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ep.02 [Each]

 結局、定例会合の解散から5時間ほど後に、その場にいた人々のみでの臨時会合が行われることになった。雅と焔が村長のもとへ来た時にはすでにトロイとユウナは着いていた。
 人見知りなのと内気な性格もあってか、雅は集まったみんなより一歩引いたところから見知らぬ少女を眺めている。当の本人はというと

「うわぁーおっきい!背高い!」

などとはしゃいでいた。

「しかしまぁ、一日に二人も新しい子が来るなんて、何かの前触れかねえ……しかも二人ともかわいい女の子!」
「あの……俺……」

 にやけながら話す村長に、雅の横で話を聞いていた焔が気まずそうに口をはさむ。

「俺、男っす」
「へ?」

 完全に女だと勘違いしていた者たちは驚いた顔をする。その中に一人だけ好奇心いっぱいの目で見つめる者、ユウナがいた。

「あれ!?男の子!?」

 ユウナは焔をじーっと見つめ、ほえぇ、と間の抜けた声を出しながらぐるぐるとしばらく焔を観察していた。当の焔は思春期真っ盛りの男の子。女の子にまじまじと見つめられたことで気まずそうに目をそらしていた。

「じゃあそろそろ、自己紹介でもしようか」

 トロイの一言でユウナは我に返ったのか、そうだったと呟き下がって行った。村長をはじめとしてそれぞれが簡単な自己紹介を終えると、今度は新入りであるユウナと焔の番になった。

「じゃあ、まずあたしから。あたしはユウナ・エメット。トロイ君にはもう言ったんだけど、風の能力者だよ。お父さんに言われてイノセンスに入るために来たんだ」

 驚いたことに、ユウナはすでにイノセンスのことも知っているようだった。父から言われたとなれば父もミュータントなのだろう。村長は、他の組織にエメットなんて人いたかなあと思考を巡らせるが、何しろミュータントは国内に何百人といるわけで、当然思い当たる節もなかった。

「俺は伊崎焔。炎の能力者……だと思う。」
「だと思う?」
「うん。雅さんに言われたんだけど、なんか俺まだ未熟なミュータントらしくて」
「結界、見えてなかったみたいだったから」

 実際焔には結界のあるところは、多少の違和感は感じていたものの、ノーマルと同じように森があるように見えていた。一同はレットが以前「ノーマルやまだ未熟なミュータントには見えない」と言っていた事を思い出す。

「東国人か、災難だなぁ。まだ若いのに」

 雅の事情を知っている者たちは同じような境遇に置かれた焔に同情する。皇国の出入国が禁止されてから4年。政府から何の情報もないまま事実上の鎖国状態となったために、それ以前に移住してきた者やもともと住んでいた者は国外へ出ることができなくなってしまった。国外からの旅行者については封鎖の一年ほど前から入国を制限していたため、国に帰れないということがなかった事によって、国内の不満は最小に抑えられた。
 雅と焔については、旅行という名目ではなく移住という長期滞在の予定だったために入国審査に引っかからず、このような結果となっていたのだった。

「俺、親が過保護で鬱陶しくて、表向きは留学ということにして家出して来たらまさかこんなことになるなんて思わなかったから…」
「連絡は?」
「家の電話番号を知りません」

 今時そんな人初めて見た、と呟く者と、家出先が海外なんて、と驚く者。各々が自由に呟いたことで軽いどよめきがおこる。

「狩りが近い。親御さんを悲しませないためにも、俺たちが焔を守る」
「そうか、だから雅は旧市街に」

 同じ東国人として見逃せなかったのだろう。無口で無表情で、一見すると酷く冷たい印象の雅だったが、案外優しいところもあるのかもしれない、と焔は少し嬉しくなった。

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