2014年地区大会のために書いた台本です。
添削前なので多めに見積もって約90分。

作者の場合は部員のみんなで何とか添削して50分くらいに縮めました。てへ

素人の未成年がていていと楽しく書きなぐったものですで、至らない点ばかりで読みづらい物かと思います。どうか容赦ください。

関係ないけど出演者の頭文字並べると「コシヒカ」になります。「リ」が欲しい!元々はリサという人物がいたのですが役者不足のため4人劇にしてくださいと言われ泣く泣く削りました。リサちゃぁああん!

あ、タイトルの読み方は「マイナスイチビョウノデキゴト」です
〜〜〜〜〜〜

−1.0秒の出来事

{出演者}全員女性
 <コカゲ> 決められた寿命の日にその人の魂を導く神。同じ役目を持つ神は何人もいるザコ神。とても喋る。いやみったらしく演技癖がある。指定がない限りは基本動き回ってる。
 <シグレ>第二の被害者。ヒザシの親友で男勝りないい子。羽根飾りがチャームポイント。
 <ヒザシ>引っ込み思案で暗くおどおどしてる。気がついたら下向いてる。転校して友達出来ず自殺。
 <カヨ>第一の被害者兼ストッパー。戦国〜江戸時代あたり?とにかく昔の人。様々な地方の方言が入り混じったような特徴的な訛りがある

{セット}
<1> 公園。遊具やベンチ等設置しても可 難しいようなら公園でなくても可
<2> 空陸の区別がつかないほどにまっ白い空間。下手に門
<3> 青や緑などお好きな色。少なくとも2とは違う色。杖のたて掛け台や立派な椅子などを設置しても可
<4> 赤紫などお好きな色。少なくとも2と3とは違う色。下手に門2

{道具}
 羽根飾り〔大きめで目立つものだと助かる。髪留でもイヤリングでもブローチでも。羽根以外のほかの小物にするなら、できるだけ軽くて目立つ物〕
服〔ブレザーとセーラー、あと人外二人の服〕
バッグ〔ヒザシの通学用〕
 ギミックナイフ〔ヒザシの自殺用〕
杖〔持ち運び出来るもの〕
門〔白の間にあるもの〕
門2〔ポールに紐を渡し、扉の絵が描かれた布をかける。もしくは、縦スライド式の扉にしても可〕


[シーン1]セット1
暗転している。
スポットでコカゲを照らす。照らされたら喋りだす。
コ「人は平等ではないが、不幸を背負わない人なんて居ない。誰だって苦しんでいる。どんなに明るくて、幸せそうで、何も考えてなさそうな人でもさ。…だというのに。ああ、愚かなり。人は自分から見た世界しか知らないんだ。だから『あの人は自分みたいに悩まない』だなんて残酷なこと思えるんだろうねぇ」
コカゲ、舞台端に寄り傍観。
照明付ける。
ヒ「もう、いやだ」
ヒザシ、心臓刺し倒れる。カッと照明赤にすると良
コ「おやおや、おやおや。出オチもいいとこだ。…まあいいさ、自分はやることをやるだけさ」
コカゲ、両腕をゆっくりと上げ手を合わせようとする
シ「ヒザシ!」
コカゲが腕を上げきる前にシグレがヒザシに走り寄り触れる
コ「あっ?へっ?」
コカゲ、言葉と同時に勢いのまま手を合わせてしまう。
コ「……あ。」
照明落とす。

[シーン2]セット2
照明付ける。
倒れるヒザシとシグレの後ろにコカゲが立っている。
ヒ「は!ここは…?」
ヒザシ目覚め体を起こすと、シグレに気付かずにあたりを見回す
ヒ「なにここ…白い…? 何もかも真っ白……というか…何も、なさすぎる…?」
ヒザシ、傍らのシグレ見つける。それまでヒザシ灯台下暗し
ヒ「シグレちゃん!?なんで…」
コ「おはよう。寝ざめ良いんだね。よっ高血圧」
おはようを聞いてヒザシ動きを止め恐る恐る振り向く。
お構いなしにコカゲはヒザシの横に出る。ヒザシ目で追う。
コ「びっくりだよ いやあびっくりびっくり。出オチにもほどがある。心臓止まるかと思ったねえ」
コカゲ、ヒザシの手を引っ張り立たせる
ヒ「え…?」
コ「いきなり死ぬんだもん」
ヒザシ、コカゲに顔むけないまま引っぱられるが
ヒ「え…あ、そうだ…私はさっき…」
コ「死にましたー♪」
ヒ「じ、じゃあ、…ここは、死後の世界…?だったら…ねえ!教えてよ!あなたはいったいなに…ッ?それに!どうしてシグレちゃんが」
コ「気が早い!なんて気が早いお嬢さんだ虫唾が走る!」
コカゲ、ヒザシを遮る。
ヒ「へ?」
コ「嫌に冷静なところにさ。虫唾。ダッシュダッシュ」
ヒ「な 何が言いたいんですか!」
コ「君はー、自分のー、…一番嫌いなタイプの死人だね。…うん。自分あなた嫌い」
ヒ「ええぇ…」
コ「死人なら死人らしく『死んだなんて嘘よ…』なり『私生きて死んでなんでいやあああッ!』なり、もっと愉快にパニクって見せてよぉ」
コカゲ、演技は両方ワンブレスで。
コ「『ここは、死後の世界…?』だなんて冷静に分析なんてしてないでさ。…つーまーんーなーいー…ゾ。…まあいいけど。つまんない子初めてでもないし」
コカゲ、言いながら舞台を歩きまわる。最後はシグレが居ない方のヒザシの横に来て ゾ で人差し指を立てる。
ヒ「あなたは…随分と悪趣味な方なんですね。それに」
コ「わかってるじゃないか。悪趣味って言われるの大好き」
ヒ「それに!失礼なんじゃないですか?初対面の相手に!それとどうしてシグレちゃ」
コ「はあいガチャガチャうるさぁい」
コカゲ手を叩きながらヒザシに背を向け少し歩く
ヒザシ、その言葉でハッと言葉に詰まる。どうして私こんなに喋ってるの?という感じで口元を覆ったり等する
コ「あ。『どうして私こんなに喋ってるの…?いつもなら…』って思ってるでしょ」
ヒ「え…!?…なんで分かったの…?」
ヒザシ、恐れる
コ「『ウソこれが私!?』なんちって。許してね。別に何もしてないから安心しなよ。ただ、自分の担当するこの区域は理性が極めて薄くなるようになってるんだよねー」
ヒ「理性が…薄く…?」
コカゲ、先ほどと同じ演技をしながら振り向き、指す
コ「『ウソこれが私!?』…そうよそれが本当のあなたよ!」

ヒ「…考える前に言葉が出てくると思ったら…そんな、仕組みだったなんて…」
コ「え何?キミ考えてから声出すタイプなんだ?」
ヒ「そんなの誰だってそうでしょ…?!」
コ「ちょっと!自分とその他大勢の存在を否定しないでくれるかな?!」
ヒ「ええ!?考えないで声とか、怖くて出せないじゃないですか!」
コ「ええ!?考えると怖くて、声出せないじゃないですか!」
ヒ「じゃあ…少なくともあなたは、考え無しにポンポン物言う人なんですね」
ヒザシ、軽蔑したように言う
コ「さてね?」
コカゲ、肩をすくめる
ヒ「え…?」
突然コカゲ、ピシッと 気を付け をする
コ「えー、さてさて問題です」※元ネタ・TOI ハスタ
ヒ「はっ!?」
コ「話を脱線させたのは誰のせいでしょうか。1.花を摘みに 2.夜空が綺麗なので散歩 3.あなたのせい」
ヒ「えっ…えっと、さ…3ばん…?」
コ「ぶぶ〜〜っ!まだ問題の途中でーす。」
コカゲ、気をつけを解く
――その後。器具にもよるが、出来れば、門の片方をメシメシッバキッというSEと共に取り去り
ヒ「ええっ!?それ…」
元のポジションに戻り 自分から のところでハスタのようにシュパッと構える――
コ「正解は、4ばーん!脱線しまくるあまりいつまでも本題に入らせようとしてくれない自分の性格のせい、でしたっ」
ヒ「えっと…あなたは…随分と自由というか…適当なんですね」
コ「じゃなきゃ やってられないの。…ま、いいや…とりあえず、自分は何者か?ここは死後の世界か?だったよね」
ヒ「あの それとシグ」
コ「あーあー!そうだねーまあ、この自分の正体を明かすかどうか。は、…今後の君次第としようかな」
ヒ「なんですか、それ」
コ「ああ!勿論君が大嫌いな、ヒューマン人間ホモ・サピエンス・サピエンスではないから、安心してね?」
ヒ「それは流石にわかります」
コ「あっそ。で、ここはどこかと。…まあ、名称でっていうならば『死後の世界』ではないね。」
ヒ「じゃあここはいったい…?」
コ「キミは煉獄を信じるかい?」
ヒ「煉獄…って」
コ「天国には行けないが、地獄に墜ちるほどでもない者達が清めを受ける場所…信じる信じないは別とするけど、つまりはそういう事さ。」
ヒ「…それって、結局は…死後の世界…ってこと、です…よね…」
コ「煉獄だってばー。…まあどうしてもって言うならそれでもいいけど」
ヒ「ならなんでここにシグレちゃんがいるの?!それにどうして…倒れたまま目が覚めないの!?」
コ「目ならとっくに覚めてるよ。キミがあまりにせっかちさんだから。ついでに自分がおちゃめさんだから☆…起きるタイミング見失ってるみたいだけど」
ヒ「えっ」
ヒザシ、シグレを見る
シ「…………う、うーん えっえーなにーここどこー」
シグレ、わざとらしく間をおいて起き上がる
ヒ「シグレちゃん!」
コ「わざとらし過ぎわろた」
ヒザシ、安心したように駆け寄る
コカゲ、小ばかにするように言う
ヒ「よかった…どこも悪いところはない?」
シ「ああ…うん」
シグレ、立ち上がる
シ「まあ…話も一通り聞いてたよ。あいつの頭のおかしさは置いといて…煉獄…か…いったいどこのファンタジーだろうな」
コ「ところがどっこい…夢じゃありません…! 現実です…!これが現実…!」※元ネタ・カイジ 一条
沈黙
コ「あれっ通じない?このネタも通じない?当店誰でもウェルカムなカジノわかる?ついでに想いを繋ぐRPGわかる?」
ヒザシ、シグレの方を向く
ヒ「ねえ…シグレ…ちゃん」
コ「あっはい通じてないですねーこれはー」
シグレ、ヒザシに体を向ける
ヒ「どうしてシグレちゃんがここにいるの…?」
コカゲ、静かに心当りあり気に2人の視界外で気まずげに顔そらす
シ「どうしてって…突然ヒザシが、あたしに遺言メールなんて送ってくるから…!」
ヒ「あ…」
シ「あたし書いてあった場所に全力で向かって、そしたら!…ヒザシが今まさに倒れるところだったんだ」
ヒ「えっ、そ、そうだったの…?」
シ「そうだよ!」
ヒ「……、」
ヒザシ、申し訳なさそうにうつむく。
シグレ、視線と身体をヒザシから外す。
シ「それで…駆け寄ったところで突然、物凄く…上に引っ張られるような感覚に襲われてそして…急に眠くなって…!気が付いたら、ここにいたんだ。どうしてだなんて…あたしが聞きたいくらいだ」
シグレ、振り返りコカゲを睨む
コ「えっ?あ〜、というか そんなことより、」
シ「そ ん な こ と よ り ? !」
コ「そ ん な こ と よ り ! ! いつまでもこうしているわけにはいかないし、いけないなぁ。なんのために呼んだのかわからなくなってしまうよ」
コカゲ、下座にある門を指差す。
ヒ「あの…?」
コ「とにかく進んでみなよ 答えはその先にある。…と、いいねぇ?」
コカゲ、肩を竦めつつゆっくりと上座側に歩く
ヒ「それ、てどういうこと…?」
コ「といってもまあ、進みたくないなら進まなくてもいいけどね〜?その時はここで永遠を過ごすだけだしさ。」
シ「お前一体何の話をしてるんだ…?」
コ「じゃ、先で待ってるよ〜」
コカゲ、振り返らずに手を振る
暗転。
ヒ「わ!?」
シ「なんだ?!」
コカゲ、二人が言い終わる前にはける。
照明付ける。
ヒ「今のは…?なんで突然暗く」
シ「おいヒザシ!あいつが居ないぞ!」
ヒ「え!」
ヒザシとシグレしばらくあたりを見回す
シ「どこに行きやがった…?なあヒザシ、あっちの方、見てみよう。もしかしたら見えない抜け道でもあるのかも…」
ヒ「う、うん」
2人、手をつなぎ歩き出す
シ「はぐれるなよ」
上手にはける。暗転

[シーン3]セット3
コカゲ、一息つく
コ「さーて、さて、さてね……うわああああどうしよう!まさかの二度目…ッ油断してたあああっ!カヨに、イザナミさまに…なんて言い訳すれば…」
コカゲ、うわああ で崩れ落ちる。
カ「貴様〜!」(イントネーションに注意)
コ「!」
カヨの声が聞こえた瞬間、コカゲ素早く立ち上がり仁王立ち
カヨ、下手から走ってくる
カ「貴様!一体どこに行っていたんですか 探しましたよ〜」
コ「はぁい ごめんよカヨちゃん相変わらずの小走り癖だねえ感心感心」
カ「さあ早くお仕事を終わらせてしまいましょう!今日はたったの1人ですよ!早く終わらせて一緒にバッタ仮面のDVD観ましょう!」
コ「あー…」
カ「さあさあ、また共に こんにちご招待するお方の元までまいりましょう!」
カヨ、足早に杖に寄り、杖越しにコカゲと杖とを交互に見る。が、コカゲは仁王立ちのまま動かない
カ「貴様…?どうかなさいましたか?」
コ「…もう行った」
カ「へ?…お1人でですか?」
コカゲ、静かに頷く
カ「そうでしたか。」
コ「そうです。」
カ「んー…コカゲ様は注意散漫で油断グセがありますから、いつも通りあてしが見張り&タイミング係しようと思ってましたけれど。…大丈夫でしたか?」
コ「大丈夫じゃ…ありませんでした」
カ「へ?」
コ「ここ数…百年くらい?とにかくキミの時以来 大丈夫だったからさあ…今回もどうせ大丈夫だろうって…油断…してましたああああ!!」
コカゲ崩れ落ち、土下座
カ「あの、貴様…まさか…」
コ「またイザナミさまにお仕置きされてしまう…ッ…うわあああああいやあああああどうしよおおおおおお助けてカヨおおおおお!!」
コカゲ、カヨに縋り付く
カ「貴様まさか、あてしと同じ方を…また作っちゃったんですかぁあああ!?」
コ「ハイそうでええええッす!!」
カ「貴様の馬鹿ーー!何のためのあてしですかーーーーっ!!!」
2人しばらく息切れし、数秒後体勢をととのえる。
向き合って立ち上がる
カ「それで…数は?」
コ「1人連れてくるところを2人連れてきてしまいました…」
カ「頭の中…どうでしたか?」
コ「うん…さっき顔合わせた時に…ちらっと頭の中のぞいてみたら」
カ「覗いてみたら?」
コ「…このまま下に戻せない感じだった。両方」
カ「両方!…どっちがまだ説得できそうでしたか?」
コ「驚くべきことになんと本来の方でした。しかも結構楽そう。」
カ「なんと、それは驚きですねえ」
コ「半ば衝動的に死んだからかなあ。…ついでの方はと言えば根強い根強い。心の支えである、本来の方の子が居ない世界なんて、生きる意味無いってさ。むしろ…こっちに残すって言ったら喜ぶかも」
カ「あらら…。ですが片方でも望みがあったのなら、それは不幸中の幸いでしょう。重要なのは誰の魂を、ではなく、人間の魂を、ですからね」
コ「カヨちゃん魂無いもんね〜。魂から無理矢理削ぎ落とされた残りカス〜♪」
コカゲ、両手でカヨを指差す
カ「はいはい。全く…すぅぐ脱線させたがるんですから…。」
カヨ、指をペシペシ叩き落とす
カ「とにかく貴様は、本来の方の説得のほう、よろしくお願いします。もう1人はあてしが。」
コ「オッケーじゃあお任せするよ」
カ「任されました! といっても、こっちに来るかは…彼女たち次第ですが…」
コ「来なかったら来なかったで…お仕置きもっときつくなっちゃうんだよねー…だから…できれば来てほしいなあー…なんて」
暗転

[シーン4]セット2
暗転。照明付ける
ヒザシとシグレ上手からきょろきょろ小走りで入ってくる。2人とも息が上がっている
シ「いねぇえええ!」
ヒ「これだけ探しても居ないなんて…それにどこも同じような景色ばっかり…」
シ「ああ。…ちょっと遠くまで行くと、この門なんでか消えちまうし」
ヒ「そのせいで思うように動けなかったね…」
シ「直線上にしかな。…もし、門が消えることに気付かずにやたらめったら動き回ってたとしたら…、」
ヒ「うん…きっともうここへは、戻ってこれなかったかもしれない」
シ「案外…恐ろしい場所なのかもな…ここ。」
ヒ「…ねえ、シグレちゃん…。」
シ「どうした?」
ヒ「…待ってるとか、言ってたよね…あの人」
シ「…ああ そうだな」
ヒ「答えはその先にある…とも」
ヒザシ、黙って門を指差すなりしてシグレに 一緒に行ってみよう の意を示す
シ「あたしは嫌だ!あんな奴の言う通りにするなんて!ヒザシはムカつかねえのかよ!」
ヒ「ムカつこうともさ!…このまま、ここに居続けるわけにもいかないよ。だって永遠に…ってあの人は言ってた。」
シ「それがどうしたって言うんだよ」
ヒ「…それ…ずっとこのままでいるなら…ずっとこのままってことだよね」
シ「いや…それは無いだろ。このままだと餓死するはず…って餓死以前にもう死んでるか。…なら、どうなるんだ…?」
ヒ「ねえシグレちゃん。…お腹…空かないね」
シ「そう言えば」
シグレ、腹を触る
ヒ「それに喉も、乾かないよね……走ってたのに」

シ「……お偉いさんの話は聞いておけって、そういうことかよ。そんで…一度従わなかったってだけで、自業自得だとか言って…再びこの門を見つけるまで…永遠にさまよう…ってところか」

ヒ「……進むしかない…よね」
シ「そうなるか…」
シグレとヒザシ、門を通ってはける。
暗転

[シーン5]セット4
カヨ、門の前に立っている
ヒザシとシグレ、上手側より挙動不審に現れ、カヨに気付かずに通り過ぎる。
カ「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました。」
ヒザシとシグレが中央まで歩いたところで、カヨ言葉を発しつつ前に出る。
シ「うおっ」
ヒ「わああっ」
カ「まずは得体の知れぬ場所だというのによくぞ、勇気を出して進んでくださりました」
シ「は、はあ」
ヒ「あなたは…?」
カ「あてしはカヨ、と申します。」
ヒ「あてし…?不思議な一人称…」
コ「その子ねー今の時代の子じゃないからさー」
コカゲ、門の布を持ち上げて登場
ヒ「えぇぇ…?!」
シ「そこそう開くのかよ!?」
コ「ほんとは一人称あてだったんだけどね、あたしとかわたしとか舌が回らないらしくてねー中途半端にあてしってなってんの」
カ「そういうことです」
ヒ「は、はあ」
コ「まあ誠意が伝わってくるからこっちのが私は好きだけどところで君」
シ「なんだよ」
コ「見てたけど。やっぱりその行動力と積極性。どこかヤケっぱちなんだよねえ」
シ「はあ?」
コ「自分なんかどうだっていい。自分を考えないように、考える隙もないくらいに、誰かに引っ付いて補助して、背を押して役に立ってでもしないと…、壊れちゃうのかな?」
シグレ、自分なんかどうだっていい で固まり、徐々に解凍
シ「そ、そんなデタラメ!」
シグレ、はっとしたように食って掛かる、が、
コカゲ、最後まで言わせずに さあて と手をパンパン叩く。
コ「さあてとりあえず、別れましょうか。カヨ」
カ「はい! では、えーと、ヒザシさま…でしたよね」
カヨ、シグレを手で指す
シ「…シグレです」
コ「逆」
カ「おや、それは失礼いたしました」
カヨ、頭を下げる
カ「シグレさまは一足お先に、こちらへどうぞ」
カヨ、シグレに手を差し出す
シ「こちらへって…ヒザシをこのまま置いて行けって言うのかよ!?」
カ「大丈夫大丈夫、何も取って食いやしませんよ。変な気があっても、起こさないのがあてしですから」
ヒ「あるの!?」
コ「自分も!そっちのケはありますけど、犯さないのが自分ですから」
シ「あるの?!」
カ「ほら、こうおっしゃっていることですし安心ですよ」
カヨ、シグレの手首を掴む
シ「お、おう…って全然安心できねえんだけどッ?!このッ…放しやがれッ」
カ「まあまあ まあまあ」
カヨ、そのままシグレを引っ張っていく
ヒザシ、追いかけようとするが、コカゲが立ち位置も視線も変えないままヒザシ(手とか)を捕まえる。
ジグレとヒザシ、各々振りほどこうとするがビクともしない
シ「くそっ…なんでびくともしねーんだッ…」
カ「あてしも今は、人間じゃあありませんからね。…ほら、そろそろカンニンしてください?」
カヨ、シグレの額に触れる。シグレ抵抗をピタリとやめる。
シ「なっ」
コ「観念」
カ「舌が回らないんですよぉー…」
カヨ、シグレから両手を放しながら言う。
シグレ、動かない
ヒ「シグレちゃん…?」
シ「かッ…身体が…言うこと聞かねえ…!?」
ヒ「えっ…!?」
カ「さーホラ、行きますよー」
カヨ、門2の布を持ち上げる
シ「ちょ、いやだって、ひ、ヒザシ、ヒザシーーーッ!!」
ヒ「シグレちゃーーんッ!!」
ヒザシ、必死で手を伸ばす
だがシグレ、叫びながらも大人しく布をくぐる
カヨ、続いて布をくぐったところで
コカゲ、ヒザシから手を離し指パッチン
ヒザシ、解放と同時に門へ掛け布をくぐる。が数秒で戻ってくる。
ヒ「あれ?」
ヒザシ、コカゲと目が合うなり布に引っ込む。が数秒で戻ってくる。
ヒ「えっ…どうして…」
ヒザシ、もう一度行こうとする
コ「真っ黒い通路があったでしょ」
コカゲ、それを見かねて声かけながら手招き
ヒザシ、迷いながらも出てきて立ち上がる
コ「その真っ黒い通路をまっすぐ行くと、光が漏れる布があって、そこを行くと、…ここに戻ってきてたでしょ?」
ヒザシ、うんうんと頷く
コ「諦めなよ。もう通じないから」
ヒ「そんな……」
コ「さ、そろそろ本題に入らせてもらうよ。いい加減ね」
コカゲ、パァンと大きく手を叩く。
ヒザシ、それにビクッとする。
ヒ「…本題?」
コ「まずは、…よく来たね。前置きはー…そうだねえ。うん…これかな。…世界は、君に少しだけ優しくなかった」
ヒ「…え?」
コ「君。周りに耐えかねての自殺だったんでしょ?それはもう苦しみ恐怖し苦労し…泣いて、吐いて、叫んで、嘆いて、飲み込んで。というか思い込み過ぎだァあんた」
ヒ「なに 突然…!」
コ「だってそうじゃない。たかが転校したくらいでさ、…たかが、クラスで浮いてる日が続いて…たかが、トイレに入っていたら女子が入って来て『ヒザシ?とか言う奴ずっと下向いてるし何も言わないしだんだんウザったくなってきちゃったよねー』『どうする?処す?処す?』って会話聞いちゃただけで。」
コカゲ、一人二役芝居もしくは誰かの声録音したもの流す
ヒザシ、怒りを溜めている感じでだんだん俯き拳を握る
コ「ねーえ?た か が それだけで自害しちゃうだなんて、ねえ?」
コカゲ、それをさらに面白がるように言う
ヒ「たかがたかがって…!ッわたしにとっては…!『そんなこと』でも『たかが』でもないのに…っ!」
ヒザシ、崩れ落ち泣き出す
コ「ほんと人って思った通りに動かないねー…」
コカゲ、えー…というテンションで間髪入れずに面食らう
コ「そこは、怒り心頭する所でしょーが。…煽っていくスタイルだったってのに」
ヒ「なによ…それぇ…」
コ「わーわーわー。もー、ごめんって、嘘だよ嘘嘘。ね?」
ヒ「………」
コ「…でも気負いすぎだってのは本当だよ。人は君が思ってるほど怖いものじゃあ無いんだよ?」
ヒ「分かってるよそんなの…わかってる」
コ「うそつけ。じゃあなんで動かなかったんだよお自分から」
ヒ「………だって、私みたいのが話しかけてもどうせ…変に思われるだけだもん。どうせ相手にしてくれない」
コ「なんでそこで決めつけちゃうかなー。他人の行動の予想なんてだいたい外れるもんよ?諦める前になんで動いてもみなかったんだい」
ヒ「そんなこと…できないよ 出来る訳が無い…それに今更そんなこと私に言ったところで何になるのよ…私もう生きなくてもいいんでしょう?ほっといてよ!」
コ「いやちょっとした手違いがあって。君あとで生き返ることになってんの」
ヒ「は!?」
コ「だから、このままの君でいてもらっちゃあ困るのよ。だってどうせすぐ死に直すでしょ?それじゃあ困るんだ」
ヒ「なんでよ…それの何が悪いのよ…」
コ「一度剥がした魂が肉体にしっかり定着するのに5年かかるの」
ヒ「5年…!?」
コ「で、定着しない間に死んだらまた地上に戻って魂定着やり直し。」
ヒ「…なにそれ…なにそれ…」
コ「ちなみにこの場合、寿命では死ねないから、こまめに死ねば実質不死。やったね長寿でギネス狙えるよ!」
ヒ「そんな…い、嫌…いやだ…いや!もう楽になっていいじゃない私もう肩をすくめて生き続けたくなんかない…だから…死んだのに!それなのに…なんで…ッ!いじめられるために生き返るだなんて!私絶対嫌ッ!!」
ヒザシ、嫌嫌しながら、もしくは言いながらコカゲと距離をとる
コ「ハイハイ。知ってます知ってますっと。…ねえ臆病な弱虫ちゃん、いいこと教えてあげようか。」
コカゲ、優しい声
ヒ「何よ…!」
コ「もう駄目だって、できないって思ったときはさ、一度だけ頑張ってみるの。きっとなんとかなるよ。それで何とかなったらさ、2回目頑張ってごらん。それを続けてみるの。そうすれば…きつい事や嫌なこと、できるようになってくるよ。それが習慣になったら、もうしめたものさ。きっと新しい世界見えて、価値観変わってくるよ。だからさ、ね、一度だけ 勇気持ってさ、自分から動いてみなよ」
ヒ「…綺麗事言わないでよ!!人間でもないくせに!人間の苦痛も、苦悩も挫折も!味わったことなんかないくせに!!」
コ「お前M岡S造なめんじゃねえぞコラ!!」
ヒ「M岡S造!?」
コ「さんを付けろよデコ介野郎!!」
ヒ「あなただって呼び捨てだったじゃない!」
コ「(無視)彼のことはもちろん知ってるよね。テニス選手の」
ヒザシ、間をおいて頷く
コ「何年も頑張って努力して頑張って…ようやく世界トッププロの仲間入りを果たしたその矢先に、膝や足首損傷したり重い病気にかかったり…そんな人が苦悩しないわけ、挫折しかけないわけ、ないでしょ。…今の言葉は私じゃなくて彼の言葉なんだよ。苦悩した人間の言葉だね」
ヒ「でも!彼と私は違うじゃない!彼が模範的だからって…!私に!彼になれって言うの!?私は私でいちゃだめって言いたいんだ!あなたは!!」
ヒザシ、怒りながら舞台中心のあたりまで歩いてくる
コ「どんだけ素直で固い頭してんだお前!?もっとやわらかく!やわっこく!」
コカゲ、心底驚いたように数歩下がり、もっと のとこからヒザシに歩み寄る
ヒ「や…やわっこく…?」
コ「私は別に今のあんたを侮辱したい訳じゃあ無いの。」
ヒ「…」
コ「…勿論、行動したからって実るとは限らない。けど、行動しないで結果が付いてくる方がおかしいんだから、とにかくしてみろってこと」
コカゲ、言いながらヒザシの周りを一周する
ヒ「でも、私だって頑張って」
コ「外交的に頑張れって言ってるのー!何頑張って自分のアラ探し散々した挙句自殺してんの?自殺の勇気を人に話しかける勇気に回せって言ってんだけど」
ヒ「だって…!お父さんもお母さんも言うんだもん!辛いときはもっと辛い人のことを想えって!尻拭いをしてくれる人、土日や祝日にも働いている人、無償で何かをしてくれる人…どこか自分の知らないところで死ぬような思いをしてる人…。どんな立場で…どんな事情があろうとも…当たり前なんかじゃない…それを当たり前にするなって!それでもって…自分は幸せで恵まれているって!」
コ「一理あるね」
ヒ「でしょ!?だからこそッ…私…なにしてるんだろうって…なんで…なんで私なんかがこんなに恵まれて…私、みたいなのが、五体満足で衣食住事足りて生きてるんだろうって……」
コ「タハーッ!素直で純粋すぎらぁ。近年稀。今の世の中じゃあ死ぬわけだ!…なんて生き辛い世界に住んでいることでしょう。その思考やめなよ」
コカゲ、1行目と2行目は全く違うテンションで。
ヒ「な…だって…真実じゃない!」
コ「まーねー確かに…見えない誰かを思う…正しい頑張り方の一つではあると思うけどさ。でもこの考え方、どう考えてもあなた向けじゃあないよ。」
ヒ「私向けじゃあない…?なら…!私はどうしたらいいのよ!どう生きたらっ」
コ「世の中はこんなにも厳しい。」
コカゲ、ヒザシに大きめの声で遮る
ヒザシ、コカゲに視線を送る。
コ「世知辛い。冷たい。世界が優しくない?むしろいつの時代もそれが当然だ。だからこそ、あんたは自分の事だけ考えりゃあいいの。」
ヒ「…自分の…事だけを?そんなこと!許されるわけ」
コ「いや何も自己中になれって訳じゃあ無いよ」
ヒ「え…?」
コ「辛いなら、自分をもっともっと褒めてやればいいってこと。もっと辛い人がーだなんてヘンに我慢しないでね」
ヒ「自分を、褒める…?」
コ「そうさ。『こんなにも辛くて嫌なことをやる自分はとても素晴らしい!』という具合にね。考えるクセをつけるのさ」
ヒ「ええ…」
コ「いやもちろん昨日今日で出来たら逆に問題だよ。」
ヒ「でっ ですよね…!」
コ「うん。だから最初は別に偽りでも構わない。とにかく毎日毎日、意識したときでいいから、とにかく自分を健気だと、強いと、美しいと。なんでもいい。褒め称えて抱きしめてさしあげなさい。継続は力なり。いつの間にかクセなってるよ。」
ヒ「なんだか…ナルシストみたいですね」
ヒカゲ、面白そうだけど抵抗ある…といった様子
コ「そうとも!隠れナルシストになれっつってんの。」
ヒ「隠れ…ナルシスト…?」
コ「ようは人前で『私最高!』とか口走らなきゃあいいの。」
ヒ「流石に私もそこまではやらないよ?! それにきっと…私には無理だよ。だって私なんかより素敵な人見かけたらきっとすぐ…惨めな気持ちになっちゃうと思う…」
ヒザシ、だんだんと俯く
コ「バカだなあ」
コカゲ、即答
ヒ「え」
ヒザシ、思わず顔を上げる
コ「素直に周りを褒めて、賞賛すりゃいいだけの話でしょ。で…そんな自分をもっともっと褒めてやるだけ!」
ヒ「あ…」
コ「ついでに言うと、気に入らないとか劣ってるって思う人が居たなら、それはそれで 自分より下だなと大いに見下せ!」
ヒ「みっ…見下す!?そんなことしちゃっていいの?!」
コ「存分に。心の中だけでなら…好きなだけどうぞ?」
ヒ「心の中…だけでなら…?」
コ「そうさ。その代わり、表面ではそういう人も褒めとくこと!そんで『格下を賞賛してあげる自分はなんてえらい!なんて優しい!』って自分をもっと好きになればいいのさ」
コカゲ、ヒザシに背を向ける
コ「…他人を褒め称え、それ以上に自分を褒め称え、明るく笑え!心の中は自己愛愛愛最愛でもいいんだよぉ!どうせ誰にもわからない!!」

ヒ「ぷ あはははっ!」
ヒザシ、しばらく笑いこける
ヒ「はははっ…はー。……素敵!イイかも、そういう生き方なら…楽しそう!」
コ「だろう?」
ヒ「うん!…そっか。私もう一度生きてみてもいいかも!」
コ「それはよかった」
ヒ「でもどうしてだろう…一見 利己的にも思えるし…いままでの私とは全く違う思考なのに…その生き方が、ストンと私の中に入ってきちゃったのは…?」
コ「そりゃそうだ。心の奥の奥…自覚できないくらい奥の方で…君はそういう生き方を望んでいたんだもの。」
ヒ「嘘!?」
コ「嘘だと思う?」
ヒザシ、少し間をおいて首を振る
ヒ「…本当に見透かされてるんですね…潜在的なところまで」
コ「すごいでしょ?」
ヒ「はい」
コ「よろしい!…では最後に一つ!『私はこういうふうに生まれてきたんだ。これが私なの』って言う考えを頭に入れておきたまえ!」
コカゲ、言い終わりに指をパチンと鳴らす
ヒ「ふふっ」
コ「さあ道はつなげたからシグレッちのとこに会いに行きなさい!」
コカゲ、布をめくり上げる
コ「お先にどうぞー」
ヒ「あ、ありがとうございます…」
ヒザシ、門2をくぐりはける。
コカゲ、布をおろす。
コ「……やーん!最近の子ったらチョーローイー!バーカーワーイーイー!」
舞台中央まで歩く
コ「最初はガチで嫌いだったけどねー!まるでー!……昔の私を見ているみたいで」
コカゲ、突然声のトーン下げて暗くなる
コ「泣き虫弱虫落ちこぼれ。一人前になって一番に切り離した、恐怖に弱気に自己嫌悪。やっと捨て去れたと思ったのに、私が私である限り…何度…何度切り離しても!…無限湧き…だなんて。それに感情だから実態無いし、邪魔にならないし、管轄ごとに次元が違うから大丈夫かなって、切り離したモノその辺に捨て続けた結果…。突然、人間の理性を脆くするとかいう訳の分からない害悪に変異しちゃうし…おまけに…臭いッ…私にだけ、臭いし…ッ」
コカゲ、一瞬 袖で鼻を覆う
コ「心、覗くのだって!大っ嫌い!…私…本当は、人の本性なんて見たくないのに…なのに…皆して本性丸出しにして…気持ち悪い…ッ意味わかんない…ッ……っと。あーん脱線。というか私は自業自得ー!」
コカゲ、明るくなる
コ「つまりは訂正!私…じゃなくて自分、ヒザシちゃん好きーーっ!!というか独り言激しいなー自分ーー!」
というか というところから歩き出し、門をくぐり、はける。

[シーン6]セット3
シグレとカヨが杖の前に立っている
コカゲとヒザシが上手から入ってくる
ヒ「シグレちゃん!」
ヒザシ、シグレに駆け寄る
シ「ヒザシ!…早かったんだな 意外と」
カ「お疲れ様です貴様…と言いたいところですけど。もう少し遅くても良かったですのに…せっかくシグレ様とバッタ仮面のDVD見ようと思ってましたのに」
コ「カヨ?暇があろうと仕事は仕事でしょうが」
ヒ「DVD?って…それを買うお金は一体どこから…?」
カ「それはまあ神によりますねえ。各々の神様が各々の手段で取っていますから」
ヒ「あなた神様だったんですか!?」
ヒザシ、コカゲに目を向ける
コ「あれー?言ってなかったっけ?」
ヒ「初耳です!」
コ「そっかそっかそれはごめんよー」
ヒ「だから心の中読めたんですね…」
コ「フフ…で、だ。お金の話だけど、自分なんかは日本のコンビニのレジさんと仲良くさせていただいてるよ」
ヒ「それ…まさか泥棒…」
コ「そうだよー☆」
カ「違いますでしょう店員さんが気付かずお釣りを多く渡したときに発生する余分なお金を、ランダムで、必要なだけ転送させているのです」
ヒ「いや それもなんか…うーーん」
シ「それ泥棒とどう違うんだろうな?」
コ「なんだよー良いじゃないか、片っ端から全部ってわけじゃあないんだから。お賽銭だよお賽銭ッ。それに必要なだけ取ってる訳だし、現に誰しも一度くらいは、お釣り多いことに気がついてニンマリしたことあるでしょー?」
ヒ「むしろ申し訳なくて次から行きにくくなっちゃうけど」
コ「ええー…まあそうお固いこと言っているとぉ脳味噌石化どころか砂になって飛んでいってしまいますよぉー?」
ヒ「えーっと…?」
シ「どっから出てくるんだそんな言葉」
コ「さーぁ?まあ自分は社も賽銭箱も無い、認知度皆無な神さまではございますけどぉ、人間とは格が違うことに変わりは御座いませんからねぇ〜別に理解出来なくても何も恥ずかしくはないのでございますよ。はっはっは」
シ「馬鹿にしてんだろ」
コ「そうだけど?」
ヒ「…私この人嫌い」
コ「あ〜んごめんよ〜☆」
カ「貴様、いい加減本題に移ってくださりませんか。」
コ「わかってるよぉ。でもわざわざ自分から自分の失態打ち明けるなんてさぁ…勇気いることだと思うんだよ。自分はね」
カ「はあ…もういいです。あてしからヒザシさまにお話ししますから」
コ「わあいカヨちゃん優しい!」
ヒ「お話しすること…?」
カ「ええ。とても大切なことです。まずは、そうですねぇ…。」
カヨ、少し考える
カ「今この空間には、シグレ様とヒザシ様と…お2人、いらっしゃいますでしょう?」
ヒザシ、頷く
カ「でも実は、本来ここに居るべきなのはヒザシ様ただの1人のはずだったのです」
ヒ「え?でも…シグレちゃんはここに…」
カ「そう。本来ならば…ヒザシ様だけがここにいらっしゃり、先ほどの紫の間の門を介して、然るべき場所に送り出し、そこで清めを受けるはずでした…」
ヒ「ここで清めをうける訳じゃあ…無いの?」
カ「ええ。…ここはむしろ、通路のような場所です。」
ヒ「通路…?」
コ「たとえるならどこでもドア、かなあ」
カ「知りません。…ええっとですね、まず、招かれた魂はここから清めの場へ送られます。」
ヒ「ここから…」
カ「ええ、この杖を使って。」
ヒザシ、杖に関心を向ける
カヨ、それを見て、語りを聞かせるように続ける
カ「…そしてそこで精神と自我の清めを受けた魂はまたここへ戻ってきて、そしてまたこの杖を使い、その魂を死後の世界へと導くのです。ちなみに転生したい方は死後の世界に専用の場があるのでそこに行けば好きなときに出来ます。」
ヒ「そうなんだ…」
シ「今回も例に漏れず、そういう段取りだったはずなのになあ。…こいつがミスしたおかげでなーぁ…?」
コ「うるさいなあ。誰しも間違いくらいは起こすものだろう」
カ「貴様?」
カヨ、コカゲを咎める
コ「はぁーい。間違いを認めるのもまた強さでーす」
ヒ「…ミス?」
コ「肉体から精神を取り出すときは同種族が触れてちゃだめなんだよ」
ヒ「どうして?」
カ「一緒にこっちまで連れてこられちゃうんです。触れてた人の魂が。」
ヒ「てことは、シグレちゃん私に触ってたの!?」
コ「そうなんだよ。突然駈け寄ってきて流れるように抱き起そうとしてくれちゃって。…そのせいで連れてこられちゃったの」
シ「おまえが勝手にしくったんだろうが!」
コ「はいはい悪うござんした。」
カ「貴様は、日ごとに導くべき魂の数が定められているのです。今日は1人…だから」
コ「1人多い。だからどっちかには地上に戻って貰わないといけないのよ」
カ「検討の結果、ヒザシ様を地上に戻し、シグレ様の魂をお導きするということになったのです」
ヒ「は…?」
カ「つまり、ヒザシ様のみが生き返ることになりますね」
ヒ「なんで?、…なんでそうなるの…?」
コ「心の中のぞいてみた結果だけど」
シ「そういうこった。あたしは、ヒザシに生きて欲しいんだ。それに、ここに来たってことは…生きる希望を持ったってことだろ?なら応援するしかないじゃないか」
ヒ「バカ言わないで!シグレちゃんは無関係じゃない!勝手に死んだのは私の方なんだよ!?」
シ「いいんだよ」
コカゲ、目立たないように、カヨの肩を叩き手を振り下座にはける。
ヒ「よくない!それなら…私…やっぱり戻りたくない!だって」
シ「ヒザシ!」
ヒ「何よ!」
シ「下には下が居る。それを知ってるくせに、…お前はいつも自分の卑下ばっかだったよな?」
ヒ「へ…」
シ「自分が劣ってるって言いまくってさあ…。え?てめえがゴミクズなら、てめえと同等のあたしもゴミクズか?てめえよりちょっとできる奴はなんだ?ゴミか!?クズか?!」
ヒ「ちが…」
シ「んで?てめえ以下の奴は、存在意義が無いってか!?なあ楽しいかよ…?そうやって自分より同等以下の奴ら貶して罵って…そんなに楽しいかよ!?」
ヒ「違う!なんなのよいきなり…!それに私、そんなつもりで言ったんじゃあない!」
シ「同じことだろうが!よく言いやがる!」
ヒ「自分に自信があるシグレちゃんには、私の気持ちなんてわからないよ!!」
シ「無理やり笑顔つくって明るく振る舞ってバカやらなくても自我保って生きていられるような!強い心持つ奴にあたしの何がわかるっていうんだ!!」
ないよ から遮るように、間髪入れずシグレ叫ぶ
ヒ「え…?」
シ「…ヒザシさあ、あたしのこと…あたしの不幸のこと…知らないよね。だって話す前にあんたが卑下始めてんだもんね。あーまったくそんなことないよって何度言わせる気なんだろうねあんたは」
ヒ「そんな!シグレが言わなかっただけじゃない」
シ「自分を底辺だとか生きる意味ないだとか言ってるやつ相手に不幸自慢しろって言うのあんたは?」
ヒ「………ッ、」
シ「あたしの家庭…外から見れば仲の良い立派な家族だけど。…内側は昔っからバラバラの無茶苦茶だったんだよ。」
ヒ「え…?」
シ「世間体を気にしてか、離婚の気配もない。…だからタチが悪い。家ん中はいっつも険悪で…息がつまる。家族そろってご飯食べた事なんて一度もない!今も昔も1人で食べるのが当たり前。家で出されんのはカップ麺かコンビニ飯のみ」
ヒ「………そんな」
シ「喧嘩に巻き込まれることなんてのはしょっちゅうだ。父さんも母さんも、お互いが『あいつの血を引いてるから』だなんて言ってさ、あたしのこと出来損ないって…無能な子だって言うんだぜ?」
ヒ「なにそれ…」
シ「どんな決心や夢を口にしても…指差して笑ってハイおしまい。バイト始めたっつっても給料入るまでまったく信じてくれなかったし…給料入ったら入ったで、勝手に財布から抜き取ってく!文句の一つでも言えば…布団や私服は砂まみれときたもんだ…! …暴力ふるってこないことだけが救いだよ」
コカゲ、こっそり戻ってくる
ヒ「なにそれ…なによそれ!知らなかった…そんなの、私知らない!あんなにやさしくて仲よさそうなおじさんとおばさんだったじゃない…!そんなの嘘でしょ…?今即席で作った」
シ「嘘なもんかよ!!」
カ「嘘じゃないですよ。ヒザシ様が遺言メール送信しなかったら、シグレ様も今頃死んでいましたし」
ヒ「え…?」
シグレ、俯く
コカゲ、そんなシグレの頭をポンポンする
コ「何年の付き合いだろうと…言わなきゃわからないんだよねえ」
ヒ「何…何を言っているんですか」
コ「分かれる直前に自分、シグレちゃんに言ったじゃん。誰かに引っ付いてないと壊れちゃうのかなー?って」
コカゲ、言いながらヒザシに近寄る
ヒ「あ…」
カ「シグレ様は、…常にヒザシ様のことを第一に考えることで、自らの心苦しさを打ち消していたのです。…ですが、ヒザシ様は先日…転校なさってしまった…」
コ「依存元が遠ざかって、ろくに世話も焼けない。新しい依存元も見つからない。…つまり?」
コカゲ、言いながらヒザシを指す
ヒ「つまり…自分のことを考える余裕が…出てきちゃった…?」
コ「よくできました」
カ「…それに耐えかねて、シグレ様は近くで一番高いマンションの最上階に登り」
シ「その手すりを越えようとしたところで、ヒザシの遺言メールが届いたっつーわけだよ」
シグレ、顔を上げカヨの言葉に続けるように言う
ヒ「シグレちゃん…」
シ「分かってほしい。あたし…生き返りたくなんかないんだ。」
カ「というかもうすでに、…シグレさんの魂は貴様が持って行ってしまいましたから生き返りようがないんですけどね」
コカゲ、手を上げる
コ「はあい!後でツラ貸せ言われちゃいました☆」
ヒ「えっ」
シ「いいんだ。あんな家戻るくらいなら、ここで永遠を過ごす方がまだマシだ」
コ「マシってなんだよ失敬な」
ヒ「永遠…?」
シ「あれ、聞いてないか?…まあ、長くなるから詳細は割愛するけど、あたしみたいなケースで連れてこられた魂は、清めを受ける資格がないらしいんだ。」
コ「でも、魂そのものはイザナミ様に提出しなきゃいけないのよ」
カ「だから、魂そのもの以外のもの…人格やら記憶やらをこっちで無理矢理削ぎ落とすのです。」
コ「ちなみに提出した魂は完全に初期化されて、作ったばかりの新しい魂と同じように扱われるよ」
ヒ「そうなんだ」
シ「で、その削ぎ落した感情やらなんだが、こっちに元の肉体持ってきて、そいつに収納しなきゃいけないんだ」
ヒ「え?」
コカゲ、おもむろに杖に手を置き目を閉じる
シ「そうしないと数時間でこいつみたいな位の低い神を簡単に溶かしちまう酸の霧に変異するらしくてさ」
ヒ「へー…って、あれ?そしたら…地上に死体は残らないってこと…?」
シ「ああ。だからあたしはもしかしなくても、行方不明扱いになるだろうな」
ヒ「そっか…」
シ「で、そうした場合、あたしはこのカヨと同じ存在…つまり永遠にこいつの世話になる…ってわけだ」
コ「お前が創ったんだからお前が面倒見ろって言われててねー」
ヒ「同じ存在…?てことは」
ヒザシ、カヨを見る
カ「ええ。あてしもシグレ様と同じ経緯でここに居る、正真正銘の元人間でございます。ただ、ポジション的にはヒザシ様なのですけどね」
ヒ「そ…そうなんだ」
コカゲ、目を開き杖を手に持つ
コ「よし…杖の充電完了ー。これでヒザシちゃんをいつでも地上に戻せるよ」
カ「おお!では…突然で申し訳ないですがお二人ともお別れを。」
ヒ「えっえっ…えっとあの」
ヒザシ、突然のことに狼狽える
シグレ、ヒザシの手を取る
シ「ヒザシ。…なんつーか、もう2度と会えなくなると思うけど、だからってアレコレ言うのは…あたしのガラじゃあない。だからさ、これだけ言うよ。」
シグレ、ヒザシの手を放し一歩引く
シ「…ありがとう」
ヒザシ、シグレの手を掴む
ヒ「シグレちゃん…!そんな、私こそ!シグレちゃん…ううん、シグレ!いままで…本当にありがとう!私、絶対忘れない!シグレのこと、一生、忘れないから!!」
シ「そっか。…ありがとう。サヨナラ、ヒザシ」
ヒ「うん…サヨナラ、シグレ」
ヒザシ、シグレから手を放し、数歩引く
ヒ「…サヨナラ」
コ「それじゃあいくよ。せーのっ」
コカゲ、杖を振り上げる
同時に色照明のみになる。青色黄色と変化し暗転。色変更可

[シーン7]セット1 エンディング
自殺一秒前のところで意識が戻る
ヒ「は! …私…? あ…、そっか」
ヒザシ、ペチペチと頬を叩くかつねる。
ヒ「痛い。私、いま生きてる…んだ…」
ヒザシ、きょろきょろとゆっくり立ち上がり、やがて空を見上げる
ヒ「…シグレ!私…あなたの分まで生きるから!頑張るから!!…だから…たまに、頑張ってる私を見に来て欲しいな…!」
ヒザシ、言い終わると笑いながら上手へはける。
シグレ、下手からヒザシの鞄の横まで歩いてくる
シ「言われなくても見守ってるよ。あたしの一番の親友」
シグレ、髪飾りを外し鞄の上に置き、下手にはける
ヒ「バッグ忘れたーー!」
ヒザシ、鞄を取りに戻ってくる
ヒザシ、が鞄にたどり着く前に、暗転

[シーン8]セット3 エンディング
コ「シグレ…これであなたは自分の所有物となったわけだ」
シ「ああ…不本意だがな」
コカゲ、偉そうな態度から一転。土下座
シ「はっ ちょっおい」
コ「ごめんなさい。…自分、シグレとその友達のこと、散々侮辱した。後悔している。どうか許してほしい」
シ「はっ…はぁッ?!一体どんな風の吹き回しだよ?!」
カ「あんね、あんね、コカゲは実は、かなりの悪ぶりたがり屋さんなんよ。でん本当はとっても優しくて素直なお人なん!」
シ「お、おう…?そうなのか…というかお前、突然言語めちゃくちゃになったな」
カ「ん?ああ、仕事でコカゲといろんなとこまわるうちにー、ごちゃごちゃになってしもたん!」
シ「ええーあたしもいずれごっちゃになんのかなあ…?」
カ「さあ?…そんなことより、あてからも頼ん。堪忍したってや」
シ「あ、あーまあ、謝るなら許すよ、コカゲ」
コ「本当!?ありがとう!!」
コカゲ、立ち上がってシグレの手を取る。
シグレはそれに戸惑う
コ「改めてこれからよろしくお願いするよ!」
シ「お、おう。 ……よろしく」
コカゲ、嬉しそうに頷く
カ「あてのことも、これからよろしくね」
シ「ああ、よろしく」
コ「それじゃあ早速遊ぼう…と言いたいところだけど自分は…これから…これから…イザナミさまのお仕置きターイムをを受けてこなければなりませぇえんちっくしょうぅううわあああんいやだぁあああーー!行って来まーーす!」
コカゲ、叫びながら歩いて退場
カ「いってらっしゃーい」
シ「い、いってらっしゃい…」
シグレ、カヨを見る
カ「じゃあその間、バッタ仮面のDVD一緒に見ぃひん?」
シ「ああ、そ そうだな」
シグレ、コカゲの去ったほうをちらちら見る
カ「もー!コカゲなら大丈夫やってー!ちょっと丸1週間ほど地獄刑全種類体験ツアー受けてくるだけだから」
シ「おいそれ」
カ「大丈夫!あてのときは帰ってきてしばらく 有難う御座います と 申し訳ございません しか言えなくなって叩くと喜ぶ程度に精神やられてただけだったから☆」
シ「おい待てそれ全然大丈夫じゃないだろおいィイイイイ?!」

閉幕

〜〜〜〜〜〜

高校3年生のときに(執筆サボり期間含めて)1か月程度で仕上げた一作です。

伝えたいことは、「どんな人でも、不幸を背負い苦しんでいる」という…最初コカゲちゃんが言っていたことそのものです。まさに出オチ(?)

…一応葛藤をテーマに書いたはずなのですが葛藤シーンまったくないですね。…アレレー(滝汗)

『両親』という存在がなんだか悪者にされてしまっていますがまったくわざとではありません。作者が反抗期とかそんな訳でもありません。ぶっちゃけ部員の後輩に言われて初めて気が付きました!わはは!

あ、どんな人でも不幸を背負い苦しんでいるといえば、判り辛かったと思いますがカヨは昔自殺してます。何があったんでしょうね!?風俗に売り飛ばされちゃったのかな?!それとコカゲとヒザシがお話ししてる一方そのころのカヨとシグレの様子も気になりますね!……いや…書こうとは思ったのですが尺的な意味で本当に収集付かなくなると思ったので書きませんでした。
同じ理由でボツにした設定で、コカゲは既婚者(上の位の神の、9人妾の1人)というのがあるのですが普通に収集が付かな(ry)わはは!

タイトルについては、結果として、ヒザシが自分を刺す1秒前に目を覚ました、ということになったのでこのようなタイトルにさせていただきました。…うーん説明しがたいというか文字での説明難しい…。…図にしてみればわかりやすいかも。
正直「コシヒカリ」とかいう全く関係無いタイトルにしたかったです


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