい?」
「…ああ」
 よかったと微笑む仕草がまた可愛らしく、源田はまたときめいた。そしてこの不謹慎な思いが悟られぬようにと祈りながら、アフロディの厚意に甘えたのだった。


 その夜のこと、源田は寝苦しさを覚えて目を覚ました。白い塊が腹の上に乗っている。こんなときに金縛りか…?とも思ったが、暗闇に目が慣れてくるにつれて、塊の正体が明らかになる。
「っ…アフロディ…!?」
「あん…源田くん起きちゃった…」
 そこに居たのはアフロディだった。風邪ひきの自分と同じ部屋で寝かせるのは躊躇われて、リビングに泊まってもらったはずだった。何故こんなところにいるのか。
 更に自身に跨るアフロディの姿の全貌を把握して源田は目を剥いた。
「おま…、なんだ…その格好…」
 アフロディが身に纏っているのは純白のナース服だった。勿論女物である。
「看護婦さんだよ。看病するならこれだろう?」
 アフロディが自宅から持参したのはナース服だった。相当際どい長さのミニスカートに加えて、ストッキングにガーターベルトという刺激的な装いに、源田は落ち着いていた熱が一気に上昇するのを感じた。ナースに襲われているという非現実的な状況に頭が付いていかない。
「ば、馬鹿かっ、お前…」
「こういうの嫌いだった?」
「好きとか嫌いの問題じゃなくてだな、常識的に考えて…ん、むっ」
 源田の生真面目な説得をアフロディは強引なキスで遮った。常より温かい口内を隈無く探って舌を吸う。源田の顔が赤いのは微熱のためか羞恥のためか。
「理屈っぽいのは僕にはわからないな」
 唾液の糸を引かせながら唇を離したアフロディは、はぁはぁと息を継ぐのに精一杯の源田に満面の笑みを向けた。
「気持ち良く汗をかいて、夏風邪なんてすっきり治そうよ」


 仰向けに寝た源田の下半身にうずくまり、アフロディは熱心に肉棒に奉仕した。シャワーも浴びていないそこを舐められるのは抵抗があったが、アフロディは気にもせずに源田の性器を口いっぱいに頬張った。
「ん…む…、んん…っ…」
 アフロディの口淫は実に巧みで手慣れており、また寝込んで抜いていなかったせいもあり、源田の下肢はあっという間に反応を見せた。
 すっかり勃起した性器の側面に舌を這わせながら、アフロディは下肢をもぞもぞさせた。普段より強い雄の匂いと硬くいきり立つ肉棒に魅せられて、奉仕するアフロディまでくらくらと酩酊してしまう。
「何だか僕も熱っぽいみたい…」
 アフロディは自身の股間に手を伸ばした。ミニスカートの下にパンツは元より穿いていない状態だ。性器の先端から溢れたカウパー液で、白いスカートの前面に卑猥な染みができている。布と鈴口が擦れると気持ちが良くて、自然と腰を揺らしてしまう。
 立ち上がった自身をぎゅっと握ると、それだけで甘い声が出た。手で扱いていた源田の亀頭からも先走りが止め処なく流れ出ている。そろそろ頃合いだろうと判断したアフロディは、充血した先端にちゅっと恭しく口付けた。上目遣いで興奮した源田の顔を見る。
「源田くんの体温計で、僕の身体のお熱はかって?」
 びんびんに反り立った肉棒に、頬摺りしながらお願いするアフロディの痴態に、源田も頷かざるを得なかった。


 騎乗位で腰に跨るアフロディの中に、源田の雄がずぶずぶと一気に飲み込まれる。源田のものは大きいから、入れるときは少し苦しいが、その後はとてつもない快感をアフロディに与えてくれる。体内にぴったりと収まる肉棒の感触に下半身を痺れさせながら、アフロディは源田に尋ねた。
「あっ…ああ…どう?僕の中熱い…?」
「…熱い…」
 源田のたくましい腹筋に手を付いてアフロディは腰を揺らし始める。自分で自分の良いところを探るため、その動きはかなり大胆だ。アフロディは自らの快楽を追いながら、源田を責めることも忘れない。
「どうしようかなぁ、源田くんの風邪が伝染っちゃったのかなぁ…」
 後孔に断続的に力を込めて、体内に収まる肉棒を締め上げる。凛々しい眉を寄せて性感をやり過ごす源田に、アフロディは加虐的な優越感を覚える。
「ね、源田くん…一緒に風邪治そう?」
 ストッキングとガーターベルトで飾られた太腿で、源田の脇腹をぎゅっと挟む。柔らかな感触に煽られて、源田のものがまた膨張した。
「ん、あん…太くなった…」
 質量を増した性器の素直さが可愛くて、アフロディは源田の手を脚に触れさせた。
「色々触ったり…悪戯していいんだよ?」
「…っ…」
 大胆に誘われた源田は、躊躇いがちにアフロディの太腿を撫で始める。細いのに程よく肉の付いたそこは柔らかく、性的な肉感で源田を煽る。それに白いミニスカートの前面を捲り上げて、アフロディの性器が飛び出しているのが、何ともはしたなくていやらしかった。律動に合わせて切なく震える桃色の亀頭を、源田は掴んで扱いてやる。
「あっ、はぁ…っ、あ…源田くんっ…」
 手淫に合わせてアフロディの中がきゅっと締まる。アフロディは後ろを犯されるのも好きだが、前を弄ばれるのも大好きだ。濡れた鈴口を指で嬲ると何とも言えない甘い声で鳴く。アフロディの表情から余裕が段々と消えていく。
「いいっ…あっ…そのまま触って…」
 そこにいるのは性交に溺れる淫らな少年だった。艶めかしくくねる身体を源田は下から突き上げた。
「ふあっ、あ…っ、ああんっ…!」
 体内の奥深くを抉られたアフロディの身体が跳ねる。熱の塊がどくどくと脈打っているのを直接感じてアフロディは背筋を震わせた。やられてばかりは性に合わぬと、源田の責めに対抗するようにこちらも腰を浮かせて抜き差しをする。硬い勃起に敏感な粘膜をずりずりと擦られて、堪らない悦びがアフロディの全身を満たした。
「ん、あ…いいよ…もっと突いて…もっと…」
「…こうか?」
「う、んっ…あぁっ…すごい…っ」
 お互いに激しく求め合って、肉同士がぶつかり合うような荒々しいセックスだった。アフロディのナース服はしっとりと汗に濡れ、素肌がうっすら透け始めている。源田の精悍な顔にも汗が浮いていた。本能の赴くままに腰を振り、二人で熱を高め合う。
「源田くんきて…!僕に全部ぶち撒けて…っ」
「アフロディ…いくぞ…」
「ふ、あっ…ん、あああ…っ!」
 アフロディの肉筒が強く収縮するのと、源田の肉棒が深く奥に達したのはほぼ同時だった。痺れるような快感が押し寄せて、二人は一緒に絶頂を迎えた。



 案の定というか自業自得というか、次はアフロディが風邪をひく番だった。流されたとはいえ、感染の片棒を担いだのは源田なので、病身の恋人を放っておくわけにはいかない。
 先日してもらったように、源田は甲斐甲斐しくアフロディの看病をした。アフロディは熱で苦しそうにしているが、源田に面倒を見てもらうのは嬉しいらしく、ひえピタを額に貼り付けながら始終にこにことしている。
「あーんって言って食べさせて」
「…あーん」
「あーんっ」
 擦ったりんごを源田の手から美味しそうに食べる。「おいしい」と言って次の一口を強請る。鳥の雛に餌を与えているようだと思って、源田も思わず笑ってしまった。

 そして布団にくるまりながら、アフロディが言うことには。
「ねぇ源田くん、もう少し良くなったらさ、白衣着て僕を襲ってよ…」
 アフロディは全く懲りていないらしい。しかしナース姿のアフロディに襲われたお陰で源田の熱は下がったとも言える。
「…考えておく」
 結局源田はそんな無難な返事しかできない。
「待ってるよ、源田先生」
 悪戯っぽくアフロディが笑った。

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