死ネタ半政 ずっと一緒になんていられない。 わかってる。わかっているよ。 どれだけ君に呼ばれたって、僕がその焦がれるような声に応えることが出来ないってことくらい。 「雨、だな…」 何故悲しませることしか出来ないのか。そんなのわかってる。僕に覚悟がなかった。ただそれだけのことだ。 「そうだね」 いつ会えなくなってしまうのかもわからない。それなのにいつまで経っても決断が出来なかった。 ぽつりぽつりと降ってきた雨に混じり、力無く伏せる彼の体から流れ、そして僕の手をしたたるその赤色は少しずつ薄くなり段々と地面を染めていく。 鮮やかで綺麗な赤は黒に変わりそしてすすけた灰色に変わる。どろどろと色褪せて、汚く濁る。 段々と強くなる雨の中、それでも君の声だけは聞こえた。 「……なんて、情けねえ顔をしてるんだ。アンタが、そんな顔をする必要なんて、無いだろう?」 (最後に見たのが敵で、しかも一番好きな人の顔なんて、おかしくて泣いてしまいそうだ!) 「どうして、こんな時まで君はそんなに嬉しそうに、笑うんだ」 (そんな顔で見ないで。僕の方が泣いてしまうよ) 「さあ、な」 「君は、もう死んでしまうのに」 「そう、だな」 「もっと、足掻いて、もがいて、死にたくないと泣き叫べば良いのに」 「今さら、何をしたって、同じさ」 「君は、僕を憎まないのか?お前のせいで死ぬ。お前さえいなければと恨めば良いだろう」 「そんなことは、俺の趣味じゃねえよ」 「じゃあ、どうして」 「なあ、もう、良いじゃねえか、そんなこと」 息も絶え絶えに彼は僕を見上げる。その瞳は僕を見据える。 「君、は……」 「俺は、アンタのことを、恨まない、憎まない、忘れてなんか、やらない」 それなら良いんだろうと今まで見たことのない酷く虚ろな目で見つめられた。 彼の目はぼんやりと潤んでいたけどそれは雨のせいなのかそれとも彼自身のものなのか分かる術は無かった。 それでも、酷く困ったように笑うその表情を見て胸が痛んだ。 (そんな笑い方なんて、似合わないのに) ごめんなさいごめんなさい。こんなに優しい君にそんなことを言わせてごめんなさい。 ごめんなさいごめんなさい。最後まで君を選ぶことを出来なかった意気地のない僕でごめんなさい。 ごめんなさいごめんなさい。信じられないかもしれないけど今でも君が好きなんです。 自身の重みに耐えきれず思わず膝をついた。足元にある水たまりの上に落ちて大きく波紋が広がる。泥が顔に跳ねる。 段々と、冷たくなっていくその体に触れたくて恐る恐る手を伸ばした。 それに気付き政宗がゆっくりとその手を握り返す。 泣くなよと、その表情からはそう告げているように思えた。都合よく解釈しているだけなのかもしれない。それでもそう思わずにはいられなかった。 僕はなんて酷いエゴイスト! 口が裂けても言えない。最後の最後まで君のことが大好きだったなんて 友情と愛情のどちらかを選ぼうとした優柔不断な人の話。 |