稲妻11-Thanks! | ナノ


「せっかくアフロディとアイスを食べようと思ったのに…晴矢のせいで…」
「うるせぇ風介!テメェ一人抜け駆けしてんじゃねぇよ」
「僕の上で喧嘩しないでくれるかなぁ…」
 服を脱ぎ捨てた三人はベッドの上で膝を突き合わせた。仲良くエッチしようと言ったのに、アイスに後ろ髪を引かれるガゼルと関係的に出遅れているバーンは、まだお互いに喧嘩腰でいる。アフロディは大概辟易してしまった。罵り合う二人に挟まれて、全裸で寝転がっている自分が滑稽に思えてくる。
「アイス食べながらでもいいから、早くしようよ…」
 飽き飽きしたアフロディが適当言った台詞に、いち早く反応したのはガゼルだった。
「…そうだ、良いことを思い付いたぞ」
 ガゼルは隅に放り出したビニール袋から、ソフトクリーム形のアイスを取り出すと、溶けかけのそれをアフロディの身体に盛り付けた。左右の胸の上に一個ずつ、バニラ味のアイスが乗せられる。
「ひゃっ、ぁン…つめたい…」
 氷菓の冷たさに身を捩るアフロディを、二人は熱っぽい目で凝視した。
「へぇ…これはなかなか…」
「いい感じだろう?」
 アフロディの薄い胸の上に溶け出したアイスを、ガゼルは身を屈めて美味しそうに舐め取った。バーンもガゼルに倣ってソフトクリームを舐め始める。体熱に温められて見る間に形を無くしていくそれを、二人して崩れた側から舐めていく。
「あっ…ァん、くすぐった…ぁ…」
「…甘ぇ…」
 甘いものも冷たいものも、バーンはガゼルほど好きではない。しかしアフロディの身体に盛り付けたアイスはこの上なく美味に感じられた。這いつくばってミルクを啜る犬猫のようで滑稽だ、と客観的に自分を判じながら、目の前の甘味にバーンも夢中になっていった。
「あん…もうアイスないよぉ…?」
 二本分のソフトクリームは二人の胃袋にすっかり収まってしまった。それなのに飢えは収まらない。もっと食べたい。白い胸に映える痛々しいほどの赤に誘われるように、二人は冷えた突起に唇を寄せた。
「ふあ!んっ…あぁっ…あッ!」
 赤ん坊のように乳首に吸い付くバーンと、固い肉芽を前歯に挟んで甘噛みするガゼル。二人とも好き勝手やっているはずなのに、アフロディに堪らない刺激を与えてくる。二人の愛撫から逃れようとアフロディは身を捩った。いやいやという風に首を振る。
「や…駄目、いっちゃう、だめぇ…」
「乳首だけで達せるのか?」
「なんとなくわかってたが、とんだ淫乱だな…」
 甘ったるい鼻声で駄目だと言われても、二人がやめるはずもない。その拒絶の仕方はむしろ逆効果だ。びくびくと跳ね上がる細い肢体を押さえ込んで、更に念入りに嬲るように、両方の胸に愛撫を加えていく。同い年の男の胸に一心不乱に吸い付くという倒錯にどうしようもなく興奮した。吸ったり舐めたり噛んだりと、二人は思い思いの方法でアフロディの乳首を弄び続けた。
「あぁ、やァ…いく、あ…ん、あぁあっ!」
 しつこく乳首を責められて感極まったアフロディは、全身を駆け巡る快感に打ち震え、触れられてもいない性器から白濁を噴き出した。


「はぁ…あぁ…いじわる…っ…」
 白い太腿を汚す体液が、電球の光を反射して、てらてらといやらしく照っている。
「…っ、すげー…エロ…」
 他人の射精の瞬間に立ち会うのも、精液に濡れた股間を見るのも、バーンには初めての経験だった。アダルトビデオ顔負けの痴態を演じているのは知人である。中性的な肢体から壮絶な色香を放つアフロディに、思わずバーンは圧倒された。身体の底から湧き上がる欲求があった。乱れたアフロディの姿から目を離せないでいるバーンを、ガゼルは腕でぐいと押し退けた。
「わたしが綺麗にしよう」
 そう言ってアフロディの下半身にうずくまったガゼルは、萎えた性器に絡まる精液を丁寧に舐め取り始めた。潔癖症のきらいのあるガゼルが、排泄器官でもある男の性器を躊躇いなく口にしていることに、バーンはかなりの衝撃を受けた。ガゼルは愉しそうに目を細めて、薄ピンクの肉棒に舌を這わせている。
「ふふ…アイスキャンデーみたいだね」
「ん…あっ…はぁン…やだぁ…」
 その名に恥じない冷血漢のガゼルが、歯の浮くような喩えを用いて、アフロディのはしたなさをユーモアたっぷりに揶揄っている。バーンが此処に居るということを除けば、二人のそれは恋人同士のじゃれ合いのようでもあった。
「あぁ…涼野く、ん…っあ、はぁあっ…」
「ピンク色で可愛いね…美味しいよ、アフロディ」
 早くも熱を取り戻して勃起した性器を、ちゅぱちゅぱと美味しそうにガゼルはしゃぶり、口淫の快感にアフロディは白い身体を艶めかしくくねらせた。一人蚊帳の外になっているバーンを、蕩けた瞳でアフロディが誘う。
「…南雲くんのは僕が舐めてあげる…」
 アフロディは腕を伸ばしてバーンの腰を引き寄せた。緩やかに形を成していた性器を見て嬉しそうに微笑む。
「うん…熱くて固いね…」
 アフロディはそれを無造作に握ったかと思うと、剥けた先端を柔らかな唇に難なく招き入れた。陰毛の茂みに鼻先が触れるほど深く飲み込んで、張り詰めた幹にねっとりと舌を絡める。
 アフロディがこの行為に関して、並大抵では持ち得ない技巧を持っていることは、初めてフェラチオを経験するバーンにも理解できた。アフロディの口唇奉仕は実に巧みだった。性器への実際の刺激は勿論のこと、視覚や聴覚からも、これでもかと情欲に訴えかけてくる。こんなに男を煽る方法を、一体何処で身に付けたのかと心配になるほどだ。

 アフロディの見事な舌遣いにあっという間に高められて、このまま口内に出していいものかとバーンが思い始めた矢先だった。
「…っあ、んッ、あぁっ…!」
 アフロディの様子が突然変わり、フェラチオも儘成らない様子で喘ぎ始めた。
「…っふ、んぁ…あっ、やぁん…」
 見ればガゼルが尻の谷間に顔を埋めていて、そのためにアフロディは身悶えているのだった。いつになく積極的なガゼルの行いに、そこまでするのかとバーンは更に驚いたのだが、男同士のセックスをするためには必要な手順なのかも知れない。
 幾ら顔が可愛くて綺麗でもアフロディは自分たちと同じ男なのだから、受け入れるための機能は備わっていない。代わりに何処を使うのかという知識は、大雑把ながらバーンにもあった。ガゼルが解しているのはその場所だ。
「やぁ、ン…そこ…だめ、あっ…はぁあっ…」
「慣らさないと使えないだろう?」
 双丘の間に秘められた窄まりを、優しく撫でるようにガゼルは舐めた。粗方強張りが取れてきたところで、指で後孔を広げながら中に舌をねじ込んでいく。柔らかな舌で敏感な内壁を撫でられると堪らない感覚が生まれるらしく、アフロディはバーンへの奉仕も忘れ、ガゼルの舌技に溺れて喘いだ。
 元々慣れているらしいそこは丁寧な愛撫に容易く蕩け、虚を埋めてくれる質量を求めて、ぱくぱくと物欲しそうに開閉を繰り返すようになる。
「…ね、早くちょうだい…はやくぅ…」
 真っ赤に熟れた粘膜の濡れた色が艶めかしくてバーンは思わず息を飲んだ。アフロディの後孔は淫らな性器として作り替えられているのだと思った。あそこに肉棒を突き入れて、締められて扱いてもらったらどんなに気持ち良くなれることか。そんなことを想像していたものだから、自然と卑しい表情を浮かべてしまっていたのだろう。ガゼルはバーンに冷たく釘を刺して牽制した。
「わたしが解したんだから、わたしからだ」
「ちっ…わかったよ…」
 見ればガゼルの性器も荒ぶって、腹に付きそうなほど固く反り返っている。アフロディに献身的な愛撫を施しながら、自身も興奮を高めていたらしい。後孔を散々可愛がられて焦らされたアフロディが、腰を振ってはしたなく挿入を強請る。
「あっ…はやくいれて…お願い…っ」
「ああ、焦らなくても今挿れる…」
 驚くほど優しい声色で宥めたガゼルは、アフロディの太腿を持ち上げると、柔らかそうな脚の間に熱の切っ先を差し入れた。
「っあ…ん、ふあっ!ああああっ!」
「…っく……!」
 アフロディの後孔にガゼルの勃起が飲み込まれていく。二人の下半身はやがて隙間なくぴったりと密着した。ガゼルが腰を揺らす度にアフロディがあられもない声で鳴く。それだけでも相当耳に毒なのに、ガゼルまで声変わり前の高い声で喘ぎ始めるから、バーンは居ても立ってもいられない気持ちになった。
「ふぁあ…涼野くぅん…あっ、いいよぉ…あぁん…っ」
「っう、あっ…絞られるっ…アフロディ…んっ…」
 成長期にあるしなやかな肢体が重なり合い、身体の一番深いところでいやらしく絡み合う。歯を食いしばり、時には弛緩して、互いの肉体を貪り合う。肉の快楽に溺れていく。こいつらはなんていう表情でセックスするんだとバーンは思った。二人して抱かれている女みたいな顔をして抱き合っている。
「どっちが抱いてるかわからねーなぁ風介」
「うるさい…貴様は黙って見ているがいい」
「嫌だね!さっきの続きを頼むぜ、アフロディ」
「晴矢っ!」
 唇に性器を擦り付けるとアフロディは素直にそれをくわえた。ガゼルに揺さぶられながら、バーンの雄も必死に愛撫する。下も上も肉に貫かれて、塞がれて苦しいはずなのに、男を受け入れるアフロディの表情は何処か恍惚として見えた。アフロディは自重という言葉こそ知っているが、筋金入りの男狂いなのだ。女のように男に抱かれると肉棒のことしか考えられなくなる。

「出して…っ、二人とも僕にぶちまけてぇ…!」
 後孔をきゅっと引き締めて、手にした性器の根元を握る。強く絞られたガゼルが熱を吐き出すと同時に、圧迫が決定打になったバーンもアフロディの顔を目掛けて射精した。体内と顔面を男の精にしとどに濡らしながら、息も付きやらぬ二人に向かってアフロディは無邪気に微笑んだ。頬を滴るバーンの白濁をぺろりと蠱惑的に舐め取る。
「次は、南雲くんの番だね…」
 広げた脚の間から熱の残滓がとろりと溢れ出す。ぱっくりと口を開けたままの後孔は、次の男に貫かれる瞬間を貪欲に待ち望んでいた。



「こんなに燃えたのは久しぶりだよ…」
 じっとりと湿ったシーツに汗ばんだ手足を投げ出して、先程まで致していた行為を反芻するように、アフロディはうっとりと呟いた。あれから体位を変えて趣向を変えて、夜通し性交に励んでしまった。若い力漲る二人の相手を一遍にして疲れたのは確かだが、それ以上に身体と心が満たされた。アフロディの両脇に転がるバーンとガゼルも、精魂尽き果てて気怠げにしながら、満更でもない様子だった。

「…で、どっちなんだ?」
「何がだい?」
「わたしか晴矢か、どちらがアフロディに相応しい男かという話だ」
「うーん、それか…それなんだけどね」
 アフロディはベッドに半身を起こして、長い髪の毛をかき上げた。
「南雲くんも涼野くんも、やっぱり同じくらい大好きだから選べないよ…」
 しおらしげに呟いたアフロディは、そのまま両腕に二人を捕まえて、一緒くたに抱き締めた。
「だから、これからも三人で仲良くしよう?」
 勿論エッチ込みでね!と微笑みかけるアフロディの腕の中で、バーンとガゼルは顔を見合わせた。

 これだからこの神様には敵わない。

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