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▼▽▼


最近、まっつんに彼女ができたらしい。いつの間に!と思ったけれど、よく考えたらまっつんの恋バナはあまり聞いたことがないから、俺達の知らない間に愛を育んでいたのかもしれない。岩ちゃんもマッキーも、良かったなーって普通に祝福していたし、俺も…まあ、別れたばっかりだったからちょっと荒れ模様だったかもしれないけど、そこそこ祝福した。


「まっつんの彼女って可愛い系?綺麗系?」
「は?なんで?」
「気になっただけ!で?どっち?」
「綺麗系じゃね?」
「松川は大人っぽい方が好きそうだよな」
「……そうでもないけど」
「じゃあ可愛い系なんだ!年下?」
「年上」
「おー!可愛い系の年上!意外!」
「へぇ」


まっつんの彼女が可愛い系の年上と聞いて、マッキーは勿論、岩ちゃんも少し驚いていた。なんとなくまっつんは大人な綺麗系お姉さんと付き合っているイメージがあったから、俺も少なからずびっくりした。これは、見てみたい。
部活終わりの部室内。俺は話の流れから、まっつんに彼女の写メを見せてほしいとおねだりしてみた。マッキーも、そしてなんだかんだ言って岩ちゃんも、興味津々だ。


「あー…撮ったことないわ」
「マジ?」
「じゃあ諦めるしかねぇな」
「えー…あ!じゃあさ、今度の練習試合に誘っちゃえば?」


俺の発案により、結局まっつんは彼女を誘うことに成功したらしい。俺はワクワクしながら練習試合当日をむかえた。とは言え、観客はいつものことながら大勢いて、私服姿の人も多い。まっつんの彼女を探すのは至難の技である。
俺はいつも通り2階席の女の子達に笑顔で手を振りながら、さり気なくそれらしい人がいないか探す。…ダメだ、特徴とか聞いてないし分かるわけない。彼女が来ているというのにソワソワした様子もなく、淡々とウォーミングアップをするまっつんに、俺は声をかける。


「ねーねー。彼女どこ?」
「知らねぇっての」
「探しなよ!」
「真面目にウォーミングアップしねーと岩泉に怒られるぞ」
「クソ川ァ!てめぇ何サボってんだボゲェ!」
「いった!ボール頭にぶつけないでって言ってるじゃん!」
「ほらな」
「で、松川。彼女どこ?」
「花巻…お前も岩泉にボールぶつけられたいの?」


岩ちゃんの妨害によってまっつんの彼女探しは中断されてしまい、練習試合が始まった。例の如くうちの圧勝ムードが漂う中、俺はチラチラと2階席に目をやっていた。すると、1人、目に付く人を発見する。
特別俺のタイプというわけではないけれど、身に纏う雰囲気が柔らかそうで、綺麗めな可愛い系。んー…年下?いや、服装からするともしかして年上?年齢不詳なその人が、なぜか気になった。俺は休憩中、そのことを3人にさり気なく話してみた。


「あそこの下から2段目に座ってる人、綺麗めで可愛くない?」
「んー?どこ?……あー。分かる。けど、及川のタイプじゃなくね?」
「そうなんだけど。脚綺麗じゃない?」
「お前変態かよ」
「てめぇ…試合に集中しろっつってんだろ!このボゲェ!」
「ちゃんと集中してるってば!そんなに怒んないでよ!」


岩ちゃんに殴られつつも、視界の隅で捉えたまっつんの顔は、なんだか驚いているように見えた。あら?もしかして?休憩が終わってしまったので確認はできなかったが、恐らく俺の気になった人はまっつんの彼女だ。そんな予感がして、俺はまたみんなに気付かれないように、その人を観察するのだった。


◇ ◇ ◇



練習試合は勿論うちの圧勝で終わり、俺達は片付けを済ませると部室に戻る。のんびりユニフォームを脱ぎながらまっつんを見ると、信じられないことにもう着替えを終わらせていた。ははーん。彼女が待ってるパターンだな。


「まっつんの彼女って、さっき俺が綺麗めで可愛いって言った人でしょ」
「え!マジで?」
「そうなのか?」
「…隠しても仕方ないから言うけど。そう。俺、ちょっと急いでるからもう行くわ」


まっつんはそれだけ言うとスマホで電話をかけながら部室を出て行ってしまった。これは。追いかけるしかない!俺は2人にも早く着替えるように言うと、さっさと制服を着て部室を飛び出した。
マッキーはノリノリで、岩ちゃんも悪趣味だろ…とか言いながらも、なんだかんだで付いて来ている。どこに行ったのかと探していると、体育館を出たところで彼女さんと一緒にいるまっつんを発見した。俺達は体育館の陰に隠れて2人の様子を窺う。
ちょうど出会ったばかりなのか、まっつんが彼女さんに近付いていく。ハグしちゃう?そんな期待を裏切って、まっつんはなぜか彼女の頬を摘んでいる。何やってんだ?残念ながら話し声は聞こえないので、益々意味が分からない。


「松川何やってんだろ…」
「荒手のスキンシップかな?」
「おい、いつまで見るつもりだ?」
「岩ちゃん、興味ないなら帰っていいよ」
「…お前なぁ…」


小声でボソボソとそんな会話をする。岩ちゃん、注意しておきながら帰らないんじゃん。そんなことを思いながら2人の成り行きを見守っていると、何があったのかは知らないが彼女さんが笑い始めた。え、何?どういう展開?
頬を摘まれて、その後の会話で何か楽しくなるようなことがあったのだろうか。もっと近付いて話の内容まで聞きたいところだが、これ以上はどうやっても近寄れない。
それからまた何やら会話をして、笑っていた彼女さんが、今度は突然顔を赤くして照れ始めた。何?なんなの?まっつん何言ったの?なんとなく空気が甘ったるいんですけど!


「まっつんってタラシなの?」
「お前にだけは言われたくねーだろうな」
「同感」
「でもさ、あの彼女さんの表情見た?何言ったか知らないけど、あれはタラシだよ!」
「及川うるさい」
「黙れ」


2人に辛辣な言葉を浴びせられ、俺は渋々口を噤んだ。同じことをやったとしても、俺はタラシなのにまっつんはタラシじゃないらしい。ひどい差別だ。
勝手に覗き見しておきながら理不尽だとは思うが、まっつんに対してほんの少しジェラシーを感じていると、今度はまっつんが急にしゃがみ込んだ。しかも、どうやら照れているようだ。彼女さんもタラシなの?タラシ同士でイチャイチャしてる感じ?


「あんな松川見たことねぇな」
「なんだよー…めっちゃラブラブってやつか…」
「見てるこっちが恥ずかしいよね」
「勝手に覗き見し始めたのはクソ川だろ」
「確かに」


またもやグサグサと言葉の槍が突き刺さって、俺は瀕死の重傷だ。しかし、そんな俺に更なるダメージを与えたのは、他でもないまっつんだった。
なんと俺達の目の前で(まっつんは見られていることを知らないわけだけど)、しゃがみ込んだ彼女さんにキスをしたのだ。これにはマッキーも岩ちゃんも絶句である。
その後、立ち上がった2人は仲睦まじく手を繋いで正門の方へ歩いて行ったわけだけれど。俺達は、その場から動けなかった。ショックというか、あまりにも衝撃的すぎた。そういうことをしそうにないキャラだからこそ、その威力は計り知れない。


「……松川、やるな」
「あれでもタラシじゃないって言える?」
「タラシとかタラシじゃないとかそういう問題じゃねぇだろ」
「学校で…見せつけられたわ」
「俺達が見てたことは知らねぇけどな」
「今度、見てたよーって言ったら、まっつん怒るかな?」
「逆に開き直られそうで怖い」
「あー、そうかもな」
「ラブラブだっただろ、とか?」
「……言われたらダメージハンパねー」


というわけで。これ以上ダメージを受けたくない俺達は、覗き見していたことを内緒にしておくことに決めた。兎にも角にも、まっつんと彼女さんはラブラブだということが分かったところで、俺から言いたいのはたった一言。幸せ、少し分けてください。
キラキラ見届け隊

Series02「キラキラを集めたらキミでした」の裏側。安定の残念な及川笑。