稲妻11 | ナノ


 エドガーは激しい嫌悪の中にいた。
 グラウンドに一人居残って練習をしていたら、背後から何者かに拘束されて、恐ろしい手際の良さで物置らしき場所に放り込まれた。何処の不届き者の仕業かと身構えたが、まさかアメリカ代表の二人の所行とは思わなかった。
 マーク・クルーガーとディラン・キース。人気のない密室へとエドガーを拉致した二人は、エドガーの前で抱き合って濃厚なキスを交わしている。エドガーは両手足を縛られた上に猿轡をさせられた状態で、二人のラブシーンを見させられていた。
 何が悲しくて男同士が睦み合う場面を鑑賞させられなければならないのか。しかも相手は友人とまではいかないにしろ、そこそこ既知の人物である。
 知り合いの破廉恥な交遊の場面など見たくなんてなかったと、エドガーは噛まされたタオルを噛み締めた。少なくともエドガーは、二人を良きプレイヤーでありライバルであると、口にしないまでも心の中で認めていたのに――。
 目を閉じたり背けたりすることはできるが、両手の自由を奪われているため耳を塞ぐことはできない。二人が舌を絡め合う際のくちゅくちゅという水音や、鼻から抜けるような悩ましい吐息が、エドガーの聴覚をじわじわと犯す。性的なことに潔癖のきらいのあるエドガーには、とても耐え難い苦行だった。
 そのうちに二人はユニフォームを捲り合い、つんと立ち上がった乳首を互いに弄り始めた。それで鼻にかかった気持ちの良さそうな声を上げる。乳繰り合う二人があんまりに蕩けた表情をしているので、エドガーは心底ぎょっとしてしまった。男が胸を弄られて感じるとは思ってもいなかった。
 嫌だ、不快だ、見たくない…と思うのに、エドガーは二人から目を離せなくなっていた。その視線に気づいてか知らずか、二人の行為は次第にエスカレートしていく。
「んっ…ディラン…こっちも触ってくれ」
「オーケーマーク、ミーのもお願いするよ…」
 股間の膨らみをまさぐっていた二人は、ハーフパンツから勃起した性器を取り出して、しこしこと互いに扱き合った。腰を寄せ濡れた性器を擦り付け合い、反り立つ肉棒を二本纏めて愛撫する。そして一度絶頂を迎えた後も、マークとディランの狂乱は終わらずに――。


 マークとディランの肛門性交を目の当たりにしてしまったエドガーは、すっかり腰が抜けてしまった。男同士の性行為など毛頭なかったエドガーにとって、それは未知の爆発的出来事だった。生々しい肉欲への生理的な嫌悪と、他人の性交を盗み見た奇妙な興奮と罪悪感とで頭が混乱する。
 二人は一体なんのためにこのような状況を作り出したのだろうか。愛し合いたいならそれで構わないから、関係のない自分を巻き込まないで欲しかった。
 ショックで何も考えられないエドガーは暫く呆然としていたが、ディランが猿轡を外したために、溜めていた言葉が一気に溢れた。
「し…信じられない…!汚らわしい、悍ましい…もう嫌だ…頼む、わたしを帰してくれ…」
「純情ぶっちゃって!ユーもお年頃だろ?こういうことに興味あるんじゃない?」
「わ、わたしにそのような浅ましい趣味はない…!」
「口ではそう言ってるけどね〜こっちはギンギンだよ?」
「っ、あ…っ!」
 ディランの手がエドガーの股間をぐっと押さえた。半ば勃起していた肉棒がハーフパンツの下でぐにゃりと歪む。誤魔化しようがない質量にディランが鼻で笑うのがわかって、屈辱と恥辱にエドガーは顔に朱を走らせた。
「くっ…あ…っ、やめろ…っ!」
「あはっ、ミーたちのセックスを見て興奮しちゃったんだね」
「ち、ちが…っ!んぁっ!」
 強い力で股間を握られてエドガーは黙ってしまう。「違わないよねぇマーク」と振り向いたディランの後ろから、マークが覚束ない足取りで近づいてくる。素足を剥き出しにしたマークの太股を伝うそれが、ディランが吐き出した精液だと気づき吐き気がこみ上げた。
 口も押さえられぬまま、嘔吐きそうになっているエドガーを、二人は並んで薄笑いを浮かべながら眺めた。素直でない口に付き合うのに飽きたら、身体に直接教えてやればいい。子供たちの理屈は酷く単純で明快だ。
「エドガーにも同じことしてあげる」


「ん…ぁ…あっ…あぁ…!」
 左右に一人ずつ、マークとディランに散々弄ばれたエドガーの乳首は、すっかり充血して腫れてしまった。柔らかく濡れた舌の上で転がされる度に、ぴりぴりとした痛みと痺れが、胸の先端から全身に広がる。
 女でもないのに胸を弄られて声を上げてしまうのが恥ずかしい。エドガーは必死で声を抑えようと努めたが、二人がかりの絶え間ない愛撫に堪え切れず、結局情けなく喘いでしまう。
 これならば猿轡をされていた方がマシだった、とエドガーは思うが、二人の興味はもう拘束にはなかった。二人はそれよりもエドガーの新しい性感を探る方に夢中になっていた。
「ねぇマーク…そろそろ…」
「ああ、次はこっちだな」
 エドガーは両脚の拘束を解かれると同時に、脚を一本ずつ体重をかけて抑え込まれる。「お前の脚力は危険だからな」とマークが言い、ディランも頷く。最後の抵抗の機会すら奪われたエドガーは、本当に二人の為すがままになっていった。
 エドガーの下半身にうずくまった二人は、既に反り立っている性器の側面に、一緒に舌を這わせ始めた。砲身を根元から先端までべろりと舐め上げたり、張り詰めた幹を唇で喰んだりして、二人はエドガーを追い詰める。
 性器であり排泄器官であるそこを舐められるのには激しい嫌悪が伴った。しかし心底嫌だと思う一方で、わけがわからなくなるくらい気持ちが良かった。マークとディランは最初のうちは、互いを真似るようにエドガーに奉仕していたが、やがて更なる効率を求めるように役割分担を始めた。
「い、あっ、ひああ…ぁ…」
 亀頭をくわえたディランは尖らせた舌先で執拗に尿道をほじり、マークは柔らかな陰嚢を唇で揉みながらエドガーの蕾に指を挿れた。
「ひっ…!やめ…どこを触って…あ!あっ…!」
 ぬるぬるとした何かを尻の谷間に塗りたくられて、不自然に濡れる後孔に指を突き込まれる。無論そのような場所に異物を挿入された経験のないエドガーは、目を見開いて行為を拒絶した。悍ましい感覚に全身が震えた。
「嫌だ…あぁっ!抜いて、いやっ…抜いてくれ…!」
 長い髪を振り乱してエドガーが拒んでも、マークがやめるはずがない。マークの指は潤滑油の助けを借りて、エドガーの後孔を器用に慣らして拡げていく。入り口付近を丹念に擦りながら、男の体内にある勘所を探す。
 ようやく見つけた膨らみをマークの指先が捉えた瞬間、初めて味わう前立腺の刺激にエドガーが叫んだ。
「っあ?!や、あっ…はぁっ…!」
「ここだな…ディラン」
「わかってるよマーク」
 もう一本指を増やしたマークがピンポイントで前立腺を狙う。それだけでもエドガーには堪らない気持ちよさなのな、あろうことかディランはエドガーの肉棒を根元まで飲み込んでしまった。
 体内の性感帯をぐりぐりと乱暴に責められながら、充血した性器全体に吸い尽くような口淫を受けて、あまりに強烈な快感にエドガーは意識を飛ばしかけた。
 エドガーの脚の間で質感の違う二つの金髪が蠢く。限界は間も無く訪れた。
「ひぃ、いっ、ん!ひあっ…はぁっ!ああーっ!」
 エドガーは端麗な容貌を涙と涎でぐちゃぐちゃにして、今までに味わったことのないような、凄まじく暴力的な絶頂を迎えた。


「ミーたちがユーの前でセックスしてみせたのは、何のためだと思う?」
 憔悴し切ったエドガーの顔を覗き込みながら、謎かけでもするようにディランが尋ねる。
「それは同じことをお前にするためだよエドガー」
 話せないエドガーの代わりにマークが答えた。二人は弛緩したエドガーの体を横向きに倒すと、前面と背面に別れて座った。
「でもオレたちは二人だから、エドガーには頑張ってもらわないとな」
「ノープロブレム!こんなに慣らしたんだから大丈夫さ」
 大きく開脚させられたエドガーの後孔に、二人の熱の先端が押し付けられる。本能的な恐怖を察して顔を真っ青にするエドガーを、マークとディランは愛おしげな眼差しで見つめた。
「さぁ、エドガー」
「オレたちを受け入れてくれよ」
「ひっ…やっ!無理だ、そんなの入らな…あっ!ひぅ…ああああっ!!!」




「ああ、やっぱり二人で半分こにするに限るなぁ…」

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