手配書を見た時から、何故だか無性に惹かれた。
何でこんなに笑顔なんだとか、どうして被っているのが麦わら帽子なんだとか。
自分とそんなに変わらない懸賞金に、随分と新聞を賑わせている破天荒ぶりとか。

眩しい程の天真爛漫な笑い方に、相容れる事は無いと思っていた。
しかし些細な偶然で知り合ってから、妙に懐かれてしまった。

一方的な強引さは次第にエスカレートして、時々いきなり目の前に現れたりする。
そんなわけで、いつまで自分は理性を保って居られるだろうかと考えてみる。


「……なぁ、」


むぅ、と唸って不服そうにルフィは眉間を寄せた。


「そんなに俺が嫌い?」



んなわけあるかよ、と思いつつも癪に障るのでキッドは返答をはぐらかすように視線を逸らした。
大体、何なんだこの状況。

先刻。
キッドが自室でくつろいでいると、コンコンとドアをノックされた。
誰だ、と言っても返答が無い。面倒くせぇな、と思いつつドアを開けると、居るはずのない人物が満面

の笑顔で立っていた。
反射的に急いでドアを閉めたものの、素早く部屋の中に入ってしまった麦わら帽子の好敵手と対峙して

キッドは嘆息した。
追い出そうと近付いたら、瞬時に伸びた腕が巻き付いてしっかりと拘束された。


最初の襲来は、そういやいつだったか。
いつだってコイツは突然強引にやってきては、散々掻き乱して帰っていく。




「いい加減離せ」
「やだ」

とんだ駄々っ子だ。
バランスを崩して、すぐ近くにあったソファに座り込んだ。
なおも拘束を緩めない襲撃者を怪訝そうに見上げると、黒曜石の鋭い眼光に捕らわれた。


「だってキッド、何度も言ってるのに分かってくれねぇんだもん」

口の端を上げているが眼があんまり笑っていない。
じりじりと近付いてくる顔に、怯んだように精一杯の抵抗をしてみる。
多分、結局は拒む事なんか出来ないのは充分に解っている、
それでも簡単に誘いに乗らないのは、素直になれない天の邪鬼な性格のせい。


「……なぁ、キッド」

ひどく優しい声色で耳に囁く恋情に。



「……大好き。」

どんな表情をしていいのか解らない位に嬉しいと思ってしまう。

惚れた方が負けだとよく言うけれど。
恐らくずっと前から負けていたのだ。

「麦わら…、」


観念すれば、ルフィは満足そうに笑って触れ合う位に顔を近づけた。


無性に惹かれた。焦がれた。
挑戦的で扇情的な圧倒的な赤色に。
欲しい、と思ったら、何も考えず省みずとりあえず行動に移していた。
目下、問題は体格差なのだが、いかんせん仕様が無い。
ひとまず今は、至福を味わって手に入れた極上を頂こうか。



ようやく大人しくなって、口付けを受けてくれたキッドが余りに可愛くて、ルフィは抱き締める腕を少しだけ緩めた。
離すつもりは、更々無い。




end






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