「春奈!」

勢いよく開いたドアから聞き覚えのある声が飛んできた。しーっここは保健室だよ
嬉しい、そんな気持ちをゆっくりと心に閉まった。頬が熱くなってニヤニヤしている自分に気づいた。いけないいけない私は病人なんだから
突然開いたカーテンから覗く姿に心臓が跳ねた

「大丈夫か?」

隣に合ったパイプイスに座りながら心配そうな顔をうかべている。我ながら上手な寝たふりのままうっすらと目を開ける。ゴーグルの下のその目が見たいの。誰を見てるか何て知らないし私以外を見るお兄ちゃん何て嫌。今どんなに目を見開いてみても分からない。ゴーグルが疎ましい反面、何故だか現実を見せてくれないようで嬉しい

「起きてるのか」

びくり、と肩が跳ねた。お兄ちゃんには何でも分かってしまうようで、ばれてしまっているらしい

「うん」

「熱はあるのか」

「ないよ」

おでこに冷やりとした手があたった。そんなことされたら本当に熱がでちゃうよ

「熱はないんだな」

「うん」

「頭は痛むのか」

「大丈夫」

「じゃあ少し寝たら部活に来るといい」

マントを翻して背中を見せるお兄ちゃん。仮病何かじゃないんだよ、私は恋の病にかかっちゃったみたいだから責任もってどうにかしてほしいの。だから

「まだ行かないで」

何も言わずパイプイスにゆっくりと座ったお兄ちゃんに素直に喜べばいい。なのにとてもじゃないけど悲しくて仕方がないのは何でだろう
深く深く潜り込んだベットの中は深海みたいに深くて暗くて。いっそこのベットの中でお兄ちゃんにぐっちゃぐちゃにされたら、もう、なんだか、それでいい


title:剥製は射精する

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