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Happy
Valentine's Day
2018.02.14

クリスマス同様ほんの少ししか準備できませんでしたが、バレンタインデーということで3人分のみSSを書いてみました。名前変換もなくて申し訳ありません…。少しでもお楽しみいただければ幸いです。それでは皆様、ハッピーバレンタイン!

HQ

Tooru Oikawa

知ってるんだ、あの人には手が届かないってこと。彼は綺麗で可愛い女の子達に囲まれて爽やかに笑う王子様だもの。でもね、知ってるんだ、本当は王子様なんかじゃないってこと。見えないところで泥臭く歯を食いしばって努力している人だって。
白鳥は優雅に泳いでいるように見えるけれど、水面下で必死にバタバタと足を動かしているらしい。その話をきいた時、彼によく似ているなと思った。努力を表に出さないところとか、人前では涼し気な顔をしているところとか。だからね、及川君。

「これ、あげる」
「ああ、バレンタインの?」
「そう」
「義理チョコ配るのも大変だね」
「…及川君は沢山もらいすぎて大変そう」
「まぁね」
「じゃあ私のは、いらない?」
「はは、もらうよ。ありがと」

軽いノリで受け取られた小さな箱。本命だよって伝える日は永遠に来ない。それでもいいの。あなたの頑張りを、私はずっと応援するだけで良いって決めたから。ほんの少しの勇気を振り絞って渡すことができただけでも、私にとっては及第点。心の中でそう言い聞かせた。そうして去って行く後姿を見つめていると、突然くるりと向きを変えた及川君がこちらを向いてにこりと笑うものだから、何も身構えていなかった私の心臓は大きく跳ねる。

「いつもちゃんと応援してくれてありがとう」
「え…」
「俺も、ちゃんと見てるから」

そう言って今度こそ去って行く及川君。知ってるんだ。及川君は爽やかなだけの王子様じゃないって。でもきっとね、どんなに泥臭くて汗まみれになってカッコ悪いところを見たとしても、私にとって及川君は、絶対的な王子様なんだよ。

Tetsurou Kuroo

「はい」
「…何?」
「今日、バレンタイン。チョコレート」
「単語だけで催促してこないでくださーい。そんな横柄な態度の人にはあげませーん」

休憩時間、前の席の黒尾が突然振り向いたと思ったら、私の目の前に手を出してきた。なんと不躾なやつだろう。席順の関係上、既に何人かからチョコレートをもらっていることは把握済みなのでお情けであげる必要もないと思いそう返せば、え〜…、と私の席に項垂れられた。黒尾ってそんなに甘いもの好きだったの?似合わないな。

「あっちの方でチョコ配ってる子いたよ」
「そういうんじゃねーの」
「チョコほしいんでしょ?」
「違うし」
「はあ?」
「ここまできたら察せよ!鈍すぎか!」
「ちゃんと言ってくれなきゃわかりませーん」
「…お前、分かってんな?」

そうだよ。黒尾の気持ちなんてもう知ってるもん。チョコレートだって用意してるけど、そんなにすんなり渡すわけないじゃん。勝ち誇ったかのように、ふふん、と笑う私をじっと見ていた黒尾は、恥ずかしがったり悔しがったりするのかと思いきやニヤリと笑い返してきた。え、やだ、何、すごく嫌な予感がする。

「俺はだーいすきなお前からの愛のこもったチョコレートがほしいんですけどお、くれないんですかあ?」
「な…、そんな恥ずかしいこと大声で言わないで!」

教室内に響いた声で、一斉にこちらへ視線が集まる。だって言えって言ったのお前だし、じゃない!デリカシーってもんがなさすぎるでしょ!恥ずかしくてたまらなくて突っ伏す私に、教室中から野次が飛ぶ。それを制してくれたのはこの状況を作り出した張本人である黒尾なので、お礼は言ってやらない。

「で?チョコは?」
「この馬鹿!」
「はいはい、どーも。ちゃんと用意してくれてるってことはそういうことで良いわけね?」
「…うるさい!」

私がこの男を翻弄できる日は、きっと一生こない。悔しい。けれど1番悔しいのは、そんな男に惚れてしまったことだったりする。

Ace of Diamond

Kazuya Miyuki

想い人は甘いものがあまり好きではないときいた。ので、バレンタインデーではあるけれどチョコレートは用意してこなかったのだけれど。見間違いでもなんでもなく、休憩中、想い人である御幸君は、女の子達から可愛らしいラッピングを施されたチョコレートを受け取っていた。
こんなの話が違うじゃないか。好きじゃないものは受け取りそうにないと思ってあえて用意してこなかったのに、まさかこんな展開が待ち受けていようとは。私は密かに頭を抱えた。御幸君は決して嬉しそうに受け取っているわけではない。けれど、渡す=想いを伝える、という意味において、私は沢山の女の子達に出遅れてしまったのだ。
そうして何もできぬまま迎えた放課後。悪あがきのつもりで勢い任せに近くのスーパーで買ってきたビターチョコを手に野球部のグラウンドまで来たは良いものの、さてここからどうしよう。困り果ててキョロキョロしていると、トントンと肩を叩かれた。驚いて振り向くと、なんとそこには探していた御幸君の姿。まだ心の準備ができていないというのに。

「どした?」
「え、あの、お届け物が…」
「お届け物って…宅配便じゃねーんだから。で、誰に?」
「み、みゆ、御幸、くん、に…」
「俺?」

目を丸くさせていた御幸君は私が手に持っているものに気付いて全てを察したのだろう。ああ、と声を漏らした。

「あの、そんなに好きじゃないって知ってるんだけど、でも、」
「くれねーのかと思った」
「…え?」
「食うよ。そんなに好きじゃないけど…これだけは」

ニッと笑って私の手元からチョコレートを取って行った御幸君は、颯爽とグラウンドに駆けて行く。明日からどんな顔して顔を合わせればいいんだろう。寒いはずなのに体中が燃えそうに熱くて、私はその場にしゃがみ込むと暫く動けなかった。


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