「この話は実際の人物となんら関係ございませんってね」
ぺこぱことキーボードを叩く政宗は嬉しそうにその画面を眺める。
そしてそれを疎ましく眺める一人の男。

「なぜ先生のサイトを見せてはくれんのだ!」
本業で作家を生業としている伊達の趣味は最近ようやく購入したパソコンでのサイト更新である。尚、購入に踏み出した陰に編集の目覚ましい努力があったのは言うまでもない。

「ばーか、アンタ19だろ。俺のサイトはお子ちゃま禁止なの。」
そしてまさかの20禁。
保護者によってアクセス制限をいまだにかけられている幸村はトップを開くことなく門前払いされているのである。
「だからといって内装さえ拝見できないのはひどすぎるではないですか!ひどい!ひどすぎる!」
「そんなのアンタの親に言えよ。どうせ見れねえとは思うけどな」
その一言に幸村は携帯から顔を上げる。
「む、何故でござるか?」
「俺のジャンルは特殊だからパス付いてんだよ」
「……はっ、そんなもの、あなたを知り尽くしているこの俺が間違えるわけがないでござろう」
「はいはい、そうかよ」

じゃあ一回確かめてみろとパソコンを起動させ幸村の方に反転させる。箱の中に白を基調とした内装が表れ、記載された活字により獣のような雄叫びが響いた。

「あ、あ、ああああああああああああああああああああうあ!こっこれが先生のサイト!……サイト!!」
「壁薄いから一々叫ぶな」
「しかしその、未成年が本当に見ても」
「どうせ見れねえよ」

その言葉を口切りに幸村は液晶と向かい合う。
格闘中。
五分経過。
十分経過。
二十分経過。





一時間経過。

「……なんだこれは!?」
「ほーら、だから見れねえって言っただろ」
「『この世界ではありがちな数字をすべてバラして掛けた答は』? 『この世界では常識な三文字の半角英数字を略して書け』? 『このジャンルの時間の総称を半角英数字で略して書け』って、何なんだ!?日本語なのに日本語じゃない!なんだこれは!なんだこれは!」
「幸村君は大切なことだから二回も言ってくれましたー」
「……先生は実は異国の人なのですか?」
「そんなわけねえだろ。なに真顔で」
「いや、だって、これは」
「自分の欲望に忠実になっただけさ」
「……一体先生は何を書いておられるのですか」
その一言に形容のしづらい笑い声をあげて政宗は口を開く。
「何って、三次元








……なんてことがあったんだぜー。幸村ちょーばかわいいの」
担当である小十郎がちょうど会社に戻っている間に幸村は来ていたようだ。外の紫外線にやられたのか額に粒を浮かべながらばたばたと手で扇ぐ。

「はいはい。で、18禁サイトの方を教えなかった理由はなんですか」
あれなら健全なものもあるでしょうと背広を投げ捨てる小十郎。
「お前、知ってたのか?」
「あなたが無理やり教えてきたんでしょう」
「そういやそうだった。」
「理由は?」
「んー……あいつに教えるとあれで抜きそう」
同時に盲目的に変態的なファンの姿を思い浮かべた。
「ああ、確かに」
否定の言葉は挙がらないらしい。
「ズリネタに使われんのはちょっと、なあ?」
「知りませんよ、どうせ自己満足なんだから好きに抜かせておけばいいでしょう」
「ひっでー」

それくらい別にあなた自身に被害があるわけじゃないしと小十郎はため息をついた。




三次元のパスって難しいよねって話。
伊達さんは三次元20禁と18禁+健全のサイトを運営してたりするんだよ。

にしても20禁と18禁ってなにが違うのかしら。


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