text | ナノ




例え話はもう終わり(この恋が報われていたら、そんなの有り得るわけがない)



「あの人をはじめて見たのはいつだったかな。もう忘れたけど、確か旦那に言われて、奥州くんだりまで偵察に行った時だっけ。酷く不思議な人でね、俺に気づいてる癖に追い出そうともしないし、たまに一緒に酒飲んだりして。任務も忘れて、いや忘れたわけじゃなかったんだけど、本当、何やってたんだか。もちろん旦那にはそんなこと言えなかった。あの人、あれで結構嫉妬深いから、そんなこと言ったら何されるかわかんないし。ああ、そういえば旦那と戦場で会ったあの人は、酷く楽しそうにやり合ってたっけ。まるで子供みたいだった。日陰にいる俺様には一生わからないような、何か通じるものが、あのふたりにはあったんだ、きっと。おこがましいとはわかってるけど、少し羨ましかった。あんな風に笑えるなんて、旦那にあんな顔をさせることができるなんて、俺にはできないことだった。手の届かない人だとはわかっていたけど、もっと近づきたかった。誰よりも、旦那よりも」


「……え、好きだったかって? うん、好きだよ、好きだった」


例え話はもう終わり(この恋が報われていたら、そんなの有り得るわけがない)


【報われない恋で10題】










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -