稲妻11 | ナノ


※源田♂搾乳ネタです。
※実にただのやおいです。
※源照前提だけど照源。




「話があるから、今から行く」と、題名もなくただその一行だけが本文として記されたメールが、前触れもなく照美の元へと届いた。送信者は源田幸次郎。言わずもがな、照美の彼氏である。
 照美は起き抜けの冴えない目を擦りながら、携帯の画面をぼんやりと見つめた。二度寝するつもり満々の土曜日の朝に、このような文面で起こされてしまってはどうしようもない。送信時間から計算すると、源田がこの家に到着するには、あと小一時間ほど掛かろうか。一先ず照美は寝巻きから着替えて、身嗜みを整えて源田の来訪を待つことにした。
 そして見積もりどおりの時間に、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴らされた。
「おはよう源田くん」
「…おはよう、アフロディ…」
 源田は駅から走って来たのか、息が少し上がっている。一見してただならぬ様子だったので、これは珍しいなと照美は思った。凛々しい眉毛が力無く下降して、見事なハの字を作り出している。優しくて面倒見の良い性格故か、目元を緩めて困ったように微笑む顔は見慣れたものだが、ここまであからさまに困惑した源田は初めて見た。周章狼狽といっても良いかも知れない。
 玄関で立ち話をさせるような仲でもないので、照美は源田を部屋に招き入れた。源田用のライオンの座布団を持ってきて、腰を落ち着けるように勧める。用意されたライオンの顔の上に源田はきっちりと正座した。テーブルを挟んだ向かい側に照美が座る。向かい合う二人の間をしばしの沈黙が流れた。
 ――メールが届いてから源田が来るまでの間、別れ話だったらどうしようかと考えていた照美だが、目の前で煩悶し逡巡している源田を見ると、別れを告げに来たわけではないとわかる。懸念のひとつが無くなって一先ず照美は安堵した。
 大体あのメールは宜しくない。恋人に突然「話がある」と切り出されたら、身に覚えがあろうとなかろうと、悪い想像を巡らせてしまうものだ。
 その程度の気遣いが出来ない源田ではないが、如何せん今はこの状態である。彼の身に何かが起きたことは明白であり、言葉を吟味する余裕もなくなっているのだろう。
 俯いてテーブルの木目に視線を這わせたまま、おそるおそる源田が口を開いた。
「いきなり来てすまない」
「気にしないでよ」
 僕と君の仲じゃないかと、悠然と照美は微笑んだ。源田も少しだけ表情を綻ばせる。そうだった。自分が惚れた照美はこういう人間だった。気高い外見からは想像が出来ないほど、広くて深い懐を持っている――照美にならば話しても大丈夫だろうと、源田は我が身に起きた秘密を共有する意志を固めた。
「あのな…笑わないで、聞いて欲しいんだが」
「うん」
 照美は親身になって聞く姿勢を取った。照美は肝が据わっている方なので、大概のことは冷静に聞くことができる。大船に乗ったつもりで話してもらえたらいい。源田を困らせる悩みは受け止めてやろうと思っていた。
「…おっぱいが、出るんだ」
 予想の斜め上を行く源田の告白に、笑うどころか思考が停止した。照美の大船が大きく傾いた。
「……誰の?」
「俺の」
「まさか」
「そのまさかなんだ…!俺だって、信じたくはないが…」
 顔を背けた源田の態度には、揶揄いのかの字も見えやしない。元より自虐的な話は好まない男である。源田が語る内容は全て真実であり、いよいよ冗談ではないらしい。
 広くて深い懐を持つ照美も、ぶっ飛んだ話に動揺せざるを得ない。源田幸次郎という人間と「おっぱい」が結び付かなくて困惑する。照美は心を落ち着かせるために素数を数え始めた。そうしてようやく事態が飲み込めてくる。
「源田くんのおっぱいだって…!?」
 理解した瞬間、雷のような衝撃が照美の心を貫いた。
「君、おっぱいが出るのかい?」
「あ、ああ…」
「源田くんから、おっぱいが…?」
「そうだ…あと、あまり連呼しないでくれ…」
「おっとすまない。はしたなかったね」
「お前が言うと特に違和感がある…」
 美しく愛らしい照美の口から直接的な単語が発せられるのは、恥ずかしくて堪らないらしい。源田はますます顔を赤くして額に汗を滲ませている。
 女の身体を知らない初心な中学生男子の反応が、童貞臭くて可愛いと照美は胸中感動した。連呼して辱めてやることも考えたが、そう戯れている場合でもなさそうだ。今の源田を揶揄ったが最後、そのまま切腹してしまいそうな気がする。
「朝起きたら身体がおかしくて…その、何故か出るようになっていた…」
「漫画みたいな展開だね」
「でも、本当なんだ」
 見たところ源田の外見に目立った変化はない。胸も胸筋以上に膨らんではいないし、見た目は普通の男子中学生である。本当にそんなおかしなことが源田の身に起きているのだろうか。照美はテーブルから身を乗り出して、源田のシャツの襟元をおもむろに掴み引き寄せた。
「見せてよ」
「えっ」
「君は僕に助けを求めに来たんだろう?論より証拠。百聞は一見に如かず。実物を見せてもらわないと、話は進まない」
 言うことの筋は通っている。つまりは信じられないから実際に「おっぱい」とやらを見せてみろと、照美は源田に迫っているのだ。
 有無を言わさぬ剣幕に気圧されて、硬直する源田のシャツのボタンを、照美は器用に外していく。綺麗な形の鎖骨に続いて、健やかな胸板が露わになる。そこに妙なものを認めた照美は眉を顰めた。
「なにこれ」
 照美が指差した源田の裸の胸の頂点には、乳首を覆うように四角いガーゼが貼り付けられていた。
「何か当てておかないと、染み出てシャツが濡れるんだ」
 真面目な顔で源田は説明するが、あまりにも滑稽なその姿に、照美は気が抜けてがっくりした。まるでお笑い芸人のようである。なんとも情けない姿だ。
 こんな間抜けな処置をしないといけないくらい、源田の異常は酷いものなのだろうか。源田の胸にはしなやかな筋肉が付いていて、張りのある肌は盛り上がっているが、女の子のような柔らかな膨らみはない。悲しいくらいに男の胸だ。ここから母乳が出るのだと源田は言う。俄かには信じがたい話であるが。
「直接触ってもいいかい?」
 源田の返事を待たずに、照美は乳首を覆うガーゼを手に掛けた。ペリッと勢いよくテープを剥がすと、皮膚を引っ張られた源田が痛そうな顔をする。それと同時に甘くて懐かしい芳香がふわりと立ち上った。五感に敏感な照美の鼻がひくりと反応した。
「…う、わぁ…」
 そこはまるで女の乳頭のようだった。ガーゼに覆われていた乳首はしっとりと湿っており、ぷっくりと柔らかそうに膨らんで存在を主張している。艶やかな乳首と男らしい胸板とのギャップに、照美は途方もない眩暈を覚えた。なんとも倒錯的でいやらしく、不思議な光景だった。
「あ、あまり…見ないでくれ…」
 顔だけでなく耳まで真っ赤にした源田は、照美から顔を背けて羞恥の視線に耐えていた。緊張で全身を強張らせたからか、力の入った乳首の先端に乳白色の雫が生まれる。照美は純粋に驚いた。源田は本当に「おっぱい」を出している。
「すごい…こんなに不思議なことが、本当に起こるんだね…」
「おい!アフロディ…っ…!」
 照美が源田の乳首を指先で摘むと、先端に出来た球状の白い液体は量を増して、表面張力が限界に達したところで、重力に従い筋になって流れた。マッサージをするように強弱を付けて胸を揉み込めば、幾筋もの線ができて源田の上半身を伝い落ちる。その度に強く香る甘い匂いが鼻孔を擽る。源田の胸から溢れるそれは、紛れもなく「母乳」だった。男の胸から乳が出る。照美はこくんと喉を鳴らした。
「次から次へと溢れ出てくるね…こんなに溜め込んで、苦しくなかった?」
「ん、ぁ…わからな…あ、っく、う…」
 源田は何を言って良いのかも、どんな顔をして良いのかもわからず、照美にされるがままになっている。健康的に引き締まった腹筋を、胸から溢れる乳白色の液体がしとどに濡らした。照美の手によって搾り出された液体は、中途半端に脱がされたシャツに染み込んでいく。照美は余裕のない源田を見詰めて微笑んだ。
「源田くんのおっぱい、僕が搾り取ってあげるからね」
「…っ!うああっ…!」
 照美が乳輪ごと乳首を揉みしだいた瞬間、胸の先端からぴゅっと勢いよく液体が吹き出した。それは白い放物線を描いて飛び、源田の胸を覗き込んでいた照美の顔に直撃した。正気に戻った源田が青褪める。
「アフロディ…!す、すまない!」
「ふふっ、すごい勢いだね…」
 源田の粗相を気にした風もなく、濡れた顔を手の平で無造作に拭いながら、まるで乳牛じゃないかと照美が笑う。家畜扱いかと源田は悲しくなったが、おもむろに乳首を強く吸われて思考が奪われた。
「ひっ!…な、なにして…っ!?」
 自身の胸を見れば、右の乳首に照美が吸い付いている。乳輪ごと唇で包み込み舌先で突起を弄びながら、ちゅっと先端を吸い上げる。悪寒とも快感とも言い難い刺激が源田の背筋を走り抜けた。セックスのときに乳首を舐められたりするが、それとは全く感じが違う。未知の刺激に源田は身体を震わせた。
「やっ…やめ…んあ、ぁあっ…!」
 胸を吸う照美の白い喉が忙しなく上下している。乳首から際限なく溢れ出しているものらしい。
「嫌なの?感じちゃうから?」
 照美はそう問い詰めた後、すかさず左の乳首に唇を移し替えた。吸われたために赤く染まった右の乳首を指で優しく撫でながら、左の乳首を右と同じように貪る。
 照美に胸を吸われながら、源田は自分が本当に、生乳を搾り取られるだけの家畜になったような気持ちになっていた。吸われても吸われても尽きることがない。それどころか照美の行為は源田の身体に、新たな情欲の火を焚き付けていく。
「…っく、ん、ぅあっ…!」
「ほら、おっぱい吸われて勃ってるよ」
 図星を指されて源田は恥じらった。下腹部に遣わされた照美の手が、源田の一物をぐっと握り込んだ。既に欲望の形を成しているそこは、ぞんざいな扱いすらも性的な刺激として受け取ってしまう。
「…ふぅ、ん…ぁ…あっ…」
 大雑把に弄りながらも照美の愛撫は巧みだった。着衣の上から的確に雄芯に触れ、上手く揉み上げて源田を追い詰める。下肢を構う間も乳首を吸うことは忘れない。ちゅっと吸い付く度に溢れ出るほの甘い液体は、照美の喉をこの上なく潤した。
「源田くんのミルク、美味しいよ」
「やめて、くれ…っあ、ぁ、はぁっ!」
「もっともっと…僕に頂戴?」
 全くもって、これほどいやらしい生き物は他にいないと照美は思う。男らしい顔を泣きそうに歪めて、熱くて濡れた吐息を漏らしながら、逞しい身体を淫靡にくねらせる。肉棒は快楽に正直で今にも欲望を吐き出さんとしているし、その上母乳まで垂れ流しときている。娼婦のように淫らでありながら、聖母のように清らかでもある。相反する二つの側面が、源田の痴態の中に互い違いに見え隠れする。
「あ、アフロディ…もう、だめだ…っあ…くっ、ん、はぁあッ!」
 下腹部を持ち上げるように、ぐいっと揉まれたのが決め手になって、源田は遂に射精した。ズボンも下着も穿いたまま、着衣の中に溜まった欲望をぶち撒ける。お漏らしにショックを受けた源田は、真っ赤になって震えている。ぽたぽたと涙まで流していた。恋人とは思えない悪魔の仕打ちである。
「上も下もだらし無いなぁ」
 微かに湿った手の平を降りながら照美が呟く。照美の口回りは源田の吐精と共に吹き出した乳汁に塗れている。
「アフロディ…っひ、酷いぞ…」
「ちょっと虐め過ぎたかな?ごめんね」
 照美の謝罪の口づけはほんのりと甘くて乳臭かった。止まらないおっぱい。この家に来たときから問題は何も解決していない。
「僕が責任持って搾ってあげるから、許してね」
 濡れた唇を舐めながら迫る照美を見て、源田は相談する相手を間違えたと気付くのだった。




 おわり




源田のおっぱいが突然出るようになったのは、五条さんの薬の実験かなにかのせいじゃないかなとおもいます(適当)

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