きみには笑っていてほしい。

それすらも、あなたは叶えてはくれないのですね、かみさま。



君の隣にいたいんだ。君は笑ってそれに応えてくれた。僕の余生は限りなく短いと伝えても、君はずっと隣にいると言ってくれた。
僕は君のその笑顔がとても好きなんだ。僕のために笑ってくれる。それだけで、この重い体が軽くなる。

僕を支えてくれるこの笑顔。これだけは誰にも取られたくない(取らせは、しない)と心の底から思った。
彼は僕の支えなんだ(大切な大切な、大切、な)


「…もう、行こうか」
「…………そうだな」
背を向け、掌をひらひらと振る(Bye!)彼の背中を見つめる。
小さな小さな古ぼけた小屋の中。僕達は互いをこうして会いに行く。会える日は月が丸く満ちる時だけだけど。それでも君の顔が見れるなら。僕は、それだけでよかった。

僕等には、捨てれないものがある。
もしそれが消えたら、どれだけ自由になれるんだろう。もし僕等の立場が違っていたら、どうなっていたんだろう。
僕は思わず衝動的に彼の背中を呼び止めていた。
「……何だよ」
「君は、その」

振り向こうともしない彼の声は、一段と低く感じる。その態度で気付いた。

(僕は一体、何を告げようとしていた!)

僕と一緒に帰ろうと誘ったって彼が頷いてくれるはずがない。だからといって僕が彼に着いていくかと言われても答えは同じだ。秀吉を裏切るわけにはいかない。
もちろん彼だって同じ理由だろう。こんなわかりきったことを言って僕は何をしたいんだ。彼はわかっている。僕が言おうとしていた言葉に気付いていた。
こんな情けないことを聞いてしまったら、彼に嫌われてしまうというのに(そんなのは、嫌だ!)

「いや、なんでもないよ。呼び止めてすまない」
渦巻く感情を抑え、薄暗い小屋の中で僕は笑う。彼に見えているかどうかはわからないが。しかし、そのほうが都合がいい(ちゃんと笑えているのか、自信がないんだ)。
「……Good-night Sweet dreams.(おやすみ、良い夢を) 半兵衛」
「君もね、政宗君」
軽く返事を返して、彼はまた歩き出した。僕も小屋を出る。ずっと待たせていた馬のもとに歩き出した。夜明け前には帰らないと(誰も彼も何も裏切ってなんかいないのに、何故後ろめたいと感じるのだろう)。

「…行かないで、か」
何と引き換えたって、いい。その一言が言えない自分のなんと情けないことか。
鐙に足をかけて馬に走らせた。風を受けながらまた思考の海へと潜る。

ねえ、お願いだからどこかへ行ってしまわないでほしい。君に置いていかれてまで、惨めに生きているくらいなら死んでしまったほうがいい!
僕は君がいなければ、息を吸う事も、身体を動かす事だって出来はしないんだ。
依存と笑いたければ笑うが良い!
君さえいれば、僕は生きていけるんだから。






君のことを思うだけで、僕は五体(不)満足
依存しなければ倒れてしまう半兵衛と、彼に依存し過ぎては駄目だと素っ気ない態度の政宗の話なんだと思うよ。



泣きたくなる程、君が好きなのです。

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