稲妻11 | ナノ


 世の中には不可思議な文化があるものだ。漫画やアニメのキャラクターをモチーフにして、小説や漫画を仕立てることが、乙女の間の流行らしい。
 法に引っ掛からないものかとエドガーは勘ぐったが、法律に明るくないため考えることをやめた。
 それにうら若き花盛りの乙女たちが、きゃっきゃと無邪気にはしゃいでいるのを見るのは幸せなことだ。乙女たちが笑顔ならばそれでいいではないか。エドガーは適当にそんなことを思っていた。
 この、一冊の本を手にするまでは。


 翌日の練習メニューについて監督と打ち合わせたエドガーは、チームメイトより遅れてクラブハウスへ戻った。案の定みんなは宿舎に引き上げた後のようで、グラウンドに隣接した更衣室はがらんとしている。
 決められた夕食の時間も近いし、自分もさっさと着替えて帰ろうと――自身のロッカーの扉を開けたエドガーの視界に一冊の薄い本が飛び込んできた。
「…?なんだこれは…」
 ちなみに間近いなくエドガーのロッカーである。誰かが間違って入れたものだろうか。何気なく本を手に取ったエドガーは、表紙を見て驚きに目を見張った。
「な、なんなのだ!これは…」
 そこには今にも口づけを交わせるほど密着した、少年と男性の艶めいたイラストが描かれていた。その絵面だけでも大層衝撃的であるのに、その二人の容姿が自分と監督にそっくりだったので、エドガーはますます驚愕して頬を赤らめた。

 少女漫画のようなタッチで描かれた長髪の少年を、髪型が似ているという理由だけで、自分と判断するのは自意識過剰かもしれない。
 しかし男性の方はどうみても監督だった。シルクハットに片眼鏡の金髪だなんて奇抜な特徴を持つ者は、エドガーのよく知る監督しかいない。
 これではまるで自分が監督にキスを迫られているようだ。

 …これは一体なんなのだろう。誰が何のために制作したものなのだろう。疑問と好奇心に負けたエドガーは、おそるおそる薄い本のページを捲り出した。


 結論から言うと、この本は所謂エロ本だった。監督似の紳士っぽい男性が長髪の美少年に色々致す破廉恥な内容の漫画であった。
 エドガーの知らない言葉で書かれた台詞は読めないが、それが却って想像を掻き立てる。少年はどんな言葉で男に罵られ、強請り、喘いでいるのだろう。
 気が付くとエドガーは少年を自分に置き換えて、自分ならこう言うだろう…ということを想像して、自慰を始めていた。

「っあ…監督…あ…はぁっ…」
 物語の序盤は少年のチームが敗北するところから始まる。そしてキャプテンらしい少年のみ監督である男に呼び出され、全裸になることを強要される。
「や…恥ずかしい…許してくだ…あっ…」
 一糸纏わぬ姿で立つ少年の肌を、男の持つステッキの先が辿る。特に胸の突起を執拗に嬲られて、少年は恥辱に白皙を染めた。
「監督…いや…いたい…あぁ…」
 その内にステッキの先端は下腹部に移り、淫らな児戯に反応した少年の性器をなぞり上げる。そして充血した亀頭をぐりぐりと刺激され、少年は男に見られる中で遂に達してしまう。

「ひっ…はぁ、ぁっ…ああっ!」
 右手で肉棒を激しく扱き、左手で乳首をきつく摘みながら、エドガーは自身の手の中に射精した。勢いよく飛んだ白濁は開いたままの本にかかり、絶頂後の少年を描いたページに染みを作った。エドガーははぁはぁと息をしながらそれを舐め取った。

 しかし一度達した程度では、男と少年の恥辱の行為は終わらない。少年は全裸のまま尻を男の方に向ける形で四つん這いに這わされる。
 高く掲げさせた少年の白い臀部を、男はお仕置きと言わんばかりにステッキで何回も叩いた。その度に少年は可哀想な程背中を仰け反らせ、涙を浮かべて許しを請う。
 その反面少年の性器は尻を叩かれる度に力を取り戻し、床に卑猥な染みを撒き散らしてしまう。被虐の悦びに震える少年を男が愛おしげに見つめている。

 本の中の少年と同じようにエドガーも四つん這いになって、自身の性器を弄り回した。尻を叩いてくれるひとはいないが、その分自分で乱暴に性器を扱く。亀頭に爪を立てたりして痛いくらいの刺激に耽る。
 エドガーの手の中で勃起した肉棒がどくどくと脈打った。さっき一度達したばかりだというのに、次から次へと溢れる先走りが床にぽたぽた飛び散る。
 エドガーは自身の精液に濡れた指を、飢えた後孔へ持っていった。漫画の中では少年がステッキに肛門を犯されて、あられもない表情で喘いでいた。

 ぬめる精を穴によく塗り付けてから、エドガーは人差し指を体内に挿入してみる。違和感は拭えないが大丈夫そうなので中指も揃えて中に差し入れる。
 そのまま慣らすように緩く抜き差しをして、もう片手で同時に前を可愛がると、下半身が甘く痺れるように心地良かった。
「ふっ…あ…監督…やぁ…ぁあ…っ」
 監督がいつも手にしているステッキに犯されるのを想像して、エドガーは夢中で尻で自慰をした。二本の指を根元までずっぷりと押し込めて物欲しそうにひくつく中を擦る。腹側の内壁を執拗に探ると、快楽のツボが浮かび上がる。
「んあ!あっ、ひぃ…きもちいい…ぁ、あん…」
 前立腺を見つけたエドガーはそこを指先で摘むようにこねくり回す。暴力的な快感が全身を隈無く駆け巡り、エドガーは腰を砕けさせた。

「…っあん、監督ぅ…あ…やぁっ…」
 エドガーは性器を弄る手を一旦離してページを捲る。椅子に座った男の膝に跨る形で、少年は男に抱かれていた。たくましい男根が少年の小さな尻に突き刺さっている。男の形に広がり切った蕾が健気で淫猥だった。
「やぁ、ん…はぁっ…あっ…ああ…」
 熱の塊に貫かれた少年は男に縋り付いて腰を振った。自ら貪欲に快楽を得ようとする態度がいやらしく淫らであった。
 少年の長い髪を掻き上げて男が耳元に何事か耳打ちする。おそらくは卑猥で屈辱的な言葉なのだろう。プライドの高い少年は唇をきっと噛み締めて、それでも刺激を求めることはやめられず、男の上で乱れ続けるのだった。

 自らの指を突き入れた後孔からぐちょぐちょといやらしい水音がしている。あられもないくらい広がったそこは体内の虚を埋めてくれる楔を求めていた。しかしこの場にはエドガー一人しかいない。少年のように抱いてはもらえない。
 一人で熱を高めることの虚しさを味わいながら、エドガーは指で前立腺を強く突いた。
「い、いっちゃう…ぁ、ん、あああっ…!」
 絶頂を迎えた蕾が指をきゅうっと締め付ると同時に、触っていない性器もが性感を極め、エドガーは迸る精を床にぶち撒けた。


 件の本は自慰に使って汚してしまった手前、クラブハウスに放置しておく訳にもいかず、こっそりエドガーが持ち帰り、今でもたまにおかずにしている。




0721の日記念突発文。
元ネタ→『なんでおなにーの日なの? 監督×自分の小説or漫画とか読みながらおなにーするエドガーが見たい』


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