さっきまでの賑やかさとは打って変わって静寂が広がっていた。広いフィールドを見渡せば、こじんまりと見えるベンチに一人。どこを見てる訳でもなくただ
「もう皆もどったぞ」
早く行こうぜと付け足す。いつもなら憎まれ口が飛んでくるはずなのに肩透かしをくらった気分だ俺さえも黙るしかないかもと感じた
「辺見」
はっきりと呟かれたそれには、いつもの様な人を小馬鹿にするものではなく、はかなく耳に吸い込まれるようだった
そして持っていた松葉杖を投げ捨てた。おもいっきり
「俺は鬼道の背中を追いかけてきてもしょうがなかったのか」
「やっぱり強い雷門のがお似合いだ」
「…そんなこと言える訳ないだろ」
「…」
「だって鬼道、もう遠いとこにいるみたいなんだぜ」
あははっと空っぽの笑い声が静かに響いた。ちらりと見れば無理矢理ニコリと上げられた骨格が胸を刺してくるようだった
「佐久間」
「…」
「帰ろうぜ」
投げ捨てられた松葉杖を抱え佐久間に差出し何ともいえない空間から脱出を試みた
そして首に巻いていたタオルを投げた
「使えよ」
「…は?」
「そんな顔でもどるのかよ」
毎度毎度手を妬くぜ、そう思いながらも肩を貸してやることにした
「デコはいちいちお節介何だよ」
title:ジューン