稲妻11 | ナノ


 源田の身体に跨ったアフロディは、制服のズボンと下着を纏めて脱ぎ捨てた。露わになる白い下肢に目を奪われる源田は、そこに光る妙なものを見つけた。
「…おまえ…それっ…」
「気づいた?でもこんなのじゃ全然物足りなくって…」
 アフロディの後孔には銀色の細身のディルドーが刺さっていた。まさか学校にいる間中、ずっと体内に入れていたというのか。信じられないと言葉を失う源田にアフロディは憚るどころか、見せつけるようにディルドーを数回出し入れした。源田によく見えるように腰を突き出して、目の前で一人玩具遊びを行う。
 ぐちょぐちょと卑猥な音を立てる蕾と、そこに出入りする男性器を模造した玩具の鈍い光。肉欲に塗れた汚らわしい光景だと思うのに、アフロディの淫らな児戯から源田は目を離せない。

 後孔を十分に解したアフロディはディルドーを抜き去り、体液に濡れて光るそれを役立たずと言わんばかりに床へ転がした。
「あれはもう要らない…君がいるから」
 後ろ手に触れた源田の若い雄は、既にあからさまな反応を見せている。アフロディの卑猥な一人遊びを見せられて不本意にも興奮してしまったのだ。
 素直な反応に気を良くしたアフロディは、手のひらに持て余すような大きさのそれを、巧みに扱いて完全に勃たせてしまった。

 そそり立つ陰茎に粘度の高いローションをたっぷり塗りつける。その十分すぎるほどの硬度と形状を持った雄の上へ、アフロディはゆっくりと腰を下ろしていった。
「んっ、あ、ふぁあっ…!あっ…おっきい…」
 ディルドーにより慣らされ広げられた秘肉の入り口は、たくましい剛直をあっさり飲み込んだ。玩具よりもずっと太くて熱い肉塊が体内の虚を埋めていく甘美な感覚に、アフロディは恍惚の溜め息をつき歓喜の声を上げる。作り物とは比べ物にならない圧倒的な質量が、飢えた腹の中を熱く満たしている。アフロディは更なる快楽を欲して自然と腰を揺らしていた。
「あっ、あん…げんらく…ん…っ!あっ、いいよぉ…はぁあんっ…」
 源田の太股に手を置いて、身体を仰け反らせて大胆に腰を振る。ローションに濡れる結合部と先走りにまみれて揺れる性器が、源田の位置からは丸見えになっているはずだった。
 ストリップでもする気分で肉棒を激しく出し入れする度に、二人分の体重と衝撃を受け止めるベッドが嫌な音を立てた。ぎしぎしと軋むスプリングの強度も気にならないほど、アフロディはセックスに夢中になっていく。屈辱と快楽に塗れた源田の表情は、今までに見てきたどの人間よりも憐れで美しく、アフロディの加虐心を満足させた。

 前屈みになり、汗に濡れる頬を両手で包む。下腹部に力を込めて銜えた性器を強く絞り上げると、源田の顔が情けなく歪んだ。
「気持ちいい?僕のお尻、気持ちいい?」
「ぅあ…はぁ…!くっ、あ、あっ…」
「あはっ!話せないくらいきもちいいんだ…」
 もっと気持ちよくしてあげる。アフロディは猛りを後孔ぎりぎりまで引き抜いてから、自らの重みで一気に内壁を貫かせた。引き抜くときは力を入れてキツく締め付けて、押し込むときは力を抜いて性器を柔らかく包み込む。持てる限りの技巧を駆使してアフロディは源田を責め立てた。
 アフロディの中は溶けるように熱く濡れており、絶妙な力で襞がうごめき堪らない快感を生み出す筒になっている。アナルにも名器はあるのだと思わせる淫らな穴に、容赦なく徹底的に絞られて、意識が飛ぶのではないかと恐ろしくなるほど源田は感じてしまった。
「く、はぁ、あ…くうっ…う…」
「ふふっ、ぼくもきもちいいよ…二人でよくなろうね…」
 源田の肉棒を容赦なく扱き上げながら、アフロディは自分の勘所も突いていく。たくましく張り出した雁首で前立腺をごりごりと擦ると、腰も砕けんばかりの悦びが全身を駆け抜ける。
 やはり源田の身体は最高だった。こんなにも強く確かに自分を高めさせてくれる男は他にいない。源田を手玉に取っているようで、本当に溺れて依存しているのはアフロディの方だった。拘束して繋ぎ留めて誰にも知らせずに監禁して、強姦まがいの性交を源田に求めてやまないくらいに。
「くっ…アフロディ…!あぁ…もうっ、イく…!」
「いいよ、せーえきちょうだいっ…ぼくの中にだして…いっぱいだしてぇ!」
 切羽詰まった告白に応えるようにアフロディも絶叫した。奥深くまで欲望を飲み込んで、一滴も逃さないと食い締める。
「うっ…ぐ…あっ、はああっ…」
「あっ、んああっ…!」
 体内に強く注がれるの絶頂の熱に感極まって、アフロディも源田の腹筋の上に、大量の白濁を吐き出した。


「ん…はぁ…あン…」
 全身の筋肉が弛緩する。糸が切れた人形のようにアフロディは源田の身体に倒れ込んだ。汗ばんだ肌同士が重なり合う湿った感触が、事後の戯れとしては心地よい。
 アフロディは乱れた呼吸を整えながら、源田を受け入れたままの結合部に指を這わせた。溢れ出るぬるぬるとした手触りに安堵して、場違いなほど無邪気な笑顔をアフロディは浮かべた。
「中出し…こんなに嬉しい…」
 指に付着した白濁を源田の目の前で舐めてみせる。何処かが壊れているとしか思えないアフロディの浅ましい仕草に、源田は精悍な眉をしかめた。

 ――数日前に此処へ連れて来られてから、幾度昼夜が巡ったのかもわからない。時間さえあればアフロディと動物のように浅ましく交わっていた。舐められ扱かれ挿れられる。手足の自由や時には視界すら奪われて、一方的に与えられた快楽は性交ではなく暴力に等しい。人間の尊厳すら踏みにじられて徐々に堕落していく日々を過ごし、訳も分からず搾取され続けた源田の精神は、最早保ち難い段階まで疲弊し切っていた。

「…お前は何で…こんなことをするんだ」
 連日の陵辱に嗄れた声で、ずっと知りたかったことを尋ねる。アフロディの答えは軽易なものだった。
「君が好きだから」
 好きなのに振り向いてくれないから閉じ込めた。猛獣の牙を折って縛り付けて自分だけのものにした。源田を見るのも触れるのも自分だけでいい。自分が源田に焦がれて狂ったように、源田も自分だけに支配されて生きていけばいいのだ。
 聞き分けの悪い子供のような論理でそう説くアフロディを、源田は悲痛な思いで叱りつけた。
「お前は馬鹿だ。大馬鹿だ」
「それは、知ってる…でも君が欲しいから」
「違う、どうして気付かないんだ…こんなことをしても、お前の欲しいものは手に入らない…求め方を間違っているから」
「だって僕はこれしか知らないんだもの」
 アフロディにとって愛情とは、不特定多数から無条件に与えられる空気のようなものであり、また或いは、肉体の奉仕と引き換えに自力で勝ち取る労働報酬だった。
 それ以外の愛情の求め方なんて誰も教えてくれなかった。打てども響かない源田にはこの手段しかなかったのだと。ぽつぽつと語る深紅の瞳には涙すら浮かんでいる。

「君が好きなんだ。愛してる、愛したい、愛されたい…源田くんはどうしたら僕を好きになってくれる?」
「…馬鹿だな…」
 源田はもう一度、アフロディを叱った。不器用で一生懸命な子供に向けるような、呆れと愛しさを孕んだ声だった。
 アフロディの問いに対する答えはもう見つかっているけれど、如何せん両手を括られたこの体勢では何もできない。
「…まずはいい加減、手を解いてくれないか。皮膚が擦れて痛いんだ…」
 おそらく傷になって血が出ている。どんな複雑な縛り方をしたのか知れないが、暴れたら暴れるほど手首に縄が食い込んでかなわない。
「いいけど、何をするつもりだい?」
 逃げられたり抵抗されたらと困る、と言いたげにアフロディが源田に聞き返す。手管ばかり達者になって、その実ただの愚かな子供に源田は微笑んだ。

「ひとまずお前を抱き締めたい」











 差分BADエンド↓


 それ以外の愛情の求め方なんて誰も教えてくれなかった。打てども響かない源田にはこの手段しかなかったのだと。偏った認識を疑いもせずに語る深紅の瞳には正論などもう映っていない。
「君が好きなんだ。愛してる、愛したい、愛されたい…源田くんはどうしたら僕を好きになってくれる?」
 アフロディは源田の唇に口づけて、再び腰を揺すり始めた。中に出された白濁を更に敏感になった内壁に塗り込めるように動く。二人の結合部は先ほどよりも酷い有り様で、ぐちゃぐちゃという下品な水音が源田の精神を耳から侵していく。とろけた声でアフロディが恍惚の悦びに鳴いた。白い肢体がゆらゆらと揺れて、肉の快楽を貪欲に貪っている。
「ね、教えてよ…げんだくん…ぼくを、好きになって、あ、あぁん…っ」
「…っ…」
 アフロディは狂っていると源田は思った。自身の上で踊るように蠢く美しい生き物が怖かった。それでももうどうすることもできない。自由を奪われて捕らわれた源田には、抵抗や救済の道は残されていないのだ。
「…わからないなら、好きになってくれるまで、一緒にいようね…」
 アフロディの持ち掛ける甘やかな誘惑に源田が頷いてしまうのも、あとは時間の問題なのかも知れない。

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