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最初見たときは、正直なんだこいつと多少なりとも驚いた。…いや、かなり驚いた。中学生、もしかしたら小学生にもあるまじき身長。一度見たらなかなか忘れないマスコット具合。からかいたくなるようなかわいさ。もちろん部内で男扱いされるわけがなく、成神によって源田を起こす材料に使われたり、佐久間によって源田にぶつけられたり、寺門によってトロフィーとトロフィーの間に飾られたり…なんかもうかわいそうなくらいにお人形さんである。

そして俺はそんなお人形にブロック技を習うことになったわけだ。

「辺見 洞面が呼んでる」
「はぁっ?!もうかよ!!」

佐久間がベンチで休んでいた俺に言う。佐久間も休憩に入ったらしい。相変わらず女の子みたいな顔してんなこいつ、と思いながら、言われた言葉の内容に驚きを隠さない。無駄に広い帝国のサッカーフィールドを見渡せば、洞面が源田に肩車されているのが目に入った。

俺はあまりにファールをとられるために、キラースライドに代わる新しいブロック技を洞面に習っている。洞面が教えてくれるのは旋風陣。案外強いしファールをとられない。とられたとしても、キラースライドの比ではない。
しかし難しい。わけがわからないくらい難しい。まず逆立ちみたいな状態を保つことでいっぱいいっぱいだ。それで開脚しろって意味が分からない。
俺にはハリケーンアローみたいな技のが合っていると思うのだが、洞面が「頑張ります!」なんて言うもんだから断れず今に至る。
洞面は頭が良いから教え方は上手い。流石だと思う。練習を始めて数日が経過しているが、まあまあモノになっている…と個人的には思っている。最初は逆立ちの状態で限界だったし。逆立ちのまま体を回転させることはできるようになった。
だが問題は足が開かないことだ!

腕を酷使するから毎日筋肉痛だし。今も休憩を入れて休んでいたところだった。まだ5分くらいしか経っていない。

「洞面もやる気だからな」
「そうだな」
「…足開けるように頑張れよ」
「人事だな…」
「俺、属性不一致」

誇らしげに不一致を告げる佐久間が憎らしい。

「おーい辺見ー!」
「…おー!」

源田の呼ぶ声に観念してフィールドに戻る。頑張れよ、と背中にかかる声に心の中で頷いた。洞面の居るところになかなか辿り着かないから、無駄に広いフィールドの必要性を問いたくなった。

源田の肩から降りた洞面は小さかった。顔を首にほぼ垂直にしないと俺とは目が合わない。いつもあの昔あった犬のCMを思い出す。うちの洞面の方がかわいいが。

「先輩!僕、無理させてませんか?」
「は?」

練習についての話がくるかと思ったが、違った。洞面は不安そうな顔をしていた。いつもあの自信のある表情しか見ていないから、意外すぎて変な声が出た。だからなのか源田が吹き出した…うぜえ。

「なんで」
「いつも先輩たちが可愛がってくれるから、今回の話は恩返しできる!って思ってつい気合い入れすぎちゃったかもって…」

髪の毛であるはずなのに、まるで動物の耳のようにしゅんと垂れている気がした。
ああ、イカサマだとか何とかだとか色々言われている洞面だが、サッカーが好きで、俺たちのこともきっと好きでいてくれて、ていうか俺のこと先輩って思ってくれてたのか……成神とよく組むことが多いからあまり敬われてないと思っていた。
やっぱり 洞面はかわいい。

ちらりと源田を見ても、相変わらずムカつくくらい格好良い微笑みを浮かべている。考えていることは一緒だ。

「早く、練習しようぜ」
「!」
「俺たちは帝国だ!次こそ優勝するんだからな」
「はい!」

旋風陣だろうが何だろうがやってやろうと思う。次はトライペガサスとか言い出しそうだが(佐久間とかが)、まずは自分のこの硬すぎる体を何とかすることから始めなくてはならないだろう。

洞面には後でアイスでも買ってやることにした。





 友人の最上川さんから戴きました。
 6/8 辺洞の日。

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