bukkomi | ナノ


 思わず抱き締めたバダップの、その身体のあまりの細さにカノンは息を呑んだ。以前から軍人としては華奢すぎると思っていたが、まさかこれ程とは。
「…離せ」
「あっ、ごめん…」
 不快そうに眉を顰められて、反射的に離してしまったが、カノンの腕にはバダップの温もりが残っていた。軍服に包まれた板のような薄い身体。この大国を背負うには、なんて儚い。あの頃はあんなにも大きく強い壁に思えたのに、いつの間にこんなにか弱くなってしまったのだろう。
 会わない間に何があったかだなんて、バダップは決して言わない。だからカノンも唇を噛み締めて聞かない。バダップの無口な眼差しを見詰めて、一方的に想像を巡らせて傷付くことは、大層な自己満足だとわかっている。それでもカノンは想わずにはいられなかった。
「何の真似だ」
「…手くらい繋がせてよ、減るものじゃないんだから」
「…勝手にしろ」
 抱き締めることもまだできない。手袋越しにしか触れられない人に、カノンは今、恋をしている。



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