頂に着いた。吐く息とは対照的に薄暗く染まった辺りを見渡し、近場にあった石に腰を降ろす。日の出までまだ時間はあった。

「戻ったら片倉殿に謝りましょう」
矢先、幸村が口を開いた。

輪郭のぼやけた足元を眺めていると幸村は音も立てずに歩み寄る。
「政宗殿」
「しばらくすれば向こうが勝手に折……」
「ありがとうございます」
思わぬ言葉に幸村を見上げた。
「庇っていただき、ありがとうございます。」
北風が木々を揺らし体を凍えさせる。擦れさざめく木の葉が耳に痛かった。

「ですが、片倉殿はあなたの身を案じてのことだった。」

臆面もなくぶつけられる感情に返す言葉を飲み込む。
まるで童のように扱われている。そうだ、この男は宿敵であり奥州を束ねる龍を童だと思っている!政宗が首を縦に振ると幸村は安堵したように肩を落とした。
どうしてこんなに甘いのだろう。この男は、甘すぎる。

白く浮かぶ、息ひとつ。
それがこの男と決して相成れないのだと俺に思い知らせるのだ。


微かに漏れた自身の声に政宗は気づく。
闇夜は照らされ透明の空に光が射し朝陽が昇る。笑って朝焼けを背負う幸村が確かにそこにいると。
それ以外目に映らない、映したくないと思えるように、燃えるような赤。


………。
なんて綺麗な、赤。

「さあ、帰りに片倉殿に団子でも買って帰りましょう」酷く胸が、詰まる。
いっそ飲み込んでしまおうか。
もういいじゃないか。毒を食らわば皿までだ。
維持を張るのにもいい加減疲れたと、この頭は訴えている。
この気持ちを認める。それだけではないかと。

「いかがなされた、政宗殿? ……別にそれがしが団子を食べたいから言っているのではないのですぞ。ただその少し供え物のように置いてほしいとは思っていますが決して、その」

全く、これのどこが甲斐の若虎だというのか!
誰も信じないだろう、否そんな詰まらないことをしたくはない。
これは俺だけの物だ。
以前では決して見ることのなかったその姿に思わず頬が引きつるのを黙認した。
「む、何故笑っておられるのですか政宗殿!」
「ばぁか、別に笑ってねえよ」
嘘だ、俺は今笑っている。楽しい、楽しくて仕方がない。

「……笑っているではないですか」
「そうかもな」いつまで続くのだろう。
いつまで続くのかはわからないが、今はアンタとの日々を楽しみたいと素直に思う。

来年のことを話すと鬼が笑うのだ。
それならば今は何も考えずに甘受しようじゃないか。




旅人でにぎわう街道を人にぶつからないように早足で歩き、城下に鳴り響く鐘の音を聞きながら年越しそばをすする町人のいる屋台を横切り、年明けの準備でせわしない城内をすり抜けた。

城に帰ると酷く騒がしく、山頂で感じたものとはまた別の温かさを感じる。
「賑やかですな」
明日は宴だからなと口を開くがその続きは目の前のものに飲み込まれた。

「遅いお帰りで」
「小十郎」
「か、片倉殿その格好は!?」
「……笑いたきゃ笑いな」
お前が言ってた宴のために、俺はこんな格好をしているんだと小十郎は使い古された割烹着を指差す。

「お前がそうだからいつまで経っても可愛い嫁さんがもらえねえんだよ、小十郎」
「あなたには言われたくありませんね」

絶えず上がる口角に体を揺らし、政宗は視界の隅へと動く幽霊を見た。
「Happy new year.」

頂で赤く映える太陽がそこにいる。






伊達さんは高速で山を登れるんです。
時間帯とか気にしないで山に登れるんです。
だから散歩的な気分で外出したんですそうに決まってる。

朝、城出発
昼夕、山到着
夜明朝、城帰還

ARIENEEEEEEEEEEEEE!


(というかなんでこの伊達さん結婚してないのとか思ってはいけないだってバサラだもの)

自覚した伊達男の話が書きたかったんだい。

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