俺が生まれた国は日本だけれど、母国といったらアメリカだなと思う。アメリカで過ごした時間の方がずっと長いし、多分将来はアメリカに住むんじゃないかなと思う。
俺の最愛の恋人は生粋のアメリカ人だ。英語しか話せなくてアメリカの食べ物しか知らない愛らしい人だ。今回の件で俺は痛感したのだが、こんな可愛い恋人を置いて何処かに行くなんて、多分もう二度とできない。
数ヶ月ぶりに降り立ったアメリカの空は日本より広々として高い気がする。見上げた空が青いのは夏が近づいている証拠でもあった。
「久しぶりだなーこの空気!」
フットボールフロンティアインターナショナルにアメリカ代表として参加するため、俺と土門はアメリカに帰ってきたのだ。
イナズマイレブンの一員として過ごした日々は、俺のサッカーを大きく成長させてくれたけれど、フェニックスが羽根を落ち着かせる場所は雷門ではなかった。
アメリカこそが俺のホームグラウンドであり、復活の晴れ舞台に相応しい。慣れ親しんだこの土地で、俺の翼は再び大空へ羽ばたくことだろう。
「カズヤ!ドモン!」
そんな帰郷の感慨に耽る間もなく、よく通る明朗な声が俺たちの帰国を出迎えた。
そこに居れば誰もが振り返らずにはいられないような美少年――マーク・クルーガーがこちらに向かって、全速力で走ってくるところだった。
マークはしばらく見ない内にますます美形に磨きが掛かった気がする。あの満面の笑みの前には、どんなに美しく咲いた大輪の花であっても、恥じらって自ら花を落とすことだろう。
「カズヤ…カズヤッ!」
そして俺に対する大好きぶりも激しくなった。俺と一緒に日本から帰ってきた土門も、付き添いで来てくれたのであろうディランも、今や全く目に入らないマークは真っ先に俺に抱きついた。
「…カズヤ!会いたかった!」
マークの渾身のハグを全身で受け止めた俺は、マークをしっかりと抱いたまま、ドラマのワンシーンみたいにくるくるその場で回転する。こうするとマークは喜ぶから、ちょっとしたサービスだ。
俺の腕の中でマークは子供みたいにはしゃいで無邪気に笑っている。見た目は更にキレイになったけれど、マークを構成する根元の部分は何も変わらない。
「相変わらずお熱いね、お二人さん!」
「まったく…ちょっとは自重しろよな…」
慣れっこのディランにはやし立てられて、常識人の土門に呆れられて、いつものスキンシップを交わした後で辺りを見回すと、他の客はみんなマークと俺の抱擁を見ていた。
そのことに気づいたマークの白皙の容貌にさっと赤みが差す。周りの様子が認識できた途端に、抱き上げられている体勢が恥ずかしくなったようだ。
「カズヤ、下ろして?」
俺としてはもっと見せつけたい気持ちがあったが、あんまりにもマークが恥じらうので下ろしてあげた。
マークの瞳はエメラルドを嵌め込んだような色彩と輝きをたたえている。日本では決して見られない澄んだ宝石の如き美しさを見つめて、俺はアメリカに帰ってきたことを本当に実感した。
「…マーク、ただいま」
「うん…おかえりカズヤ」
実際に過ごした時間以上に長い期間離れていたように思う。会えなかった時間と寂しさを埋め合わせるように、俺はマークを力いっぱい抱き締めた。
家族が日本へ引っ越してしまっている土門は、代表合宿が始まるまでは、ディランの家にお世話になるらしい。
「ミーはドモンと帰るけど…カズヤたちはどうするんだい?」
「一応家に帰るよ…父さんも母さんもいないけどね」
一方の俺は両親もアメリカ在住なわけだが、肝心の自宅には今は誰もいなかったりする。
「息子が帰ってくるっていうのに二人ともいないんだぜ…まぁ、仕事だから仕方ないけど」
放任主義の俺の両親は今日も父母共に仕事だという。事故の際には心底心配して支えてくれたし、決して悪い親ではないのだが、俺の怪我が完治するや否や夫婦揃って元のようにバリバリ働き出した。多分そういう生き方なのだろう。
この年ともなれば別段に親が恋しいわけでもないけれど、久しぶりの我が家だというのに、誰もいない空間にに一人で帰るのは流石に寂しい。帰るからには誰かに出迎えてもらいたいし、一緒にのんびり寛ぎたい。
「…カズヤ…っ」
「ん、何?マーク」
俺の袖を引いたマークは何か言いたそうにしている。もどかしげに震える唇の言わんとすることはすぐに俺に伝わった。なかなか自分からは言い出せないマークに俺は助け船を出す。
「それよりも腹減ったな…久しぶりにマークの作ったハンバーガーが食べたい」
うちに来て作ってくれよと言外にねだれば、マークはすぐに満面の笑みで頷いてくれた。マークの優しさに救われているのはいつも俺の方だ。
マークが作ったハンバーガーを三つも食べた。ハンバーグから手作りするそれはジューシーで絶品なのだが、流石に三つは多くて腹がいっぱいで苦しい。でもたくさん食べるとマークが喜ぶから、つい食べすぎてしまうのだった。
「うーん…お腹苦しい…」
「いっぱい食べたからね」
食べてすぐに行儀が悪いと思ったけれど、リビングのソファに横になる。エプロンをして俺の家の台所に立つマークは奥さんみたいだ。キュッとした細い腰と小ぶりで形のいいヒップがたまらなくキュートだ。
洗い物を終えてソファに腰掛けたマークの太ももに頭を預ける。ジーンズなのが残念だが、程よく発達した太ももの寝心地は快適だった。マークが頭を撫でてくれるのも、子供扱いされてるみたいだけど気持ちいい。頼めば子守歌も歌ってくれる。
マークはすごくいい奴だ。とんでもないレベルのイケメンなのに、性格に全く気負ったところがない。サッカーのこととなると凛々しくて男らしいが、プライベート殊に恋愛のことになると、今どき珍しいほどウブで純真だ。
この顔で微笑んでちょっと優しくしてやれば、マークに靡かない女の子なんて多分いない。選り取り見取りというやつだ。それなのにマークは俺が好きだと告白した。数多の女の子たちとの甘くて楽しい未来を切り捨てて、俺しかいないのだと迫ってきた。
俺になら何をされても構わないと言って、全てを差し出した馬鹿なマーク。その愚かしい盲目さが愛しくならないはずがない。日本にいる間もずっと恋しかった。マークの元へようやく帰ってきた。
「マーク…」
「なに?カズヤ…」
腰に縋りついて甘えるついでに、俺はマークの小さな尻を揉みしだいた。マークは驚いたようだけれど構わない。肉付きの薄い尻をぎゅうぎゅうと鷲掴みにする。
俺はジーンズの布越しに、尻の谷間に指を這わせた。その行為の意味するところにマークの顔色がさっと変わる。
「や…カズヤ…」
戸惑いの声を上げるマークが、求められるのに満更でもないことを俺は知っている。
「俺がいない間、誰かに入れさせたりした?」
「しっ…しない!どうしてそんなことを言うんだ?オレにはカズヤだけだ…」
知っている。マークは俺にベタ惚れだから俺以外の奴に身体を許したりはしない。わざといじわるな質問をしたのは、真っ昼間からマークとセックスする建て前が欲しかったからだ。
マークは必死になって言い訳を続けている。俺に不貞を疑われるのはマークにとって余程辛いことらしい。緑碧の瞳にはうっすらと涙すら浮かんでいる。かわいそうでかわいらしい。
マークを見ていると虐めたくなる。早くも俺は我慢できなくなった。膝枕の上で仰向けになり涙目のマークを見つめる。
「マークが可愛いから心配なんだよ。ねぇ、本当かどうか確かめてもいい?」
顔を真っ赤にしたマークは素直に頷いた。
全裸にしたマークにM字開脚の格好を取らせて、隠すもののない股間をまじまじと眺める。マークは顔を枕に押し付けて、秘部を凝視される羞恥に耐えていた。
久しぶりに見るマークのそこは相変わらず色素が薄くてキレイな色をしている。前より陰毛が増えたかも知れない。髪の毛と同じブロンドの毛が性器の根元に豊かに茂っている。
パイパンの頃からマークを抱いていた俺にとっては、成長を見守っているようで感慨深いものがある。
「俺がいない間、ひとりでした?」
「…っ…」
「俺はしたよ…マークのこと考えながら毎晩オナニーしてたよ」
自慰を告白するのは恥ずかしいが、きっと俺のオカズにされていたと知ったマークの方がきっと恥ずかしい。
俺の妄想の中のマークはとびきりエロくて色っぽかったが、現実の恥じらうマークの愛らしさとは比べものにならない。
やっぱり本物の方がいいなと思っていると、おそるおそるマークが話し出した。
「オ、オレも…」
「マークも?」
「カズヤのことを考えて、一人でシてた…」
俺がオカズにされたことよりも、俺をオカズに自慰するマークがいたことに興奮した。マークみたいな奴でもオナニーするのか。男ならば当然の行為なのにマークがするとなると新鮮だった。
「触ったのはこっちだけ?後ろは使わなかった?」
「ううん、使った…ぁ…」
「指じゃ物足りなかったでしょ?」
「……」
そこでは肯定の返事を期待していたのに、マークは目を逸らして黙ってしまった。気まずそうに口を引き結ぶその表情に、俺はマークの弱みを見つける。
「…なに使ったの?俺に教えて?」
人差し指の腹でアナルを撫でながら尋ねると、マークは顔を真っ赤にしながらか細い声で答えた。
「…に、ニンジン…」
「ニンジン?」
「…家にあったから…」
まさかニンジンとは予想もしなかった。てっきりマーカー程度だと思っていたのに、野菜で遊ぶなんて…。マークの行動はときに俺の想像の遥か上を行く。
「カズヤ?オレのこと嫌いになった?」
「ならないよ。ちょっとビックリしただけさ…意外とマークはエッチなんだね」
泣きそうなほど不安がるマークの頭を撫でて落ち着かせる。どんなことをしたって俺がマークを嫌いになるわけがない。むしろ、ニンジンで後ろの疼きを慰めるマークの姿に興味が湧いた。
「どんな風にシたのか教えてよ」
「ニンジンにスキンを被せて…よく舐めて…」
「うん」
「アナルもよく解してから、挿入したんだ」
俺のを挿れるときと全く同じ手順だった。ニンジンを俺の性器に見立てていたとしたら、マークには言わないけれど妙な気分になる。
「…使用済みのニンジンはどうしたの」
「ラビちゃんにあげた」
ラビちゃんはマークの隣の家で飼われている白いウサギだ。動物に食わせて証拠隠滅するなんて、マークには完全犯罪の才能があるかも知れない。
「マークは最高にかわいいなぁ…」
マークから野菜オナニーの告白を聞いていた俺はすっかり興奮してしまった。今度マークに許可をもらって色々なものを入れてみよう。ナスとかキュウリとか、アメリカにあるかわからないけどヤマイモとか。
ゴーヤはちょっと太すぎるけど、一回ヤった後に更に拡張すれば入るかも。あの緑のイボイボに穴を擦られて身悶えるマークを想像するだけで、俺の下半身は爆発しそうになる。
「ねぇ、ニンジンで満足できた?」
「全然できない…カズヤじゃないと気持ちよくなれない…」
マークは必死で首を横に振って、健気にも言い訳を繰り返す。しなやかな腕が縋るように俺の首に絡まった。マークの表情に余裕はない。
「カズヤが欲しいよ…」
エメラルド色の瞳は情欲への期待にとろけ切っている。こうなったマークは為すがままで、俺の言うどんなことも素直に聞き入れてくれる。
「じゃあ、おねだりしてよ。おねだりの仕方は忘れてないよね?」
我ながら意地が悪いと思う。しかし俺はマークの可愛らしい唇から、下品でいやらしい言葉を吐かせたくて仕方がないのだ。
「か…カズヤの熱い勃起ちんぽを…俺のエッチなアナルにぶち込んでください…」
「よくできました」
りんごみたいに真っ赤に染まる頬に、ご褒美のキスを一つ落とす。俺はガチガチに膨張した欲望にスキンを被せると、マークに覆い被さってひと息に貫いた。
「っあ、あぁあ!アっ…カズヤぁっ…ふああぁ!」
マークの中は熱くて狭くて、まるで処女みたいにきつかった。俺以外の誰かに抱かれていたらこうはならない。マークの貞操の固さを確認できて俺は嬉しい気持ちになった。
「あはっ、きっつい…ちゃんと操立てしててくれたんだ、嬉しいな…」
「だってオレには、カズヤだけだ…んああ…っ」
長い脚を抱え上げて腰を打ちつける。きくて頑なだったマークのそこも、抜き差しを繰り返す内に俺の形を思い出して力が抜けてくる。
腰を揺すりながら白い胸に色づく可愛い突起をキュッとつまむとマークの声色が艶やかに変わった。
「やぁ、らめっ!おっぱいいじっちゃらめ…」
「でも、マークは乳首好きだろ?」
「うん、すきぃ…でも、いっしょにさわるとすぐイっちゃうからぁ…ああ、あっ!」
好きだと言われてやめられるはずがない。凝る突起ををぐりぐり弄ってやると、俺のをずっぽりくわえたまま、マークは乳首で達してしまった。相変わらずの感度だ。マークの性器は精にまみれながらも立ち上がったままでいる。
「イっちゃったな」
「ごめんカズヤ…」
「謝んなくていいよ。一回出してくれた方が、俺も長く楽しめるし…」
「んっ、あ!あ…カズヤまって…」
「ごめん待てない…」
極めた瞬間の堪らない締め付けに恍惚とさせられたばかりなのだ。幾らマークのお願いでも我慢なんてできるわけがない。
性器が抜ける寸前まで腰を引いて、再び根元まで一気に押し込む。こうすると竿全体が刺激できて本当に気持ちいい。
「あぁ!んっ…あぁーっ!」
肉壁を深く擦られる快感にマークが仰け反った。無防備な白い首筋に顔を埋めて、そこから香る甘い匂いを嗅ぎながら容赦なく責め立てた。一度達した身体は熱っぽく俺を迎え入れて、マーク本人の純情さからは考えられないほど貪欲に肉棒を食い締める。
「マーク…気持ちいいよ、マーク…」
「ふぁあっ!カズヤ!カズヤぁっ!」
理性の欠片も残っていないマークの表情はだらしなく乱れていて、それでいて強烈に俺の劣情を煽った。閉じ切れない唇の端から垂れた唾液を舌で舐め取り、睫毛を濡らす涙の雫も拭ってあげる。
呼吸困難になってしまうのではないかと思うくらい、マークの息遣いは浅くて早い。肉筒が小刻みに痙攣しているのは二度目の絶頂が近い兆しだろう。俺もそろそろ限界だった。
「俺もイくから、マークもイこうな」
「うん…カズヤぁ…ああっ、んあ…っ」
「愛してるよマーク…っ」
もう二度と離れないと胸に誓って、射精に伴って蠢動するマークの中で俺は絶頂を迎えた。
これからはずっと一緒にいような。