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砂糖漬けの恋をしよう


俺には最近、彼女ができた。その彼女がめちゃくちゃ可愛い。可愛すぎて困ってる。見た目は勿論だけど、仕草とか反応とか、とにかく全部が俺にドンピシャなわけ。
で、こんなんだから部活終わりの部室でも松川に惚気まくってしまった。


「花巻がそこまでハマるの初めてじゃね?」
「あー、そうかも?今までは長続きしなかったけど名前とは絶対別れねーから」
「はいはい、ゴチソウサマ」


呆れられているのはわかってる。それでもついつい話したくなっちまうんだから仕方なくね?
俺は緩む頬をそのままに、今終わったー、と彼女にLINEする。帰宅部の彼女は家で夕飯でも食ってる頃かもしれない。
携帯をいじりながら松川と部室を出ると、先に出ていた及川と岩泉がこちらを見た。ん?なんか様子おかしくね?


「マッキー!名字ちゃんと何かあったの?」
「は?なんもねーけど。つーか超順調だし」
「じゃあなんで名字があんなとこにいんだよ」
「は?」


岩泉が視線を送る先に目をやると、確かにそこには名前がいた。
いやいや、なんで?何の連絡もなかったよな?こんな時間まで俺のこと待ってるって…どういうことだよ。
混乱しつつも、とりあえず名前のところへ走って近付く。


「名前!どした?」
「あ…貴大くん。部活お疲れ様。連絡もなく待っててごめんね」
「いや、それはいいけど…なんかあった?」
「その…、確かめたいことがあって…」
「ん?何?」


優しく問いかけるが、名前は黙り込んでしまった。
俺、なんかしたっけ?必死にここ最近の出来事を振り返ってみるが、特に思い当たることはない。


「あのね…、今日、貴大くんの元カノさんに会ったの」
「は?なんで?」
「と、とにかく…元カノさんが、放課後教室に来たの」
「マジか…」


元カノときいて、嫌な予感しかしなかった。
元カノは同じクラスの奴で、どっちかと言うと目立つグループに属している。こう言っちゃ悪いが、そこまで好きではなかった。あっちからグイグイ来られて正直引き気味だったし、部活優先の俺を理解してくれなくて頭を抱えていた当時のことを思い出す。
とはいえ、別れを切り出してきたのはあっちの方だし(もしあっちが言わなくてもこっちから切り出したのは間違いないけど)、別れたのは数ヶ月も前のことだ。今更、名前に何の用があるというのだろうか。


「貴大くんは、まだ、元カノさんのことが、好き…なの……?」
「ンなわけないじゃん…そんなこと言われたの?」
「ヨリを、もど、す、って…言われ、て、そんな、はず、ないって、思ってたんだけど…っ、」


途切れ途切れに紡がれた言葉はだんだん力をなくしていき、とうとう名前は泣き出してしまった。


「私っ、貴大くんと、別れ、たく、ないっ…」


俺は名前を抱き締めた。そんなん決まってんじゃん。別れるわけないっつーの。俺、ヨリ戻すとか一言も言ってねーし。
元カノには心底ムカついてる。でも、今は元カノのことを考える時間すら勿体ない。


「名前、きいて?」
「…うん」
「俺は名前が好きで、元カノとヨリを戻すつもりなんか全くない」
「そう、なの…?」
「当たり前じゃん。俺のこと、信じらんない?」


真剣に本音を伝えると、名前は俺の大好きな笑顔を見せて、信じるに決まってるよ!と言った。
さっきまで泣いてたくせに。でも、そーいうとこ。すげー好き。


「アイツ…元カノには俺から言っとくから、気にすんなよ」
「うん、大丈夫。部活で疲れてるのにごめんね…」
「全然。逆にラッキーじゃね?一緒に帰れるし」


俺は名前の手を握って帰路につこうとした。が、その時思い出した。ここは部室棟の前で、まだあいつらがいるということを。
慌てて振り返ると、やはりというべきか、そこには生温かい目で俺を見る3人の姿があった。


「見せつけてくれるねーマッキー」
「付き合ってらんねー」
「あーお腹いっぱいだわー」


うるせー!良いムード台無しだろ!3人に向けてそう叫ぶ。ほんとに空気読めねー奴らだ。
名前は人ごとのようにクスクス笑ってるけど、恥ずかしくねーのかな。まあ、いいわ。どうせならもっと見せつけてやってもよくね?


「名前、こっち向いて」
「何?貴大くっ…!」


素直にこちらを向いた名前の唇に、自分のそれを重ねる。時間にすると一瞬。けれど、名前の顔を真っ赤にするには十分だ。
あー可愛い。そういう反応もすげー好き。


「なっ、何するの!みんな見てるのに!」
「見せつけようと思って」
「…もう!」


外野の3人(主に及川)がうるさいけど無視。俺は今度こそ名前の手を握って帰路についた。
明日、あの元カノに釘刺すの忘れねーようにしないとな。