ここ最近、寝る前何度も何度も考えていた。何故僕なのか、僕なんかでいいのか、僕より上手い人は山ほどいるはずだ。僕は大丈夫なんだろうか。つきない不安で不眠症になるところだった。そうはいってもいつの間にかぐっすり寝てるんだから気持ちが滅入っても体は呑気。何だかまた胃がキリキリしてきた
重い足取りで外へでると日差しが直にあたり思わず目を眩ませた。はぁと小さく溜め息を吐きいざ行こうと気を引き締めた時だった

「いでっ」

頭の裏を手で摩りながら何か飛んできた方に振り返った。そこにいたのは窓から身を出しまるで人を馬鹿にしたように笑うレアンの姿。指差して笑うな

「あはは!本当に当たるとは思わなかった!」

「痛いだろ何するんだよ」

「避ければよかったじゃない」

しれっと言い放ち自分の言ったことにまた笑い出した。正直今日ばかりは彼女の悪ふざけに付き合ってる場合じゃない

「もう行くからな」

右手を軽く上げ前に振り返った。ゴツン。またか!

「だから何する…」

「あんたさぁ、そんな顔で行くの?」

「…は?」

窓の縁に頬杖をついていつになく真面目な顔で一言。そしてオレンジ色の髪をくるくると器用に指で弄った

「もっとシャキッとできないわけ!?」

「君には関係ないだろ」

「あるわよ!」

「…なんでだよ?」

「今まで同じチームだったわけだし…恥ずかしくないようにしてもらいだけ!」

ぽかんと開いている口に気づきゆっくりと閉じた

「もう!いいから早く行ってよ」

「引き止めたのは君のほうだろ?」

「うるさい!」

バンと大きな音を立てて閉められた窓に疑問をたくさん抱きながら、ついさっきの嵐のような出来事で騒がしくなった気持ちを整理した

「…ヒート!」

振り返ると顔を真っ赤にしてまた窓から身を出していた。でもさっきよりかは控えめに

「あのさ、言い忘れた!…頑張って…ね!」

また勢いよく閉められた窓が不思議だ。あんなにバンバン開け閉めしていたらきっと直ぐにダメになってしまうだろうとつい考えてしまった
もう一度振り返って窓を見ても何かとんでくることはなかったしキンキン響く声も、バンバン開閉される窓も今は静かだった。そんな中で悶々としていた気持ちにしっかり入った頑張っての一言が妙に嬉しかった
そういえば彼女に応援されるなんて初めてだな

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