同居人旭とOL
今日は最高に疲れていた。疲れていたから、夜ご飯を食べてお風呂に入ったら、ベッドまで辿り着けずにソファに横になってしまって、そこから動けない。現在進行形で。
そんな私の元にやって来て「大丈夫?」と心配そうに顔を覗き込んできたのは、同居人の恋人、旭くんだ。旭くんはいつもいつも、本当にいつも例外なく私に優しい。甘やかしの天才である。だから今も、こんなグータラな彼女に「疲れてるならチョコレート食べる?」などと言ってくれるのだ。
疲れた時には甘いもの。たとえ夜であっても、その誘惑には勝てない。私はこくんと首を縦に振った。
「はい、チョコレート」
「あーん」
ソファに寝そべったまま、口を開けただけで自動的にチョコレートを放り込んでくれるなんて、なんて素晴らしいシステムだろう。いや、システムが素晴らしいんじゃない。旭くんが素晴らしい彼氏すぎるのだ。
そんな旭くんだって、きっと疲れているはず。それなのに私のことばかり労ってもらってばかりで申し訳ない。今更のようにそんなことを思って、私にも何かできないかと考えて、ふと閃いた。
「旭くん、チョコレートちょーだい」
「いいよ。はい」
「あーん」
もうひとつチョコレートを口の中に入れてくれたところで、近くにあった旭くんの首元を引き寄せて唇をくっ付ける。大きな身体をビクつかせてびっくりしている旭くんだけれど、これだけじゃ終わらない。
口の中で溶けたチョコレートを、一生懸命、旭くんの口の中にお裾分け。思っていた以上に難しくてどろどろになってしまったから、本来のチョコレートの味を感じてもらえたかどうかは定かではない。
「な、何して……!」
「旭くんも疲れてるだろうからチョコレートお裾分けしてあげたくて」
「心臓に悪いよ……」
「嫌だった?」
「嫌じゃないけど……そういうのは俺からしたかったな」
「え」
意外。旭くん、そういうの苦手そうなのに。そう思っている間に、旭くんがチョコレートを口の中に含んだ。近付いてくる顔。
あ、やばい。チョコレートじゃなくて私の方が溶けそう。
口の中は既に甘すぎてむせ返りそうなのに、更に上乗せされる甘さ。これだけ糖分を取ったんだから、明日も頑張らなくちゃね。