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煩悩?Oh,no!


男は煩悩の塊だと言われることがあるらしいけれど、まったく、その通りだと思う。この世界の全ての男が煩悩の塊だとは言えないだろうけれど、少なくとも俺は間違いなくそれに該当する。というのも、授業中である現在、俺が考えているのは彼女のことばかりだからだ。
彼女のこと、という言い方をしたら煩悩の塊と言うには弱く聞こえるかもしれないけれど、正確に言うなら、俺が考えているのは「どうやったら彼女のおっぱいをナチュラルに揉めるのか」ということだった。これで俺が立派な煩悩の塊だということが分かってもらえただろう。まあ、胸を張って言うようなことでもないのだけれど。

俺の彼女はスタイルが良い。女の子の中ではちょっと身長が高めですらりとしている。太ってはいない。中肉中背。もしかしたらちょっと痩せている方かもしれない。けど、おっぱいはちゃんとたゆんとしていて、申し分ない大きさと柔らかさ。
付き合っているわけだから、そりゃあ何度かセックスしたことはある。その時にばっちり脳内に焼き付けた彼女の裸体。そして感触。あ、やべ、思い出したら鼻血出そう。
兎に角、俺の彼女のおっぱいは最高なのだ。けれども、セックスの時以外に触れる機会なんてほぼ皆無。唯一のチャンスであるセックスだって、そう頻繁にできるものではない。
俺としては、早朝だろうが昼休憩だろうが部活終わりだろうが、いつでもどこでもセックスしたいと思っている。高校生男子なんてそんなもんだ。好きな女の子に触れたいと思うのは、もはや自然の摂理。煩悩ではなく本能である。
しかし女の子というのは難しい生き物で、いくら好きな相手だとしても、時間と場所とムードが整っていなければセックスには応じてくれない。だから俺は真剣に悩んでいるのだ。「どうやったら彼女のおっぱいをナチュラルに揉めるのか」と。
セックスするのが無理なら、(揉むだけで終われるかどうかは別として)せめて胸を揉ませてもらえないだろうか。ここ最近はゆっくり会うことすらままならない状態が続いているから、余計に欲求不満になっているらしく、俺は非常に悶々としていた。

腹がへっている時は飯のことで頭がいっぱいになるから良い。バレーをしている時も、意識は全てボールに向いているからそちらに集中できる。しかし、飯とバレーから離れると、俺の脳内は途端に煩悩だらけになってしまう。いっそ病気では?と自分自身が心配になるレベルだ。
俺の彼女はテニス部で、運が良ければ一緒に帰ることができる。ただ、バレー部はもともと練習時間が長いし、俺はそこから更に自主練もするから余計に帰りが遅くなる。そうなると、テニス部の彼女は先に帰ってしまうことが多いのだ。
クラスが違うから学校生活での接点はほとんどなし。昼休憩にご飯を一緒に食べることもあるけれど、お互い部活のミーティングが入ったりすると意外と会える時間は少ない。次会う予定は今のところないし、どうしたものか。


「じゃあこの問題を……木兎!」
「へ?」


完全に授業とは無関係のことを考えていた俺は、先生に突然名前を呼ばれて現実に引き戻された。当てられた問題なんて解いているわけがないので、勿論答えられるはずもなく。ラッキーなことにちょうど授業終了のチャイムが鳴ったので「授業に集中しろよー」という適当なお咎めを受けただけで終わった。
さて、悩んでいても仕方がない。もともと頭だけで小難しいことを考えるのは苦手なのだ。俺はとりあえず彼女に会いに行くことにした。授業と授業の合間の短い休憩中。おっぱいは揉めないとしても、会って話すことぐらいはできるだろう。
隣のクラスまで足を運び、躊躇いなくその教室の中に入る。彼女の席がどこなのかは把握済みだから、お目当ての人物を見つけるのは簡単だ。


「名前!」
「光太郎?どうしたの?」
「どうもしないけど!会いたくなったから会いに来た!」


実は朝起きてから先ほどの授業中まで、朝練の時を除いてずっと名前のおっぱいを揉みたいと考えていたら会いたくなったから会いに来た、とはさすがに言えないし言っちゃいけないことは馬鹿な俺でも分かるので、会いたくなったから会いに来た、という部分だけを伝える。名前は俺の下心になど気付くはずもなく、嬉しさ半分、恥ずかしさ半分といった表情だ。
教室には友達がいるし落ち着かないからと、俺達は廊下に出て話すことにした。俺から会いに行くのはそこまで珍しいことではないけれど、行くたびに毎回驚きと喜びを入り混じらせる名前を可愛いと思う。今すぐ抱き締めたくなるぐらい。教室のど真ん中でそんなことをしたら怒られるのは目に見えているから、ぐっと堪えるけれども。


「昼休憩でもないのに来るの珍しくない?何かあった?」
「だから、すげぇ名前に会いたくなったんだって!」
「それは嬉しいけど……来たからって何もないでしょ」


照れ隠しなのだろう、名前の反応は2人きりの時より素っ気なくてちょっと寂しい。けど、学校で人の目がある時はいつもこうだから仕方がない。
季節は夏休みを目前に控えた7月下旬。夏本番の暑さが続く毎日だ。名前はリボンを緩めており、シャツのボタンを1つ、2つ外している状態。となれば、名前より背の高い俺はシャツの中へ視線を落としたくなってしまうわけで。
本当だったらシャツの隙間に指を突っ込んでから引っ張ってじっくり拝みたいところだけれど、何度も言うようにここは学校なので、そんなことはできない。だから俺は、どうにかして中が見えないかと奮闘するしかなかった。


「光太郎、次の授業何?」
「んー……なんだっけ……」
「移動教室じゃない?」
「たぶん、違う」
「私は英語だから大丈夫だけど」
「英語……ふーん……」
「光太郎?聞いてる?」
「ん?うん!聞いてる!すっげー聞いてる!」


シャツの中を見ることに必死になりすぎて、会話が疎かになっていた。危ない危ない。俺は訝しそうに顔を覗き込んできた名前を見て、我に帰る。
と、その時だった。廊下を走っていた男子の1人が名前に、どん、とぶつかった。その衝撃でよろけた名前は、俺の身体に抱き付くような格好になる。当然、俺の身体にはふにゃりとした感触。
揉むことはできなかったけれど、自分の身体に名前のおっぱいが触れた。というか、事故とはいえ押し当てられた。これはラッキースケベというやつなのだろうか。だとしたら、もっと過激なラッキースケベでも良いんだけど。


「ごめん」
「いや、全然」
「そろそろ戻った方が良いかな」
「あー、うん、そうかも」
「また連絡するね」


中途半端に触れたものだから余計に悶々とした気持ちになって離れ難くなってしまったけれど、そんな俺とは対照的に名前はあっさり俺から離れて行こうとする。また連絡するって、じゃあ会えるのはいつだろう。今日の昼休憩?放課後?部活終わり?それとも明日?明後日?考え出したら止まらない。
そんな俺の思考などつゆ知らず、いよいよ教室に戻ろうとしている名前を本能的に引き止めようとした俺は、慌てるあまり足をもつれさせてしまった。やばい、こける!咄嗟に俺は何かを掴もうと手を伸ばす。
むにゅり。ちっとも固くない、むしろ柔らかすぎるものを手に掴んだ直後、顔も柔らかいものに包まれた。あれ、この感触……なんだっけ。むにゅむにゅ。身に覚えのある感触の正体を思い出すために掴んだものを揉んでいて、はっとした。これは!


「……光太郎、何やってんの……?」
「ごめん!!!つい!!」


柔らかくて気持ち良くて!という言葉は飲み込んだ。それは正解だったと思う。けど、見上げた名前の顔は鬼の形相。それもそのはず。俺が手にしていたのは名前のおっぱい。顔を埋めたのも、勿論名前のおっぱいの谷間である。
さっき、もっと過激なラッキースケベでも良いんだけど、なんて思ったから神様がサービスしてくれたのだろうか。お陰様で俺はめちゃくちゃ幸せな気分になれたけれど、鬼の形相をしている名前を見たら、そんなことは言っていられなくなった。


「馬鹿!変態!」
「ほんとにごめんって!!わざとじゃないんだって!!」
「そんなの分かってるけどっ」


事故現場を目撃したのであろう数人の生徒がひそひそニヤニヤこちらを見ているのが、より一層名前の怒りを助長しているようだった。次の授業が始まるまであと数分。本来なら気まずい雰囲気だろうがなんだろうが、お互いの教室に戻って大人しく授業を受けるべきだ。そして名前はそうしようと思ったのだろう。
俺に背中を向けて行ってしまいそうになったので、今度こそ手を掴む。離して!と言われたけれど、ここで離したら掴んだ意味がない。俺は名前の手を掴んだまま、ずんずんと教室とは反対方向に歩き始めた。
間もなく、授業開始のチャイムが鳴る。名前を無理やりサボらせてしまったのは申し訳ないけれど、後から体調が悪そうだったとでも適当な理由で言い訳をしたら良い。
最初は抵抗していた名前も、チャイムが鳴ってからは諦めたのか、大人しく俺に引っ張られてくれている。たぶんまだ機嫌は直っていないと思うから、どうにかしなければならないという状況は変わっていないだろうけれど。


「さっきの、ほんとごめん」
「……もう良いよ。わざとじゃないって分かってるし」


空いている特別教室はむわりと暑いけれど、他の生徒は授業中なので誰かが入ってくる心配はほとんど皆無だから、ゆっくり2人で話ができると思って入り込んだ。教室に入ってから手を離し、改めて謝る。名前は歩いている間にクールダウンしたのか、諦めたように声を落とした。
わざとじゃない。それは確かにそうだ。そうだけれど、事故が起こるまでの過程で自分が考えていたことを思うと、とても潔白だとは言い切れなくてどこか後ろめたさを感じる。


「わざとじゃない、けど、ラッキーって思った」
「……最低」
「うん。自分でもそう思う」
「認めないでよ。怒ってる私が心狭いみたいじゃん」


別に触られたのが嫌ってわけじゃなくてさ……と。名前が小さな声で呟いたセリフに、俺は耳を疑った。
え?触られたのが嫌だったから怒ってたわけじゃねーの?じゃあなんで?


「光太郎はいつもムードってもんを考えてなさすぎるの!」
「そーいうの考えんの苦手なんだもん」
「分かってる!」
「ムードが良かったらおっぱい揉んでも怒んなかったってこと?」
「そう!……とは言い切れない、けど、」


けど、もしかしたら怒らなかった可能性もある、ってことで良いんだと思う。たぶん。その証拠に、名前は言葉を濁している。
暑い教室内。とんでもないことを言ってしまったかもしれないと恥じらいを見せる名前の頬は、暑さのせいかそれ以外の理由でか、ほんのりとピンク色。つまり俺は、とてもムラムラしていた。
でも今の今、ムードが大事だという話をしたばかり。この状況は良いムードなのか?悪くはない気がするけど、学校だし、でも2人きりだし、今は授業中だから邪魔が入る確率はかなり低いだろうし、結局良いとか悪いとか、俺には判断できないわけで。


「今名前にすっげー触りたいんだけど、ダメ?」


俺は考えることを放棄して、馬鹿正直に確認する道を選ぶしかない。名前は俺の問い掛けを聞いて目をパチクリさせ、その後、笑った。光太郎はほんとに馬鹿だね、って零しながら。


「どうせ私のところに来た理由も、おっぱい揉みたいとか、そんなこと考えてたからでしょ」
「え!?なんで分かんの!?」
「ほんと、ムードのかけらもないよね」
「……ってことは、ダメ?」
「残念ながら私はそんな光太郎のことが好きになっちゃってるから、ダメって言えなくて困ってるんだけど?」


これって絶対誘われてるよな?いっちゃっていいやつだよな?違う?まあいいや。違ったらまた謝ろう。煩悩の塊代表・木兎光太郎、彼女のおっぱいにダイブしてきます。
むわり。熱気で溢れ返る教室内の温度が、1度上がった。