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変態と変態と

学パロ gdgdすぎて泣ける





「おい、小十郎ー!」
昼休み。
廊下は学食に向かおうとする生徒や、何か用事をすませようとパタパタと早足で歩く生徒が占めていた。それを慣れた足取りで避けながら歩く小十郎を若い青年の声が呼び止める。

「…学校では先生と呼んでくださいとあれほど、」
その後ろからきた声にはあとため息をつきながら小十郎は振り返った。

「sorry 片倉先生。でもそれなら先生が生徒に敬語使うってのもおかしいじゃないですか?」
そう言い政宗がにやりと笑いながら小十郎の方へとゆっくり近づく。

「…それも、そうですね。では、学校では伊達と、」
「Don`t use the honorific(敬語も直して)! 先生?」
朝から開きっぱなしの窓に手をかけた。外を眺めながら政宗がそう言うと顔の傷を歪めて小十郎は笑う。
「そう、だな」
その言葉に振り向いた政宗は楽しそうに笑った。



そしてそれを覗く不穏な影がひとつ。
「……な」


「ん? 先生、なんか言いました?」
「? いや、何も言ってねえ」
辺りをきょろきょろと見渡す政宗にどうした。と、小十郎が口を開く。なんでもないと政宗は返事を返した。


「あ、先生見て。」
気のせいだと政宗はすぐさま話を切り替える。窓を覗くとすぐそこに見える花壇を指差して、小十郎に声をかけた。
「ん、何だ?」
「花だ。花が咲いてる」
男子高校生としては珍しく花に興味を見せる。へえと政宗は楽しそうに呟いた。
窓から両手をぶら下げながらそれを眺めている政宗の隣に小十郎は並ぶ。眩しいものを見るように目を細めてその横顔を眺めていたが、ふと思い出したようにガラスに手をついて小声で話しかけた。

「…政宗様。今、本邸の桜は見頃です。たまに本家に戻ってきては、」
口調を戻し、教師としてではなくあえて普段の口調で話しかける。
「あのババアがくたばったら考えてもいい。それと小十郎、お前学校で様付けはやめろっつってんだろ。……忘れたのか」

その小十郎の一言で、今までの上機嫌がどこへやら。政宗はギロリと目をつり上げて小十郎を睨みつけた。

さてここで何のことかと簡単に説明すると、なんてことはない。以前学校で小十郎がうっかり口を滑らせて政宗様、なんて言っちゃっただけの話で。
それの何が問題かと言えば、そこには彼らだけではなく、その時政宗の友人がいたのだ、二人。

一人はそれを聞くや否や、弱みを掴んだとばかりに、そっか伊達ちゃんは女王様なんだあ、などと含み笑いで話しかけ、もう一人はお前らそんな関係だったのか、ああ別に俺そんな偏見ねえから安心しな、などと憐れみを含んだ生暖かい視線を送ってきたりと、非常に嫌な出来事として、政宗の記憶の中に新しかったりする。
ちなみにすでに誤解は解けてるのだがそれをネタにからかわれたりすることがしばしば。


「…破、廉恥な……!」
「…ん?」
小十郎から視線を外し、再度花壇を眺めている政宗。またどこからか聞こえてきた声に首をひねる。
すると、

「待てええええぇい!!そこの教師の皮をかぶったヤクザぁああ!!貴様、っ何生徒に手ぇ出そうとしてるのだ!まあ嫌らしい!きゃあ変態教師!破廉恥極まりないんだからもう!!」

今まで二人が眺めていた花壇の土から人一人分ほどの膨らみがもこもこと動き出した。それは勢いよく飛び出す。その衝撃で根元から土とさよならする花。哀れ、花。
そして、数秒唖然としていた二人の目の前に全身土まみれで、花壇に咲く花を頭に乗せたまま突っ立っている赤い青年、真田幸村がいた。
裸で。

裸で(とても重要)。

「ぅ、あああああああ!!?」
「おまっ、ちょっ、どこから出てきてんだ真田!?政宗様こんなもん見ちゃ駄目ですっ!とんでもない目の毒だ!!」

その時目の前の猥褻物から政宗を守ろうと、目を両手で力いっぱい覆った小十郎の心は愛に満ちていたに違いない。

「先ほどから土の中で話をうかがわせてもらいましたぞ!教師という立場であるにも関わらず政宗殿に手を出す不逞な輩め!!それがしが成敗してくれよう!覚悟ぉおおうえ(むせた)」

そう叫ぶ声に廊下を歩いていた通行人がなんだなんだとふり向く。しかし数秒思考が止まるかと思うと悲鳴や何か頭に浮かんだことを口に出すや否や脱兎のごとく走り去った。
賑わいを見せていた廊下は今や閑静な空間へと早変わり。逆ビフォーアフター。

「ななななな何で裸なんだアンタ!?というか小十郎お前力強えよ!いってえ!!」
そして自身の顔を現在進行形で掴んでいる小十郎。力の込められすぎた手のひらをどかそうとぐいぐい力を込める。しかしそこはお互い維持で。小十郎の掌はびくともしない。

「なんと言われようともこの手は離しません…!!」
あなたに猥褻物を見せるわけにはいかないのです。ええそりゃあもう。そう小さく呟いた。

「…いいから、その小汚え物をさっさとしまえ!ハサミで切るぞ!!というか、お前に変態なんて言われる言われはねえ!」
その後に言葉を続け小十郎は目の前の猥褻物陳列罪男に怒鳴りつける。

「制服が土まみれになっては困るのでマッパにて候。そして変態教師よ!それがしのそれは国宝級でござるぞ!!小汚いとは失敬な!」

ふふん、と両手を腰に当て自分のそれを自慢げに話す幸村。小十郎は持っていた教材を罵声と共に投げた。
しかし幸村は体をくねらせ難なくかわす。
「うけけけ。そんなものがもはや完全態となったそれがし当たるものか!」
幸村の頭の中の構造では裸=完全態なのだと彼を知るものは語る。嫌な理解者もいるものだ。

「ジャージを、着ろ!!そんなことで裸になる馬鹿がどこにいるんだ!どこに!通報されんぞアンタ!!」
と政宗。
「うあああ振るな振るな気持ち悪い!!腰を揺らすんじゃねえよ!」
そして小十郎。
「え、今そんな状況なのこいつ!?」
しかしそんな二人の話になど幸村は聞く耳持たず。いまだ政宗の顔を覆っている小十郎へと人差し指を向けて幸村は叫んだ。

「ええい、もう黙ればいいと思う!なんなのだ貴様は!?政宗殿を陰でこそこそ政宗様なんて言いおって!女王様か!女王様プレイなのかそれは!?べ、別に羨ましくなんかないけどね!政宗殿とそんなこと出来るからって幸村悔しくなんかないもん馬鹿馬鹿!!」

怒りの余り紅潮した頬に潤んだ目をきらきらさせる幸村(裸)は、端から見るととても滑稽だったといえる程の、見事なまでのアンバランスだったそうで。関係ないけど幸村(裸)って何か有限会社みたい。

「うちの小十郎に難癖つけんじゃねえよ!だから違うってん「そんなプレイしたくても出来るわけねえだろうが!」…小十郎、さん?」

今まで顔を覆っていた掌の力がするりと抜けた。それをどかし政宗はおそるおそる小十郎を見上げる。
もちろん猥褻物陳列罪男を意図的に視界から外して。

「…………。」
「おいこら待て、何故目をそらす」
しまった。というように顔を歪める小十郎へと政宗は信じられないものを見たかのような視線を送った。
「本性を表したなこの変態教師め!!常日頃からそんなこと考えてたとはとんだムッツリでござる!きゃあ変態!!」

「うるせえんだよ黙れ!!…あの、政宗様今のは、その」
「………。」
「お願いですから無言で離れるのは止めてください」
何も言わずにずいっと真横にずれる政宗に小十郎はおたおたと慌てる。その様子を見て幸村はけらけらと高らかに笑った。
「いい気味でござるな変態教師!」

悔しそうに幸村を睨み小十郎。ぎりぎりと歯ぎしりをするがそのまま視線を政宗へと戻す。しかし小十郎は何も言うことは出来なかった。視線をさまよわせて、うろたえる。
「〜〜〜〜〜〜っ!!」

「…sorry 俺ちょっと用事出来たから」
「あ!」
スタタタタと一度も振り返らずに走り去る政宗。いくら名前を呼んでも振り向きゃしない。
「ま、政宗様…!」
そうして虚しく空を切る小十郎の手。
「…これで小政フラグはへし折ったでござる!ひゃっほう!!」
さあ来い幸政の時代!王道王道!この二文字以外認めるものか。両手を広げて幸村は手放しで喜ぶ。ああ人間って汚い。

「このやろう…!!」
「因果応報!因果応報!変態教師には当然の報いでござる。トラトラトラ!神は我に味方せり!」
「……手前、むしろもとをただせばお前のせいだろうが!というかお前にだけは言われたくねえんだよ!」
「けけけけ!負け犬の遠吠えとは情けないでござるな!」
「お前も十分負け犬だ!」
「んだと」

自身の格好と今までの行動を見直してから言え。頭に花を精神的にも物理的にも咲かせた幸村にそう言いながら、小十郎は胸元からボールペンを取り出して投げつける。幸村の顔に当たった。ああもうこのボールペン使えねえな。次の木曜にでも捨てよう。そうして出来ればこいつの記憶も捨ててしまいたい。ああそうだ全部忘れてしまえ自分。燃えるゴミなのか燃えないゴミなのかはたまた不燃物なのかは知らないがさっさと捨ててしまえ自分。ついでに本体もす巻きにしてゴミ置き場に置いてしまおうか。ぐるぐるに巻かれてそのまま伊達巻きにでもなっちまえ。あれ、なんかおせち食いてえな。



Nil desperan dum!
(錯乱しないでください先生!)

___

いかに変態度を出せるか自分と勝負してみました。とても怒られると思うけど小十郎の内心って大体こんな感じがする。









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