マグノリア

転生佐助


うすぼんやりと光る木蓮が目に入る。そうかもう春なんだな。
無関心だったと思う。何もかもに。昔は花を愛でることすら出来なかったんだ。

「綺麗だ」
煌々と輝く木蓮は淡い白色をしている。昼間に見てもそう思うことはないのに夜に限ってこの花は太陽のように輝いた。
手を伸ばせばすっぽりと収まる太陽がなぜだかとても愛しいもののように感じて頬擦りをする。今なら手が届くんだな。思わず呟いたその言葉の意味はわからない。ただ懐かしさだけが心に響いていた。
匂いに酔ったのかもしれない。甘ったるいようなこの強さに。
ひとつため息をついて、俺は随分と夢見がちな男になってしまったよとひとりごちた。向き合う相手がいないのはこうも虚しいものか。もしかしたら、それを知って俺のくだらない話にも付き合ってくれていたのかもしれない。
誰のことかはわからない。

昔に見た、あの花はとても綺麗だった。
一体なんという花だったんだろう。
自分のこともまだ上の空なのに花のことなんてわかるはずもないけれど。

あなたのおかげで僕は人になれました。
この言葉は誰に言えばいいのだろう。



花を愛でる男の話






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