今日も一日が始まる

…年上としてあの方の世話、頑張らないと


一輪の花



部屋に差し込む日差しで目を覚ました一人の女性は、少し眩しげに目を細めながらもゆっくりと身体を起こした。彼女の名前は名前。数ヶ月前にゲルド族の族長の世話をする為派遣されて来たハイリア人だった。この時代はまだハイリア人と対する時代では無かった為に直ぐに受け入れたそう

名前はうーんと背伸びしながらベッドから起き上がり寝間着から普段着に着替えた後寝癖等も直せば、早速族長が居る部屋に向かった。いくら自分が世話係で年上だからと言っても相手は年下とは言え、ゲルド族の族長様だ…その肩書きがあるせいかいつも部屋の前に来ると緊張してしまう。深呼吸して意を決した名前は、こんこんと扉をノックする


『ガノンドロフ様、世話係の名前です。貴方を起こしに参りました。…失礼しますね』


返事が無かった為に恐る恐るがちゃりと扉を開けると、彼__まだ少年であるガノンドロフはベッドで寝ていた。彼女は扉を閉めた後彼が眠るベッドに近付き、優しく身体を揺さぶる。朝ですよと言わんばかりに揺さぶる中彼が寝返りを打ちうっすら目を開ける

目を覚ましたとは言え、まだ寝ぼけているのかぼーっと名前を見る。ガノンドロフに見つめられた名前はキョトンとするも、恥ずかしかったのか見る見る頬が赤くなるのが分かった


「何アホな面をしている」


徐々に意識が浮上したのか顔を赤らめる彼女に溜息をつきながらも、ゆっくりと身体を起こす。今日は仕事は休みな為のんびりと休めそうだなと思っていればふと窓際に置かれていた一輪の花に目をやった。名前はいつもの様に頬を抓られるかと思いぎゅっと目を瞑るのだが、何時まで経っても来る気配が無いため目を開けると彼が花を手に取りじっと見つめていた

何故彼の部屋に花が?と疑問に思っていたがその花はとても綺麗に咲いており思わず見蕩れてしまう


『綺麗な花ですね』

「そうだな。…それに」


そんな中彼は器用に工作すると彼女の方に向き、ずいっと身体を乗り出す体制になる。いきなりこちらに来た彼に思わず顔が真っ赤になりぎゅっと再び目を瞑った。だが直ぐに彼の行動に理解する

目開けていいぞという言葉に恐る恐る開けると、彼の部屋に置かれていた鏡を見てハッとする。自分の髪にあの綺麗に咲いていた花が付けられていたからだ。えっ?となる彼女にガノンドロフは低く笑うと優しい笑みで名前を見た

__これは俺からのプレゼントだ。と…

その言葉に彼女は嬉しさのあまり涙が出るも、笑顔でありがとうございます、ガノンドロフ様と伝えた



今日も一日が始まる。だから身を張ってでもガノンドロフ様の世話をする

いつもと変わらない日常だが、彼女の髪には一輪の花が付けられ、輝いていた


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