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こんなにも上手くいかないことってある?これは俺が問題なのかな?俺はここ最近、ほとほと困り果てていた。全ては俺が勝手に想いを寄せているマネージャーの名前ちゃんが鈍感すぎるのが原因だ。
俺が名前ちゃんのことを気にし始めたのはいつからだったのだろう。正確には分からないけれど、たぶん半年ぐらい前だと思う。誰にでも明るく笑顔で接する名前ちゃんのことをいつの間にか好きになっていた。自分の気持ちに気付いてからと言うもの、俺は割と分かりやすく名前ちゃんにアピールしてきたつもりだ。
当たり前のことながら、部活中にはウザがられてもおかしくないぐらい話しかけまくったつもりだし、練習でヘトヘトに疲れ果てた後も、マネージャーの仕事を手伝ってから部室に戻るようにした。部活以外の学校生活の中でも、ことあるごとに名前ちゃんに会いに行っては、他愛ない会話を楽しむようにもした。
たぶん、普通の女の子はここまでされたら少しぐらい意識したり期待したりするものだと思う。少なくとも最初は、俺だってそういう反応を待ち望んでいたのだけれど。月日が経つにつれ、その気持ちは薄れていった。理由は簡単。名前ちゃんは超がつくほどの鈍感だったからだ。
信じられないことに、俺の気持ちは名前ちゃん以外みーんな気付いている。あ、違う。みーんなじゃない。若利君は気付いてなかった。ていうか、若利君は気付く気付かない以前に、そういう話題に関して無知すぎるから論外だ。とにかく、俺はそれほど分かりやすく猛アピールしている。


「名前ちゃんさあ…よく鈍感って言われない?」
「え?鈍感?言われたことないよ?なんで?」
「鈍感だなーって実感しまくってるところだから」


今日もいつもの如く、部活終わりに部誌を書いている名前ちゃんの傍で椅子にぐでーっと座って、他愛ない会話を繰り広げる。ちなみにここは部室で、他の部員達は帰ってしまった。先に述べた通り俺の気持ちは既に若利君以外の皆にバレているので(元々隠すつもりもなかったし)、いつも気を利かせて2人きりにしてくれるのだ。
このシチュエーションを毎日繰り返していることに何の疑問も抱かない時点で、名前ちゃんはかなり鈍感だと思うんだけど。2人きりになってもいつもと変わらない名前ちゃんの態度を見ると、俺を意識してくれたり…なんてことはないらしい。


「私が鈍感?えー?どこが?」
「どこが?って…きかれてもネ…」


この約半年の間の出来事を脳内で思い出しながら、俺は苦笑するしかなかった。そもそも、仮にも(いや、列記とした!)男である俺と2人きりでいることが当たり前となっているというのに、そのことをなんとも思わないのか。…思わないんだよネ。分かってるってば。


「天童君、何か私に伝えたいことでもあるの?」
「え?」


部誌を書く手を止めてキョトンとした様子で俺に素直な問いかけをしてくる名前ちゃんといったら、残酷なことこの上ない。
それが言えたら苦労してないんだけどネ!いっそ一思いに言ってやろうか!名前ちゃんのことが好きだから猛アピールしてたんだけど気付かなかったの?ほらね、鈍感じゃーん!ってさ。
でも、そんなことができているなら、今頃とっくに事態は進展しているわけで。俺はこう見えて意外と石橋を叩いて渡るタイプだったらしく、脈アリかどうかも分からない相手に告白はできないチキン野郎だったりする。
バレーでなら直感で動けるし嗅覚も働くというのに、色恋沙汰になるとどうもダメだ。相手の動揺を誘い、自分にとって思い通りの展開になるように事を運ぶつもりだったのに。


「名前ちゃんは、この状況をなんとも思わないのかなーと思ってさ」
「この状況?」
「俺と当たり前のように2人きりのこの状況」


結構踏み込んだことを言ったと思う。けれど、名前ちゃんは数回パチパチと瞬きしただけで、照れて顔を赤らめたり、恥ずかしさから俺と視線を逸らそうとしたり、なんてことはなく。ほんの少しだけど、傷付いた。


「だって、天童君とは結構前からこんな感じだし」
「……なんで、結構前からこんな感じなんだと思う?」


こうなったらとことん質問責めにして、名前ちゃんが困って恥ずかしがる顔を拝んでやりたい。ヤケクソとも言うけれど、最早開き直った俺は、机に頬杖をついて名前ちゃんの顔を下から覗き込むようにじぃっと見つめる。


「さあ…分かんないよ。偶然?」
「毎日2人きりになる呪いでもかけられない限り、そんな偶然は重ならないヨ」
「えー…じゃあ分かんない……」


名前ちゃんには、常に核心を突く一言を言うのを避け続けてきた。それは、この付かず離れずの関係がいつの間にか心地よくなっていたからかもしれない。
ぬるま湯の中でぬくぬくと、できたらずっとこうして、友達以上恋人未満の関係でもいいかも、なんて。無意識の内に、どうにも俺らしくない緩んだ考え方をしてしまっていた。失うぐらいなら、いっそこのまま。それほどまでに俺は、名前ちゃんのことが。


「部誌、書き終わったの?」
「え?あと少しだけど…」
「じゃあ書きながら聞いて」


名前ちゃんは俺の言った通り、再び止めていた手を動かし始めると部誌にすらすらと文字を書き連ねていく。なんでもないことのようにさらりと。いつものように茶化すみたいに。言ってしまいたい。
何度もそう思っては挫折した。けれど。超がつくほど鈍感な名前ちゃんには、きちんとストレートな言葉で伝えないと一生気付いてもらえない。随分前から、そんなことは分かりきっていた。だから、今日こそは。ちゃんと伝えるからネ。


「俺さぁ、名前ちゃんのこと…、」
「……私のこと…?」


部誌に注がれていたはずの大きな瞳が、俺へと向けられる。柄にもなくどくりと大きく脈打つ心臓。普段は妖怪みたいな俺でも、ちゃんと人間らしいピュアなところがあるじゃないか、なんて自嘲気味なことを思って。
すうっと息を吸った俺が意を決して紡いだ言葉に、名前ちゃんは分かりやすくも持っていたペンをぽとりと落とした。本当に、俺の気持ちに気付いてなかったんだネ。


「て、天童君…今、なん、て……?」
「聞こえなかったの?じゃあもう1回言ってあげようか?」


あんなに言うのを躊躇っていたのに、みるみるうちにぶわあっと顔を赤らめていく名前ちゃんを見ると何度でも言ってしまいたくなるなんて、俺はゲンキンな奴だ。それでこそ俺。やっと、調子が出てきたんじゃない?
これまでの鬱憤を晴らしてやるとでも言わんばかりに、俺はニヤァと笑みを浮かべて。慌てふためく名前ちゃんに、2度目の告白をした。


「すきだよ。…フラれたらどうしようって考えちゃうぐらいには本気で…ネ?」
等身大の溶解

もす様より「同い年マネに猛アピール、肝心な「好き」とか「付き合って」が言えなくてモジモジしてる可愛い天童」というリクエストでした。ほぼモジモジしていないどころか結局最後は天童の思う壺になってしまって可愛さを表現できませんでした…。天童難しい…。でも、恋愛に悩む高校男子な天童を書けてとっても楽しかったです!この度は素敵なリクエストありがとうございました!
2017.05.20


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