※兵助が変
四年の終わり、私ははっちゃんに告白した。
軽蔑されて、友達として隣にいれなくなることも覚悟してた。
でもそんな私の決意とは裏腹に、はっちゃんはあっさりと想いを受け入れてくれた。
「じゃあこれからは恋人同士ってことで。改めてよろしくな!」
そう言って笑ったはっちゃんは、誰がどうみても男前で、告白した私のほうが真っ赤になってしまった。
「ほら兵助、豆腐やるよ」
「兵助今暇か?ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど…」
「助けてくれ兵助!宿題でどうしても分からないところがっ!」
五年にあがってから、はっちゃんと過ごす時間が格段に増えた。
というか、はっちゃんが話し掛けてくれる回数が増えた。
これは恋人効果なのだろうか…
必要以上にひっついているわけでもなく、本当にさりげなく一緒にいる。
私ははっちゃんに話し掛けられるたびにこの上なく気分が高揚している。もういっそ今死んでも後悔はしないくらいに。
でもはっちゃんは至って普通。
意識しているのかすら分からないくらい当たり前に振る舞っている。
もしかして私だけ?
恋人みたいだと一人ではしゃいでるのかな。
うわ、それって何か恥ずかしい。
何か不安になってきた。
…ねぇ、私とはっちゃんは恋人だよね?…私の気のせいとかじゃない、よね…?
「はっちゃん…」
「何?」
「うわっ!はっちゃんいつからそこに!!」
「兵助が呼び付けたんじゃねーか!後で部屋に来てくれって」
「え…、そうだっけ?」
あーそういえば言ったかも。
何か言わなきゃいけないことがあって……忘れた。何だっけ?
「兵助?」
「ああ、うん。用事忘れちゃった。ごめんね」
「は?…あぁそう。別にいいぜ?また教えてくれれば。……」
「?はっちゃん?」
急に俯いてしまった。
不思議に思って顔を覗きこもうとしたら、ぐるっと視界が反転した。
唖然として見上げれば、切羽詰まったようなはっちゃんの顔があった。
あれ?私押し倒されてる??
「兵助…」
「あぁあの、はっちゃんっ?どどどっ、どうしたの?」
はっちゃんを押し返して起き上がろうとすると、ぐいと腕を引かれて押し戻された。
泣きそうな顔をしたはっちゃんが、おもむろに私に口付けた。
「んっ?!」
慌てて引き剥がそうとするが、はっちゃんも必死なのかなかなか離れない。
いやいやいや、嬉しいんだよ?凄く嬉しいんだけど!!
それでもなんとかはっちゃんを剥がして上体を起こす。
はぁはぁと荒い息をつくはっちゃんはとても色っぽい。
唾液に濡れた唇も気になったけど、それよりもはっちゃんが泣いていることに焦った。
「はっちゃん?!な、何で泣いてんの?!」
「ふぅ…っ、兵助のにぶちん…!、ばかっ、とーふばか!」
「へ?ちょ…はっちゃん、泣かないで…っ」
ぽろぽろと涙を流す。
ちくしょう何がい組だ、知識ばっかで役にたたない脳みそしかない。どうすればいいか分からない。
「はっちゃ…」
「兵助…、俺のこと好き、って言った…のに、っ」
ごしごしと乱暴に目もとを拭うはっちゃん。
そんなことをしたら目が腫れてしまうよ、なんてお門違いな心配をしてしまう。
「なのに…っ、何にもしてくれない…。話し掛けるのも、俺ばっかりでっ…、兵助からは…何も…」
「あ?」
あれあれあれ?
え、何なに、そういうこと?
ちょっ、なに、何なのこの子。むちゃくちゃ可愛いっ!
つまりはっちゃんは私が何もしてこないから不安になった、と?
そしてやっぱり恋人ってことで意識してた?
私からの行動を求めてた、と?
「はっちゃん大好きぃぃぃっ!!」
「なぁ…っ?!」
未だに泣きじゃくるはっちゃんの体を抱き締める。
「私嬉しくて死んじゃいそう!」
「え?え??兵助?」
きょとんとしてるはっちゃんもかぁいいなぁ!!
そっか、はっちゃんは私が何もしないことに怒ってたのか!
「安心してね、はっちゃん!これからはどんどん愛を示すから!!」
「ふぇええっ?!」
「はっちゃんを二度と不安になんかさせないよ!私ははっちゃんを愛してるよ!!」
「あ…あぅ…」
本当ははっちゃんが大事だから手出しづらかったんだけど…
そういうことならしょうがないよね!
「これからはたぁっぷり可愛がってあげるからね?だって私たちは恋人同士、なんだから!」
「な…っ、何言って…?!」
ちゅっと啄むように唇を触れさせれば、はっちゃんは真っ赤になって視線を逸らしてしまった。
「やっぱりはっちゃんて可愛い!」
「…ばか」
はっちゃんのお許しがでたことだし、今日からいっぱい愛してあげようっと。
もちろん、
遠慮はいらないよね?
『純粋すぎる君へ』提出作品。
参加させていただきありがとうございました!!
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