×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

サラリーマン治とOL


 土曜日の夕方。家に帰ると珍しく彼女からのお出迎えがなかった。同棲中の彼女は基本的に土日祝が休みで、俺は隔週土曜日が仕事。今日はその仕事にあたる日で漸く帰って来れたわけなのだが、彼女は家にいないようだ。
 そういえば午後から何か予定があると言っていたようなそうでないような。何にせよ、もう少ししたら帰ってくるだろう。
 堅苦しいスーツを脱ぎ捨ててネクタイも外す。さっさと家着に着替えて、さて彼女はいつ帰ってくるだろうかと思いながらリビングに足を運び、ふとベランダに目をやれば、いつもは何もないそのエリアに洗濯物が干しっぱなしになっていることに気が付いた。
 そういえば気にしたことはなかったが、洗濯物は常に彼女がしてくれている。たまには俺が取り込むぐらいはしておこう。
 本当にただの気紛れだった。ベランダに出て、綺麗に干されている洗濯物をひとつひとつ取り込んでいく。タオル、靴下、俺の下着。そして次のものへと手を伸ばした俺はそのままの状態で固まった。
 そこに干してあったのは彼女の下着。ブラジャーとパンツ。それ自体は何度も見たことがあるので驚きはしない。ただ、その下着は今までに見たことがないというだけでなく、以前俺が「こんなん着けたらええのに」と、彼女が見ていた女性雑誌の中を覗き込んで何の気なしに勧めたものと全く同じものだったのだ。
 何の気なしに勧めたとは言え、それは俺好みだったから、あわよくば着けてくれないかなという淡い期待を込めていた。まあ望みは薄いだろうなと思っていたから今の今まで自分の発言すら忘れていたのだが、まさか本当に買ってくれているとは。俺の彼女は相変わらず可愛い。
 次いつコレ着けるんやろ。
 気付けば俺の頭の中はそのことで頭がいっぱいだった。腹はへっているが、もしこの下着を着けてくれるのであれば、飯よりも先に彼女をいただきたいと思う程度には煩悩に塗れている。

「ただいま! ごめん、遅くなっちゃって……」
「おかえり」
「洗濯物いれてくれてるの? ありがとう! 助かる!」

 まさか俺の脳内が自分の下着のことで埋め尽くされているなどとは夢にも思っていないであろう彼女は、帰ってくるなり満面の笑みで俺にお礼を言ってきた。あかん。今その笑顔見たらめっちゃムラムラする。
 俺は極力平静を装って全ての洗濯物を取り込み、彼女が夜ご飯の支度をするのを大人しく待つことにした。が、困ったことに、その日はどうにかなったものの、次の日もその次の日も、事あるごとに思い出すあの下着の存在。あれから何度か身体を重ねたが、お目当てのあの下着ではないことに内心少しガッカリしていたなんて、とてもじゃないが彼女には言えない。
 しかし、あの下着を目撃した日からちょうど二週間が経過した土曜日のこと。俺はたまたま見てしまった。身を屈めてローテーブルを拭いている彼女のシャツの胸元から覗く、俺好みのお目当ての下着を。
 寝ても覚めても考えていたというほどではない。が、少なからず俺の脳内の何パーセントかを支配していたそれを彼女が今身に着けている。そう思ったらどうしようもなくムラムラしてきて、俺は堪らずテーブルを拭き終わった彼女の手を取って自分の方に引き寄せた。

「なぁに?」
「今からしよ」
「へ……は? な、なんで!?」
「自分が可愛すぎるんが悪い」
「え、ちょ、意味分かんないんだけど……!」
「今日の下着、俺の好きなやつやろ」
「なっ、」

 なんでそれを、という質問は吐息とともに飲み込んだ。あとでなんぼでも答えたるから、とりあえず今はその可愛い下着、俺にちゃーんと見せてくれへん?