稲妻11 | ナノ


 近頃は日本にも、ハロウィンというイベントが浸透してきた。千葉浦安にある某有名テーマパークが、ハロウィンを積極的に取り入れて宣伝しているのも、一般に広く認知されるようになった一因かも知れない。

 バレンタインデーやクリスマスイブの絶対性には及びはしないものの、考えてみればハロウィンも、割とカップル向きのイベントである。
 ハロウィンといえば『トリックオアトリート?』のフレーズがお馴染みだ。「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」と脅しながら、お菓子で満足するつもりは更々なくて、本当の目的は最初から悪戯の方にあることは言うまでもない。
 ハロウィンというイベントに託けて、可愛い恋人にエッチな悪戯をしてみたい…非常に下らない欲求ではあるが、コスプレエッチは男のロマンの一つなのである。

 というわけで霧野蘭丸も、幼なじみで恋人の神童拓人のために、お小遣いを奮発してみた。


「えっ、これ…」
「今日はハロウィンだろ?神童に似合うと思って、用意したんだ」
 拓人の家に泊まりに来た蘭丸が、得意げに広げて見せたのは、所謂コスプレ服という代物で、可愛らしい魔女になりきるための衣装一式だった。膝丈の長さの黒いサテン地ワンピースは、ロフトで普通に売っていた安物だが、これくらい気安いものの方が初めてのコスプレはやりやすいだろう、と考えて選んだものだ。
 女装なので着るのに抵抗があるかも知れないが、着てくれるよな?と綺麗に微笑めば、蘭丸のお願いに弱い拓人は、恥じらいながらも頷いてくれるはずだった。
 しかし蘭丸の予想に反して、拓人の反応がどうも芳しくない。不思議に思った蘭丸は、どうしたんだ?と拓人に聞いてみた。
「実は俺も…」
「…神童も?」
「霧野に似合うと思って、これ…」
 拓人は部屋の隅に置いてあった紙袋を、蘭丸の前におずおずと差し出した。袋の中身をひっくり返してみれば、蘭丸が持ってきたものと形は異なるが、これもまた魔女のコスプレ服だった。しかもかなり凝った作りをしていて、使っている布の質も段違いに良い。
 流石は神童…と蘭丸は感心したのだが、人事ではなかった。言うまでもなくこの衣装は、蘭丸のために用意されたものである。

 二着のコスプレ衣装を間に挟んで、蘭丸と拓人は困った顔を見合わせた。お互いに相手に似合うだろう(着て欲しい!)と思って、相手には内緒で、好みの衣装を用意してしまった…ということらしい。

 ハロウィンの夜に、ちょっとエッチな魔女っ子の仮装をした拓人を、可愛い可愛いと褒め契りながら抱く…という蘭丸の夢は、端から呆気なく頓挫してしまった。拓人も同じ気持ちになっているようで、しゅんと悄気返っている。
「霧野ぉ…」
 涙目で拓人に訴え掛けられて、蘭丸の心が揺れ動く。蘭丸もまた、拓人のお願いには頗る弱かった。子犬のような目で拓人に見つめられると、どんな難題だって聞いてやりたくなる。
 男という生き物の単純さといったらない。惚れた相手には無条件に弱くなってしまうものだ。やれやれと溜め息をついた蘭丸は意を決して、拓人の用意した衣装を手に取った。
「折角用意してくれたんだし、着てやるよ」
「…本当か?」
 分かり易く目を輝かせる拓人に、蘭丸はすかさず、自分の持ってきた衣装を突き付けた。
「――ただし神童、お前も着るんだ」
 拓人の顔に浮かんだ喜色が、がっかりとした諦めの方向に落ち込んだ。基本的に拓人に優しくて甘いものの、締めるところはきちんと締める男、それが霧野蘭丸である。


「着られたぞ神童ー」
 早速お披露目が始まった。蘭丸が着ている衣装はかなり際どい丈のミニスカートで、足元は紫のフリルが付いた網のニーハイを、ガーターベルトで吊り上げる仕様だ。ピッタリとした上半身の背中の部分はリボンの編み上げで、背中を大胆に見せつけるデザインになっている。
 蘭丸は露出の多い着衣を、改めてまじまじと眺めてみた。高価な衣装らしいだけあって、チョーカーや手袋に至るまで、服飾品もかなり凝っている。
「ふーん…神童はこういう、セクシーなやつが好きなんだ」
 この格好はワンピースというよりもボンテージ、魔女というよりも女王様に近いのではないか…と蘭丸は思ったが、口にしたらアブノーマルさが増すような気がしたので黙っていた。
「…霧野なら、着こなせると思って…」
「で、感想は?」
「すごく似合うよ!霧野、可愛い…」
 蘭丸を見つめる拓人は頬を染めて、衣装の似合いっぷりを手放しに褒め契る。そう言う拓人もまた、如何にも魔女っ子といった感じの衣装を身に纏っていた。
 こちらはメイド服とワンピースを足して二で割ったような、簡素な形のドレスである。衣装の質は蘭丸の着ているものには遠く及ばないが、そのチープさが却って蘭丸には堪らなかったりする。

「お前も可愛いぞ、神童」
 蘭丸が膝丈の裾を少し捲って揶揄うと、拓人は慌ててスカートを押さえた。
「冗談はやめてくれ」
「本気だよ。悪戯したくなる」
「ふわあああっ!!!」
 唐突に胸を鷲掴みにされた拓人が、素っ頓狂な声で絶叫した。
「き、霧野っ!いきなり何をするんだ…!?」
「何をって、決まってるだろ。この期に及んでかまととぶるなよ」
「かまとと、って…」
 あれもこれも二人で済ませた仲だというのに、相変わらず生娘のような言動をしては恥じらう素振りを見せる拓人に、蘭丸ははっきりと突っ込んで問い掛けた。
「お前は俺に魔女のコスプレをさせて、仲良く記念撮影をしたかったのか?」
「…いや、違うけど…」
「俺も違う。俺は可愛い格好の神童とエッチしたかったんだから」
「…き、霧野…っ!」
 正直な蘭丸の直球すぎる物言いに、拓人はの顔は真っ赤になってしまった。
「神童は違うのか?」
「……ちがわない…」
 しかし初心に恥じらう拓人とて、魔女っ子の衣装を用意した本心は蘭丸と同じである。コスプレエッチは男のロマンだ。たとえ自分がどのような格好をしていようと、好みの魔女服を着た恋人は可愛い。
「じゃあ決まりだな。するぞ」
「あ、ああ…」


 立ったままきつく抱き合って、舌を絡める深いキスをする。奥手な拓人が相手だから、蘭丸がリードすることの方が多い。キスをしながら拓人の身体をまさぐっていた蘭丸の手は、探索がスカートの中に及んだところで、いつもと違うすべすべとした手触りの生地に遭遇した。
 拓人の小尻を覆っている薄い布は、コスプレの衣装と共に、蘭丸が調達してきたものである。穿いてもらえるかどうかは一か八かの勝負だったが、一緒に渡しておいて正解だった。ディープキスで早くも蕩け始めている拓人に、蘭丸は機嫌良く笑い掛けた。
「ちゃんとパンツまで穿いてくれたんだな。偉いぞ」
「だって、入ってたから…」
 恥ずかしそうに両脚を擦り合わせた拓人は、何を隠そう、女の子用のパンティーを身に着けている。拓人のために蘭丸が選んだ、音符の柄が入った可愛らしいものである。拓人が女装のコスプレをした上に、女物の下着まで穿いていると思うと、蘭丸は胸のときめきを抑えられなかった。
 要するにギャップが良いのだと思う。拓人は顔立ちこそ大人しげで優しい感じのする少年だが、サッカーで鍛えられた下半身は、筋肉質で引き締まっていて男らしい。
 そんな場所にあの可愛いパンティーを着けているというのだから、想像しただけで堪らない気持ちになる。抱き合ってキスしているこの体勢からだと、パンティー姿を拝めないので残念ではあるが…。

「霧野は?」
「俺?なかったからノーパン」
 拓人の質問に蘭丸はさらりと受け答えた。拓人から受け取った紙袋の中にはコスプレ服の他にも、ガーターやニーハイなどの服飾品が沢山入っていたが、下着は用意されていなかった。自前のトランクスを穿くわけにもいかない…と思案した結果、蘭丸はミニスカートの下に何も穿かないことを選んだ。
 ノーパンと聞いて、拓人の顔が火を噴いたように赤くなる。拓人の初心な反応は、蘭丸の期待通りだった。真っ赤になって動揺しながらも、頭の中ではいやらしい想像を、あれやこれやと巡らせているに違いない。ムッツリスケベの気がある拓人を、蘭丸は更に揶揄ってみた。
「駄目だなぁ神童…ガーターの下にはパンツが必要なんだぜ?」
「ごっ、ごめん…俺、知らなくて…」
 意地悪で言った指摘に対して、律儀に謝る拓人の真面目さが可笑しい。拓人が女物の下着に詳しくても嫌なので、蘭丸としてはこのくらい抜けていてくれた方が、実のところ安心するのだが。

「本当に、神童は可愛いな…」
 折角穿かせたパンティーを、いきなり脱がせるのも勿体ない。どうせなら普段は味わえない感触を、目一杯堪能した後で…そう考えた蘭丸は拓人の身体に抱き付いて、ミニスカートの中で剥き出しになっている陰茎を、拓人の股間へ押し付けた。驚いた拓人が上擦った声を上げる。
「ッ!霧野…っ?な、何して…ッ?」
 先程の濃厚なキスのせいで、二人の下半身は顕著な反応を見せていた。硬くなっている雄と雄を密着させて、すりすりと触れ合わせる。
「んー、兜合わせ?これされるの嫌?」
 蘭丸は拓人の腰を抱き寄せて、互いの股間をより一層密着させた。パンティーの中で勃起した拓人の性器と、素のままの蘭丸の性器が、薄い布地を介して裏筋同士擦れ合う。
「嫌じゃないけど…っア、ん…ッ!」
「全然大丈夫そうだな」
 拓人の感じている声を聞いた蘭丸は、くすりと笑って腰を動かし続けた。直接触れ合うのとは違うもどかしい刺激が、却って二人を煽り立てる。敏感に反応して震えている拓人の首筋に、蘭丸は湿った吐息を悩ましげに吐き出した。
 自分たちは何ということをしているんだろう…仄暗い後ろめたさを感じながらも、卑猥な行為をやめられない。女装のコスプレをして抱き合いながら、互いのスカートをあられもなく捲り上げて、屹立した勃起を擦り合わせる。
 最高にいやらしくてはしたない行為に、二人の興奮は最高潮に達した。

「やっ…霧野ぉ、これ…ッなんか、駄目だ…ァ」
 もう我慢ならないとばかりに、悶えた拓人が切なく身を捩る。大きな瞳が泣きそうなくらい潤んでいるのを見た蘭丸は満悦して、つい意地悪な言葉を拓人に投げ掛けてしまう。
「駄目なのか?こんなにパンツびしょびしょにしてるのに?本当は気持ちいいんだろ?」
「でもっ…あッ、ふぅ、あぁッ…!」
 ぐいっと突き上げるように、腰を強く押し付ける。拓人の穿いているパンティーの前面は、二人分の先走りを吸い込んで、ぐっしょりと淫らに湿っていた。これだけ汚れてしまったら、可愛らしい柄や素材も台無しだ。
 しかし濡れた布地に勃起が透けて、欲望の形どおりに浮き出ているのを見ると、蘭丸は却って興奮した。拓人の耳元に唇を寄せて、いやらしさとはしたなさを挙げ連ねる。
「ノーパンガーターの俺に、パンツの上からチンコ擦られて、神童は気持ちいいんだよな?」
「っ、うん…きもちいい…霧野ォ…きもちいいよぉ…ッ」
「可愛い神童…もっと気持ち良くしてあげる」
 はぁはぁと切なく喘ぐ拓人を、蘭丸はおもむろにベッドに寝かせた。シーツに無造作に広がる漆黒のスカートが、何ともそそる風情を醸し出している。
 中途半端なところで快感を切り上げられた拓人が、蘭丸の顔を不思議そうに見上げた。
「霧野…?」
「…そんな物欲しそうな目で見るなって…ちゃんとイかせてやるから、安心しろ」
 ベッドに仰向けにさせた拓人の身体に、蘭丸は大股を開いて跨がった。びしょ濡れのパンティーを下へずらすと、小さな布地に押さえ付けられていた拓人の性器が、勢いよく飛び出して天を仰ぐ。
 びんびんに勃ち上がって充血した雄の姿に、蘭丸はごくりと期待の唾を飲み込んだ。内心舌舐めずりをしながら、蘭丸は拓人の陰茎に指を添える。
「やっぱり、一発目は大事だよなぁ…」
「っえ、あ…霧野…っ?」「俺の身体で、気持ち良くなってよ…神童っ」
 挑発的に誘惑した蘭丸は、そのまま拓人の勃起の上に腰を下ろした。


「…ん、っく…ぁあ…っ…」
 眉根を寄せて呻く蘭丸の体内に、ずぶずぶと拓人の雄が埋まっていく。挿入の瞬間だけは何度契っても慣れることはないが、苦しさの中にも快感を見出だすことは出来るようになった。肉同士の結合によって生じる悦楽は、先程までの児戯とは比べ物にならない。
「ッあ…きりの…ッ、っあぁ…アッ…!」
「…っふ、ぁん…ッ、神童の…いつもより、かたい…っ」
 男根を根元まで収めることに成功した蘭丸は、息をつく間もなく拓人の上で腰を振り始めた。押し入れるときは力を抜いて、引き抜くときには絞り上げる。蘭丸の後孔の使い方は流石というべき巧みさで、与えられる快感に拓人は喘ぐことしかできない。
「んっ…神童、どうだ?俺のからだ、気持ちいいか…?」
「はぁ…ッ、あぁ…きりのぉ…きもちいいよ…あ、ぁン…」
 それにしても、蘭丸に騎乗位をしてもらったことは何度かあるが、今回の眺めはまた絶景であると拓人は感動した。刺激の強い黒い衣装に白肌の大胆な露出が映えて、律動の度にぱさぱさと揺れるピンク色のお下げが可愛らしい。
 ネットで通販を頼む際に、この衣装を選んで正解だった。まるで本物の女の子に押し倒されて、犯されているみたいだと思う。
 しかしミニスカートの前部を押し上げているのは紛れも無く、蘭丸が持つ男の象徴だった。どんなに可愛くて魔女っ子のコスプレが似合っていても、蘭丸は歴とした男なのだ。…男だけれど、蘭丸は拓人の勃起を銜え込んで、騎乗位で淫らに腰を振っている。
「俺も気持ちいい…神童の、熱くて…ッ、たまんないよ…」
「ん、ぁあ…っきりの、…ン、あぁあ…ッ!」
 女の子以上に可愛い蘭丸に伸し掛かられて、お尻の穴で肉棒を扱いてもらっているのだから、これほど贅沢な話はない。

「ふふっ…神童、乳首たってるぞ…」
「…っえ?ッあ、やァ…ッ、アァ…!」
 薄いサテンの生地に浮かんだ拓人の胸の突起を、蘭丸は指でキュッと摘まみ上げた。拓人の全身がびくびくと痙攣して、蘭丸の中にある性器も大きくなる。
 布越しに拓人の乳首を弄り回しながら、蘭丸は腰の動きに捻りを利かせた。後孔に力を入れて肉棒を締め上げると、拓人はとうとう限界を訴えた。
「きりの…ッ、も、ダメだ…イくッ…!」
「ん…いいよ、しんどぉ…好きなときにイっていいからな…?」
「ッあ、きりのッ、きりのぉ…ッ!ふあ、アッ…ひぁ、アァ…っ!」
 箍が外れたような高い声を上げて、拓人は呆気なく達してしまった。体内を濡らす精液の熱さと勢いに、絶頂には至らないものの蘭丸の身体も感じ入る。
 拓人の肉棒を抜くときは気を付けて腰を上げたのだが、少し残滓が溢れてしまった。いつもより量が多いと感じるのは、拓人がそれだけ、女装コスプレでのセックスに興奮したからだろうか…。


「神童、大丈夫か?」
 射精した直後の脱力して惚けた顔を見るのが、蘭丸の事後の楽しみだった。余韻に浸って放心した拓人の輪郭を、蘭丸は指でそっと撫で上げる。
「…気持ち良かった?」
 蘭丸に問われて意識を取り戻した拓人は、ハッとした顔に後悔の色を浮かべた。
「っ、ごめん…!俺また、霧野より先に…ッ!」
「そんなこと、気にするな。神童が良かったなら、俺はいいんだ」
「でも…霧野、お前まだ…」
 拓人の性器は萎えていたが、蘭丸の性器は硬く勃起したままだった。自分だけ先に達してしまったという罪悪感が、拓人の心をちくちくと苛む。しかも今回は蘭丸が騎乗位で全てやってくれたから、拓人自身は喘いでいただけで何もしていない。

 申し訳ない気持ちを深めて青褪める拓人に、蘭丸はからりとした笑顔を向けた。
「ああこれか?これから神童に挿れるから丁度いいよ」
「…今、何て…?」
 体液でぐしゃぐしゃになったパンティーを脱がせた蘭丸は、拓人の両脚を大きく開かせて抱え上げた。何をされるのかと怯える拓人に見せ付けるように、自身のミニスカートを大胆に捲り上げ。可愛らしい顔形の割に、雄々しく成長した勃起が露わになる。
 ――悪戯をされたら悪戯をし返すのが、世の常というものだろう。
 蘭丸は自身の切っ先を、拓人の後孔に押し付けた。
「それでは、いただきます」
「ッや、きりの、待て…ッア!ふあぁああ…ッ!!!」
断末魔のような拓人の嬌声が、ハロウィンの夜に響き渡った。



何はともあれ、Happy Helloween!!!




 おわり

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