Clap
ただいまおはなしは一種です。



長男 伊達
年の離れた弟 幸村
伊達の同級生 元親





「うーわー雨降ってるし」
「なんで傘忘れんだよ。今日は夕方から雨だって天気予報言ってたじゃねえか」
「うっせ。朝時間なかったから忘れたんだよ」
周りの生徒が次々と帰宅していく中、政宗と元親はざあざあとバケツをひっくり返したような雨を眺める。止む気配はなかった。
「止みそうにねえな……相合い傘でもすっか?」
しわくちゃのビニール傘が元親のロッカーから出てくる。
「No Thank you.アンタとやったら肩とか絶対出るだろ。ガタイ的に考えて。あとムサい」
「はは、だな……ん、あれなんだ」
促された先を見ると小さな人影が校門に見えた。

「幸村!」
「政宗にいさん!」
政宗の声を聞いた途端、校門の柱の陰から幼児用の小さな傘をひるがえして少年がこちらに走り出す。

「お前どうしてここにいんだよ!学校は?」
「今日はもうおわりました!」
傘を忘れていたから迎えにやってきたのですと小さな体を揺らして幸村は笑った。

「お前はいい子だな。で、傘は?」
「忘れました!」
「馬鹿」

「なあ、そいつ弟?」
二人の様子を見ていた元親がちっちえと笑いながら幸村の頭をなでた。
「かわいいだろ?俺のだぞ」
「お前に似てねえ。ひねくれてなさそうだわこいつ」
「ありがとうございます」

ざあざあと雨が一層強くなる。
「おっと、そろそろ帰るか」
帰るぞ幸村と手を差し出すその姿は弟思いのいい兄ちゃんに見えた。
「にいさん、少し待っててください」

兄のさす傘からとてとてと幸村が出てきた。背の高い元親に背伸びをして耳打ちを促すと膝を曲げて腰を下ろしてくれる。

「あなたが、にいさんがよく話に出す元親さんですか」
「おお、そうだぜ」

「にいさんに手を出さないように、このデカブツ」
「……………ああ?」
「ではさようなら、元親さん」

不思議そうに二人を眺めていた政宗の元に戻り仲良く相合い傘で帰る兄、弟。
それを眺める元親。
「……やっぱ似てるわあの兄弟」


次の日。
「なあ、お前の弟って何歳だっけ」
「12」
「……将来痔には気をつけろよ。」
「は、なんで?」
「いいから」







腹が黒い真田くんのはなし。
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