名前を追いかけて行った及川を見送って、3人は再び歩き始めた。歩きながらの話題は勿論、例の2人の恋愛事情である。


「及川、マジだってさ」
「まあ確かに、今まで見たことねーもんなあ、あんな及川」
「自分から仕掛けてるアイツ見んの、たぶん初めてだわ」
「岩泉が初めてなら俺らも見たことねーわな」
「そんだけ本気ってことかー…あの及川がねぇ…」
「なんで名字さんなんだろ？」
「ん？美人だからじゃね？」
「それだけじゃねぇだろ」
「そう言うからには岩泉には何か他に思い当たる理由があるってこと？」
「そういうわけじゃねぇけど…」
「でもまあ、美人なだけで及川は靡かねぇよな」
「確かに。じゃあ何だろなー」
「なんかうまく言えねぇけど、名字とならうまくいきそうだよな」
「お、岩泉がそんなこと言うの珍しー！」
「なんでそう思うわけ？」
「んー、なんつーか……名字は及川に媚びてねぇし素っぽいし」
「確かにな。及川の今までの彼女って見るからにキャラ作ってる子ばっかりだったし押し強かったし」
「そういえばそうだったなー。挙げ句の果てに、告白されたくせに部活優先で寂しいとか言われてフラれてたし」
「名字は部活優先だろうが何も言いそうにねぇな」
「むしろ及川が会えなくて寂しいとか言っててウザそう」
「うわー想像できるわー」
「ていうかさ、まだ付き合ってないんだよな？」
「あの及川にしては手こずってるよな」
「名字さんガード堅そうだもん。落とせんのかねー」
「アイツ、相当本気っぽい。最近帰るとき名字のことしか話さねぇし」
「じゃあ落とせるまで粘るか…頑張るねー青春してるねー」
「花巻、楽しんでんだろ」
「そんなことないヨー？うまくいくことを願ってますケド？」
「嘘くせぇなオイ」
「とりあえずさ、応援してやるか」
「そうだなー」
「俺は別に何もしねぇけどな」
「岩泉は及川の話きく係だからそれだけで大役を担ってる！」
「お、おう…」
「俺ら何するよ？」
「んー…見守る係？」
「それ、何もやってないのと同じじゃね？」
「ヘタに手出ししたら及川にキレられそうだし」
「だから良いんだよ、何もしなくて。面倒臭ぇことになるよりマシだろ」
「じゃあ温かく見守る係ってことで！」
「明日、及川どういうテンションだろーな」
「ヘコみまくってボロボロに1票！」
「同じくー」
「………うぜぇぐらいハイテンションに1票」
「マジで？岩泉そっちの予想？」
「ラーメン賭けるか」
「良いねぇ！」
「岩泉の1人勝ちか俺らの勝ちか…明日楽しみだなー！」


翌日、岩泉の予想通りウザいぐらいのハイテンションで部活に臨む及川の姿があった。花巻と松川が肩を落としたのは言うまでもない。

←｜BACK | →