稲妻11 | ナノ


 後ずさりした背中がロッカーにぶつかり、ガタンと軋んだ音が鳴った。行き止まりまで追い詰められて逃げ場はない。自身を取り囲む不届き者をアフロディはきっと睨み付けた。
「神にこんなことをして、ただで済むと思っているのか!」
 気丈にも張り上げた罵倒を、不届き者のひとり――円堂は鼻で笑い飛ばした。
「人間ごときに負けたお前が神のはずないだろ」
「うるさい!僕は神だ…君たちとは違う特別な存在なんだ」
「はいはい、じゃあ神様でもいいから、大人しく俺たちの言うこと聞けよな。風丸、半田、ちょっと抑えとけ」
「やめろ…!僕に触れるな…!!」
 円堂は連れの二人に指示をして両腕を拘束させると、自由を奪われたアフロディの鳩尾を、スパイクの足で容赦なく蹴り上げた。
「…っ!ぐ…ぅっ…」
「おい円堂、萎えるから顔は蹴るなよ」
「わかってるって」
 軽薄な相槌を適当に打ちながら円堂は次に脇腹を蹴る。細い身体は与えられる衝撃に面白いようにしなった。ごほごほと苦しげに咳き込む仕草に薄笑いこそ浮かべるものの、敗北した神の姿を哀れだとは円堂は微塵も思わない。
 ――陵辱に必要なのは小賢しい計画などでなく、抵抗を黙らせるだけの暴力と尊厳を踏み躙る軽薄さである。
 円堂は今それを実践している。数回に分けて胴体を蹴られたアフロディは、口での抵抗も忘れて力無くうなだれて、華奢な肩を震わせて堪え切れない嗚咽を零し始めた。一方的に与えられる屈辱と苦痛に言葉も出ない。
「…くっ…う…、ふうぅ…っ!」
「ん?泣いたか?」
 これでもアフロディはれっきとした男で、大層な物言いをする厚かましい奴なのだが、長い金髪を垂らしてさめざめと泣かれると、いたいけな少女を甚振っているような微妙な気分になる。
「泣くなよー酷いことしてる気分になるだろ」
 そう言いながら円堂はまたアフロディを軽く蹴る。引きつるような悲鳴が上がった。
「おい円堂、さすがに可哀想だろ」
 円堂の無邪気な加虐に苦言を呈したのは風丸だった。優しい性格の持ち主である上に、円堂に小言を言うのはいつも風丸の役目だ。
「だってコイツぐずぐずうるせーんだもん」
「それにしたって、やり方がな…」
 円堂は風丸と付き合っているので、恋人にこうも非難されると立場がない。風丸に嫌われたくない円堂は大人しく掲げていた足を下ろした。
「…わかったよ、おいアフロディ」
 うなだれるアフロディの前に円堂はしゃがみ込み、無造作に前髪を掴み顔を上げさせた。アフロディは純粋な暴力に慣れていないのだろう。涙に濡れた瞳に抵抗の意志は見られず、少女のような端整な顔は暴行への恐怖に歪んで怯えている。
 円堂が頬に手を伸ばすとアフロディはびくりと大袈裟に震えて萎縮した。顔は傷つけないと言ってあるのにこの反応とは、円堂が余程恐ろしいことの現れだった。
 円堂には加虐癖がある。怯える表情を可愛いと思う。だから恐怖に慄くアフロディの姿はとても可愛らしかった。自分たちにされるがままになるしかない、可愛くて可哀想な生け贄だ。
「ははっ、すべすべだ…」
 ユニフォームの中に入ってきた手のひらが、腰から背中のラインを緩やかになぞる。与えられた暴力への恐怖が先んじて、訳もわからぬまま目を白黒させていたアフロディだが、スパッツの上から尻の肉を乱暴に掴まれたことで、ようやく我に返ることができた。
 臀部を執拗に揉みしだく行為に、これから我が身に降りかかることを察して、アフロディは身を強張らせた。先程よりもずっと強い恐怖の予感に身体の震えが止まらない。
「あ…や、やだ…やめ…いや…っ」
「やだじゃねーよ、じっとしてろ」
「それだけはいやだ…やっ…こわい…やだ…ひぃっ…」
 歯の根も合わない様子で拒絶を連ねるアフロディに、余程の事情があるとは知れたが、円堂たちにとってはこれだけが目的なのだから、はいそうですかとやめるわけにもいかない。
 そこで円堂はアフロディにこう提案した。
「じゃあこうしよう。これは夢なんだ」
「…夢?」
「そうだ…サッカーで人間に負けたのも、こうやって俺たちに襲われてるのも、全部夢なんだ」
 円堂は幼子を諭すようにアフロディに語り掛ける。風丸と半田は呆れていたが、円堂を見つめるアフロディの表情には光が戻りつつあった。
「…本当かい?」
「ああ、本当さ!」
 円堂に断言されると不思議なもので、本当に夢の中にいるような気になってくる。アフロディは泣き顔を綻ばせて、ほっと息をついた。
「そうか、夢なのか」
「夢だから何をしたって怖くないだろ?」
「うん、そうだね…夢だものね」
 敗北の屈辱と陵辱の恐怖から逃避したい心理も働いて、アフロディは円堂に頷いていた。


「ん…ふむぅ…んぅ…っ」
 三人に囲まれて膝立ちになったアフロディが、突き付けられる三本の性器の愛撫に没頭している。円堂と風丸のものを両手でそれぞれ扱きながら、半田のものを口にくわえて夢中になって舐める。同い年の男とは思えない巧みな手管に、アフロディの口淫を受ける半田が思わず呻いた。
「なんだコイツ…すげー上手い…」
「どうせ影山の肉人形だったんだろ?ちゃんと仕込まれてんだよ」
 円堂が小さな頭を撫でてやると、アフロディは嬉しそうに目を細めた。優しく甘やかされるのが好きらしい。言うことさえちゃんと聞けば可愛がってやる、と予めアフロディには告げてある。
 だからアフロディは円堂たちの命令に極めて従順だった。その上技術と容姿が優れているのだから文句はない。
「はぁ…っ、マジでオッサンには勿体ないって…」
「だからつまみ食いしようって言ったんじゃないか」
「でもこれはさ…やばいって…」
 男だし性格はとんでもない奴だと知っているが、しかし顔は今までに見たどんな女の子よりも整っていて愛らしい。そんなアフロディが三本の欲望を同時に処理しているのである。興奮せずにはいられないシチュエーションだった。
 白い指が肉棒に絡んで扱き上げ、小さな口いっぱいに勃起を頬張り奉仕している。アフロディの手や口元は先走りですっかり汚れていたが、それを厭う素振りもなくアフロディは反り立つ肉棒に尽くしている。壮絶としか言いようのない卑猥すぎる光景に、視覚からも大いに煽られて、三人の性感は高まっていく。
「…俺、先にイく…」
 まず音を上げたのは半田だった。まるでアフロディの口腔を使って自慰をするように、前髪を掴んで頭を自分勝手に動かした。アフロディはされるがままに揺さぶられていたが、絶頂を迎えた半田が口内に射精すると、零すまいと肉に強く吸い付いた。
「ん…んう…ふぅっ…」
 アフロディの口から萎えた性器を引き抜くと、唾液と精液が混ざったものが口の端から零れ落ちた。舌の上にも白濁がべっとり張り付いている。アフロディの媚態に煽られた円堂と風丸は、その手ごと自らの性器を扱きあげて、アフロディの顔面へ向けて次々に射精した。
「やっ…あぁ…あ…!」
 二人分の精液は顔だけでなくアフロディの髪の毛やユニフォームにも飛び散った。花のかんばせが男の欲望に無残にも汚される。
「うわ…エロい顔…」
 三人分の白濁に塗れた顔は最早美しくも何ともなかったが、壮絶な色気を放って三人を誘惑していた。

 顔面に出した精液をすべて綺麗に舐め取らせてから、円堂はアフロディを仰向けに床に寝かせた。上のユニフォームはそのままに、ズボンとスパッツを纏めて剥ぎ取ってしまう。露わになったアフロディの性器は完全に立ち上がっていて、先走りの汁を先端に滲ませていた。濡れた鈴口を指先で突っつきながら、円堂はアフロディを問いただす。
「フェラして顔射されて勃ったのか?本当に淫乱な神様だな」
「やっ…そんな…いんらんだなんてぇ…っ!」
 肉体の淫らさを言葉でなじられただけで、震える鈴口から雫がぽろぽろ零れ落ちた。揶揄われて興奮できるのだから、大した被虐癖だと思う。円堂は己の性欲が煽られるのを感じた。
「こっちも物欲しそうにひくひくしてるぞ」
「ひゃあんっ!」
 谷間に隠れた桃色の窄まりへ、円堂は指を一本挿入する。慣らしてもいないアフロディの後孔は、無遠慮な異物をあっさりと受け入れた。清純そうなきれいな色に反して随分と使い込まれているようだ。
「あっ、はぁん…あ…ぁん…っ」
 持参したローションを穴に垂らしてぐちゃぐちゃと適当に広げてやると、そこはあっという間に柔らかくとろけてしまった。虚を塞いでくれる肉を探して、入り口が指をきゅうきゅうと卑しく締め付ける。
 滅多にない名器の予感に円堂の下半身は強烈に疼いたが、挿れたい衝動を我慢した。その代わり円堂は先ほどから、アフロディの痴態に釘付けになっている風丸に視線を送り、こう提案した。
「風丸、お前童貞だろ?折角だからコイツで捨てたらどうだ」
「…え、円堂…っ!」
 円堂のあけすけな物言いに風丸は赤面したが、その性器は言い訳できないほど愚直に立ち上がり興奮している。円堂に後孔を慣らされるアフロディに普段の自分を重ね合わせて、すっかり高ぶってしまったのだ。
「アフロディにもちんこ付いてるけどさ、顔は女より可愛いし…ここも柔らかいぜ」
 円堂の指が弄くる濡れた蕾を凝視して、風丸は小さく喉を鳴らした。全身の色素が薄いアフロディはそこも綺麗な薄桃色をしていた。初めて見る他人の肛門に嫌悪は感じず、むしろいやらしい場所だと思って興奮した。

 ――いつも円堂に抱かれている風丸には、人に挿入した経験がない。この先円堂が受け身に回る日が来るとは考えにくいし、円堂の目を盗んで女の子と浮気する勇気もない。
 円堂と付き合う限り自分は童貞だろう…と、半ば諦めていた矢先に訪れた挿入の機会である。独占欲の強い円堂が許しているのだ。相手が敵だろうと男だろうと、風丸が童貞から抜け出せる最後のチャンスに違いなかった。

「なぁアフロディ、風丸のちんこ欲しいよな?」
 濡れそぼつ後孔に三本の指を出し入れしながら、円堂がアフロディに尋ねる。後ろへ与えられる刺激に蕩けた目でアフロディはこくんと頷いた。
「…ん、うん…欲しい…」
「じゃあ風丸にお願いしないとな」
 円堂はアフロディの顔を無造作に掴むと風丸の方へ向けさせた。少女のような美しい容貌に熱い視線で見つめられて、風丸は少年らしく赤面した。
「…風丸くん…」
 アフロディはしどけなく脚を開いて、自ら後孔に細い指を這わせた。窄まりの縁に指を引っ掛けて熟れた内部を広げてみせる。少しだけ開いた口からは濃い桃色の粘膜が窺えて、もの欲しげに震える肉の卑猥さに、三人がそれぞれ息を飲んだ。
「風丸くんのおちんぽ…照美の中に入れてください…」
 その上いやらしく挿入を強請られて、風丸の理性は呆気なく焼き切れた。アフロディに両脚が身体にくっつくような姿勢を取らせると、男を欲しがる淫らな穴へいきり立つ欲望を突き入れた。






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