稲妻11 | ナノ


 逢い引きの場所として選んだ部室に入った途端、アフロディは源田の背中に抱きついた。
「アフロディ…?」
「ああ、なんていやらしいんだ…」
 がっしりとした腰に腕を回したアフロディは、そのまま源田の上半身を撫で回し始めた。メイド服の下は素肌なので、触れたら身体のラインがよくわかる。
「ん…あ、アフロディ…」
「こんな愛らしい姿は、僕以外に見せたくないな…」
 囁きに嫉妬の色を浮かべるアフロディは、服の上から源田の胸を執拗に愛撫した。男の胸もある程度刺激を加えてやれば、乳首が立ち上がって固くしこり出す。そこだけぴんと張った布が、源田が乳首で感じたことを表していた。
「…っく…う…」
 絶妙な手触りになった二つの突起を撫でたり押したり摘んだりして、アフロディは源田の初々しい反応を楽しむ。直接触らないのもまた焦れて良いようだ。慎ましくも感じやすい肉粒の感触はアフロディも悦ばせた。
 しかも今の源田はメイド姿なのである。貞淑そうな白黒の服が源田の新たな魅力を引き出している。そんな禁欲的な格好をしながら、乳首への愛撫に感じて震える源田は、壮絶にいやらしくて可愛らしかった。
 普段はあまり意識しない雄の部分が疼いている。アフロディは火照る下肢を無意識に源田に擦り付けていた。驚く源田の身体を逃がすまいと抱き寄せて首筋に吐息を吹きかけ無防備な耳を喰む。
「ご奉仕してくれるかい?」
 スカート越しに押し付けられる熱に源田は赤面しながらも、アフロディの要求に従順に頷いたのだった。


 制服の前を寛げて苦しそうにしていた性器を取り出す。アフロディは顔に似合わず大した逸物を持っている。勿論源田のそれとは比べ物にならないが、それは単に比較対象が突出しているからであって、平均的に見れば立派な部類に分類されるだろう。
 アフロディの性器は何より形と色がいい。傘も下卑た張り出し方をしていないし、全体がとても綺麗なピンク色をしているのだ。勃起しても源田のもののように、赤黒くグロテスクな色になったりしない。まるで上品なバイブレーターのようだ。
 アフロディには黄色人種以外の血が入っていると聞いたことがある。日本人にはあらざる綺麗な性器の色は、遺伝的な色素の薄さに因るのだろうと源田は思っている。

「ン…いいよ源田くん…君のお口は最高だね…」
 男の物を口に含む行為に抵抗はあったが、生々しさの少ないアフロディの性器なら、源田は難なくくわえることができた。
 普段アフロディにされるフェラチオを思い出して、あれほどの技術を源田は持っていないが、そのやり方を真似して奉仕する。
「…ん…あ……はぁ…っ」
 亀頭から陰嚢までの性感帯を余さず舐めたり吸ったりする内に、アフロディの肉棒はどんどん濃いピンク色になってくる。アフロディが興奮してくれているのがわかって源田は安心した。充血して震える肉棒を深く飲み込み、張り詰めた砲身を口腔全体で締め付けてやる。口内の性器がぴくぴくと跳ねて、まもなく精液が弾ける予感がした。
 源田が飲み込んでやろうと思った矢先に、口から性器が引き抜かれる。不思議に思う源田にアフロディが命じる。
「源田くん、目を瞑って…」
 アフロディに言われて、源田が瞼を閉じたその瞬間――顔面に生暖かい飛沫が弾け飛んだ。


「…アフロディ…?」
 おそるおそる源田が目を開けると、視界が半透明にぼやけている。睫毛の上に何かの雫が乗っていて、そのための不明瞭さだった。
「すまない…メイドさんの格好をしている君を見ていたら、顔射したくなって…」
 照れたようにアフロディに言われて、ようやく自分は顔射されたのだと気づく。顔に滴る液体はアフロディの精液ということか。
 顔射なんてアフロディにもしたことがない。凛々しい面立ちを白濁にまみれにさせたまま源田は呆然とした。ショックというわけではないが、男として大切な何かを奪われてしまった気がする。
「ちゃんときれいにするから許してね…」
 アフロディも床にしゃがみ込み、自らが放った精液を残さず綺麗に舐め取った。真っ赤な舌に残る白濁がなまめかしくて、その色に目が眩んだ源田は、衝動的にアフロディに口付けた。この日最初のキスは精液の苦い味がした。
「ん…はぁ…源田くん…っ」
「アフロディ…いやらしすぎだっ」
 アフロディが放った精の味を味わいながら深く舌を絡め合う。お互いに貪るように唇を求め合って、性的な興奮が高まっていく。このまま雪崩れ込んでしまおうか――と思い始めた矢先に、部室のドアがコンコンと叩かれる音がした。


「誰かいるのか?」
 源田は咄嗟にアフロディを長いスカートの中に押し込んだ。やましいことをしている自覚があったので、その原因たるアフロディを反射的に隠してしまったのだ。
 すぐに開いたドアから顔を出したのは辺見だった。相変わらずのピンク色ミニスカメイド姿である。人のことを言えた義理はないが、何故辺見が文化祭と関係のない部室までやって来たのか、甚だ疑問である。
「源田!こんなところでどうしたんだ?」
 辺見はスカートの中に隠したものには気づいていないようで、一先ず源田はホッとする。
 帝国最後の良心とまで言われている純粋な辺見の手前、それは俺が聞きたいとも、フェラチオしてましたとも言えず、源田は平静を装って出任せの嘘をついた。
「ちょっと気分が悪くなって…少し休めば治ると思うんだが…っ」
 そのとき源田の語尾が震えたのは、スカートの中に匿ったアフロディが、脚を撫でてきたからである。辺見がいるのに何をしていると叱りつけたいが、それはできない状況だ。アフロディはわかってやっている。
「えっ、大丈夫か?」
 辺見の質問に答えるなら、源田は全然大丈夫ではない。アフロディの自重しない手つきはエスカレートして、源田のパンツにまで及んでいる。足元まですっぽりと覆い隠す長いスカートのお陰で、自身が辺見に気づかれないのを良いことに、アフロディは源田に質の悪い悪戯を仕掛けてきた。
 パンツがひと息にずり下ろされて、あまりの屈辱に源田は唇を噛み締めた。
「確かにお前は大人気だったからな…わかった。寺門には俺から適当に言っとくから、元気になってから戻ってこいよ」
 辺見の前だというのにスカートの中では、アフロディが源田の股間を舐め始めていた。辺見の登場で萎えた性器が、卑猥な悪戯に再び反応しだす。
「すまない辺見」
 下半身から生まれる動揺を、表に出さないのが大変だった。雁首や裏筋や会陰部を舐めていたアフロディだが、二つ垂れ下がる陰嚢を殊更熱心に嬲り始めた。
「ここにいるのもみんなにはわからないようにするからゆっくり休め!」
 一つずつすっぽりと口に含んでは、舌の上で転がして柔らかさを楽しんでいる。精液の詰まった袋を揉まれると、精の通り道である尿道がじくじく疼いた。
 直接射精には結びつかない温い快感に苛まれる。辺見の目の前で辺見に隠れて淫猥な仕打ちを受けている自分が、酷い変態のように思えた。こんな戯れは一刻も早く止めさせるべきなのに、源田はアフロディを拒否できない。
「ああ、そうする…」
 辺見の言っている内容も頭に入ってこない。放っておいてくれるならそれが一番良かった。スカートの中では源田はとうとう亀頭を口に含まれて、わかりやすい射精感に下半身が痺れた。そのままずるずると根元までくわえられて、裏筋と雁首といった敏感な場所を中心に、舌で入念に愛撫される。
 アフロディの口淫は相変わらず巧みで、フェラチオの頃から興奮していた源田は、辺見がいるのにも関わらず、あっという間に昇り詰めてしまった。気づかれてはいないものの、知り合いの前で達してしまった事実は源田をひどく辱めた。
「そういえば佐久間がアフロディを探してるんだが、何処にいるか知ってるか?」
 アフロディは今自分のスカートの中にいて、お掃除フェラ中だとは死んでも言えない。
「…いや、俺にはわからない…」
 源田はか細い声で嘘をつくのが精一杯だった。体調不良を心配しているだろう辺見には悪いが、辺見には一刻も早くこの場から立ち去って欲しい、というのが源田の本音である。
 アフロディの奉仕はフェラチオの後戯を通り越して、最早次の前戯になっている。もう一度イかされたら源田は平静でいられそうにない。
「そっか。もし見つけたら連絡してくれ」「わかった」
 源田の悲痛な願いが通じたのか、辺見は返事に納得して踵を返してくれた。


「バレなかったね」
 ふくよかに膨らんだスカートの中から愉しげな声が聞こえる。ただならぬ緊張を強いられたというのに、呑気な様子のアフロディに源田は腹が立った。悪戯も度が過ぎれば拷問である。
「アフロディ!お前のお陰で生きた心地がしなかったぞ!」
「スリルがあるのもいいじゃないか」
 たわわな布から這い出たアフロディは、飲み残した白濁をこれみよがしに舐め取った。
「僕のより濃いね…喉に絡み付いてくる」
「……どこまでするつもりなんだ、アフロディ」
 問われたアフロディはにっこりと源田に笑いかけて答えた。
「もちろん、最後までさ」


 ここまで来るともう源田も自棄になっていた。座わって致すと黒いスカートに埃が付いてしまうから、二人とも立った状態で繋がった。下だけ脱いで尻を突き出すアフロディの後孔に、源田は長いスカートをたくし上げて腰を打ちつける。我ながら倒錯的なセックスだと思った。
 源田に悪戯をしながら自身で慣らしたらしいアフロディの後孔は、しわも残らないほど広がって、源田のたくましい剛直を美味しそうに飲み込んでいる。陰毛の茂みが尻の肉で擦れるくらい深く突き刺して、上下左右に激しく揺さぶる。
 アフロディは中壁を肉棒に擦られるのも好きだが、こうやって中をぐちゃぐちゃに掻き回されるのも大好きだ。愛らしい見た目に反して獣の交わりのような荒々しいセックスが好きらしい。
「はぁ…あっ…!んん…あぁ…」
 アフロディはロッカーに縋り付いて、源田に揺さぶられるままに嬌声を漏らしている。今やすっかり受け身に回ったアフロディを抱いていると、源田の加虐癖が顔を出す。源田は身体を密着させてアフロディに耳打ちした。
「ご主人様…気持ちいいですか?」
「っあ!あああっ…!」
 へりくだる口調で具合を聞いた瞬間、肉棒がぎゅっと強く締められた。源田のセリフに感じてしまったものらしい。ちょっとした戯れのつもりだったのに、予想以上に効果があるようだ。少し恥ずかしかったが、アフロディが悦ぶなら使わない手はない。
「ご主人様…」
「うん…ああっ…すごっ、いいよぉ…!」
 メイドにいいように犯されて上下関係もあったものではないが、ご主人様呼びの遊びはアフロディの趣味に合ったらしい。
 普段は強気に源田を責めているアフロディだが、挿入された途端にマゾっ気が溢れ出す。ご主人様と囁きながら貫いて、身体の淫乱さを挙げ連ねると、アフロディは被虐の悦びに全身を染めた。
「おちんぽからいやらしい汁が出てますよ…いやらしいご主人様…」
「ふっ…あっ、ああん!もっと深く…突いて…おしり犯してぇっ」
 アフロディは完全に飛んでしまったようだ。源田はアフロディの望みに応えるために、アフロディの左足を抱え上げた。軸足一本で身体を支える不安定な体位だが、バランス感覚に長けたアフロディはなんなく姿勢を保ってみせる。片足を上げることで股間が開き、更に深い挿送が可能になる。
 指では決して届かない身体の奥を、熱く猛る肉棒にごりごりと擦られて、アフロディの性感は否が応にも高まっていく。そしてアフロディの身体が快楽を得たら得ただけ、締まりの良い肉襞に性器を包まれた源田も、大きな快感を得ることができた。
「あぁっ…んぁ、いっちゃう…メイドさんに犯されていっちゃうよぉ…!んぁあっ…ああ!」
 後ろだけの刺激に昇り詰めたアフロディは、泣いているようなあられもない嬌声を上げて、ロッカーに向かって二度目の精を放った。極めた瞬間の締め付けに源田も唸る。源田はアフロディの腰をがっしりと捕らえると、絶頂の余韻に痙攣する肉の奥に、燃え盛る欲望を叩きつけた。




「あっ…これ誰のロッカーだろう…」
「…辺見のだ…」

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