稲妻11 | ナノ


※小スカ要素注意




 ここ数日、アフロディが携帯依存症気味だ。まず気が付いたのはチームメイトでもクラスメイトでもあるデメテルだった。
 授業中に携帯を頻繁に盗み見ている。部室に帰ってきたらすぐに携帯をチェックする。これまではそんなことはなかったのに、その他目に付く色々な場面で、アフロディは携帯電話を気に掛けていた。
 その上放課後や部活後は、誰よりも早く支度を終わらせ一人そそくさと帰ってしまう。以前はもう少し付き合いが良かったのに。こうなるとアフロディのそういった変化を勘ぐらずにはいられない。

 昼休み、やはり携帯の画面を熱心に見つめているアフロディに、デメテルは話しかけた。
「最近やたら携帯を見ているな。…恋人でもできたのか?」
「ううん、ペットを飼い始めたんだ。今は外にいても携帯で様子が確かめられるんだよ、デメテルも見るかい?」
「い、いい!見せるな!携帯しまえ!」
 恋人ができたものだと思い込んでいたデメテルは、アフロディが見ていたものが、まさかペットだとは思っておらず動揺した。デメテルは犬や猫を始めとするペット全般が大の苦手だった。写真でも鳥肌が立つほど生き物が嫌いだ。
 騒ぎを聞きつけたヘルメスが寄ってきてアフロディに質問する。
「犬か何かか?」
「犬…といえば犬かな」
「でかいのか?」
「うん、とても大きいよ。毛並みもふさふさでね…」
「オレの前でペットの話をするなぁあぁっ」
 とうとうデメテルが怒り出して、その場は解散となった。丁度昼休みも終わる時間だ。二人は自分の席へ帰っていく。
「可愛いのに、残念だなぁ…」
 ざわめく教室に響く予鈴の音を聞きながら、アフロディは閉じた携帯を握り締めた。



「ただいま、いい子にしてたかい?」
 チェーンとロックを後ろ手にかけながら、薄暗い家の中に尋ねるが返事はない。アフロディは革靴を脱ぎ捨てて、玄関から一続きの自室に向かった。遮光カーテンで締め切られた暗闇の中に、くぐもった息遣いが微かに聞こえる。
「ケーキ買ってきたんだよ。甘いものも好きだったよね」
「…っく、ふ…ぅう…」
「ああ、そうか…そのままじゃ話せないね」
 ケーキの入った箱をテーブルに置き、アフロディは明かりを点けた。朝出てくる前と同じ格好でベッドに横たわる“ペット”の姿に自然と笑みが零れる。

「ただいま、源田くん」

 両手首を縛り上げられた源田は、全裸のままベッドに寝かされていた。タオルを口に噛まされて、あらゆる自由を奪われた状態でそこにいた。
 源田の身体の傍らにアフロディは腰掛けて、登校する前に施した猿轡を外してやった。唾液に湿ったそれを片隅に投げやって、開放された口元にただいまのキスする。
 少し強く縛りすぎたせいで口の周りに痛々しい跡が残ってしまった。その内に消える一過性のものだが、美しい源田の顔に不要な跡を付けてしまったのは手落ちだったと思う。
 謝るようにキスの雨を降らせていたが、源田は顔を背けてしまった。目を逸らしたまま震える声でアフロディに話し掛ける。
「…くっ、あ、アフロディ…!」
「どうしたの?」
「頼む…トイレにいかせてくれ…」
 今日は朝からこの状態で源田に留守番をさせていた。口元を拘束する猿轡すら外せないのだから、ベッドを離れてトイレに行けるはずもない。これだけ長時間放置されて、むしろ漏らしていないことの方が驚きだった。
「早くこれを外してくれ…頼む…っ」
 とはいえ源田もいい加減我慢の限界なのだろう。切羽詰まった声と表情で、羞恥に震えながらアフロディに懇願する。
 だがアフロディは残酷だった。ぞっとするほど美しい笑みと声色とで、縋る源田を叩きのめすようなことを言う。
「ここでしていいよ」
「い、嫌だっ…できない…!」
 ベッドに排泄するなど。そんなことができようものなら、源田は半日も暴力的な尿意に耐えていない。小学校へ上がる前の分別も付かぬ子どもではあるまいし、お漏らしなどという恥ずべき行為は、源田の矜持が許さなかった。
「シーツを汚すのが嫌なら、全部飲んであげようか?」
「ふ、ふざけるな!」
「僕は本気だよ…君のものなら何だって欲しいんだ」
「……ッ!」
 驚愕に目を見開いて源田はアフロディを見た。アフロディは唇に薄く笑みを浮かべて舌舐めずりをしてみせる。先程口にしたおぞましい行為を、本当にし兼ねない目をしていて、源田は心底ぞっとした。
「僕に飲まれるのとこの場所でするの、どっちがいい?」
「…どっちも、いやだっ…!」
「強情だね…これならどう?」
「ひァっ!ア、やめ…あっ!うああっ!」
 伸びてきた手のひらに下腹部を強く圧迫され、源田は悲鳴を上げて身体を仰け反らせた。限界まで張り詰めた膀胱に外から力を加えられては、下半身の我慢が利くはずもない。
「ベッドで気持ちよくお漏らししちゃいなよ」
「いや、いやだぁ!アっ!ああっ!ああーっ!」
 一際大きな叫び声と共に、とうとう尿意が理性を上回った。一度出し始めてしまうともう駄目で、はしたない染みが白いシーツに見る間に広がり、微かなアンモニア臭が部屋に立ち込める。
「あ、うぁ…はっ…はぁああ…あ…っ」
 何とか放出を止めようと努力するものの、排泄の快感を一旦知ってしまうと、途中の我慢も長くは持たない。アフロディの熱っぽい視線を全身に浴びながら、源田は再び漏らしてしまう。
「みるな…ぁ、あ…たのむ…みないで…くれ…っ、はぁ、う…」
 耐え難い羞恥の放尿は、半日分溜め込んだとあってなかなか終わらない。堰を切ったように全てを排泄し終えた源田の眦から、堪えることのできない涙がひとしずく零れ落ちた。源田にとって絶望としか言えない現実がシーツ一面に広がっている。

「すごく大きな染み…こんなに我慢してたんだね」
 感心したようにアフロディは呟いて、生温かく湿ったそこを撫でた。
「お漏らしする源田くん、可愛かったよ」
 赤く染まった目尻に口づけて、流れ続ける涙を舐めとるアフロディを、源田はきつく睨み付けた。
「この…変態…っ!!」
 源田の罵倒にもアフロディは薄く微笑むだけだった。汗の滲む身体を無造作に撫でて、源田の嫌悪を買いながら耳元で囁く。
「次は別のお漏らしが見たいな…」
「ひっ!さ、さわるな…っ!」
 手のひらが到達したのは湿った股間で、アフロディは躊躇いなく手を這わせた。萎えた性器と茂みに隠れた双袋を、しなやかな指が柔らかく揉み込む。
「朝は空っぽだったけど、もう溜まってるよね」
「くっ…黙れ…!」
「今度こそ僕に飲ませてね?」
 下半身にうずくまったアフロディは濡れた先端に軽く口づけると、先ほどの排泄の残滓を掃除するように性器の側面に舌を這わせ始めた。
「あっ!やめろっ…汚い、からっ!」
 ペロペロと丁寧に舐め上げて、竿が概ね綺麗になると、今度は先端を口に含んで鈴口を吸い上げた。尿道に残ったものも吸い取ろうということらしい。源田の感覚では信じ難い行為に腰を揺さぶり抵抗したが逆効果だった。アフロディの口内を使って、自分で自分を高める結果になって幻滅した。

 大人しく平静を保とうと努めてみるが、性的な刺激に忠実な肉棒は、口の粘膜で弄ばれる内に一本芯が通ってくる。
 くちゅくちゅといやらしい水音をたてて勃起に吸い付く一方で、アフロディは指を使い陰嚢を可愛がることもした。精液の詰まった袋を優しく揉んで、口に含んだら舌の上で軽く転がす。良さそうな声が聞こえるのに安堵する。
 ここを弄ってあげるのはそう言えば源田には初めてだった。がちがちに張り詰めた性器と重たげな陰嚢を交互に舐めながら、アフロディは源田に射精を強請った。
「源田くんの精液、全部出して…」
「ぅ…ぐぅ…ぁあっ…」
 口腔全体を使って吸い上げながら、小さな窪みに舌先をねじ込む。くぐもった呻き声が上がると同時に、反り立った肉棒がびくびくと震えた。舌の上で跳ねる体液を口内に全て受け止めたアフロディは、濃くはないが新鮮な雄の味に恍惚とした表情を見せた。
「はあっ…んんっ…精液おいしい…」
 絶頂の証である白濁を舌で転がして味わいながら少しずつ飲み込んでいく。アフロディはこれまでに幾人もの精を飲んできたが、美味しいと感じたのは源田のものが初めてだった。
 自分は源田が好きなのだ。愛しい源田のものならばなんだって喜んで受け入れられる。





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