※最終回を見て突発的にかいたものなので、綺麗な最終回を望んでいる人には読むのをおすすめいたしません。
水泳分の女の子で、遙、真琴の幼馴染。



































間違いをたださなければそのまま進んでいってしまうどこまでも、気づいていながらもしらないふりをするのはいけないことだとわかっているならなおさらだ。
まわりのことばかりに気を使って生きているといつのまにか自分の気持ちを隠すことになれてしまって、少しずつ少しずつ積もったものはやがて崩れなくなる。
今の自分の現状がそうなんだろうか、と思った。


私は昔から七瀬遙とうまくしゃべることができない。
いや、昔はそうでもなかった。子供が持っている心というのは興味とか好奇心とかそんなものばかりで成り立っていたからなにも考えることなく会話だってできていたのだ。けれど少し成長して今までと違う気持ちをもち始めたならばそれは一気に変わってしまう。
おはよう、またね、名前を呼ぶこと。全部全部今まで簡単なことだったものが一気に難しくなって、自分はこんなだっただろうかという気持ちが常にまとわりつくようになった。

それから私は七瀬遙とうまくしゃべることができない。

私と七瀬遙の関係を簡単に述べるならば幼馴染み、なんだろう。今だっておはよう、とかそのぐらいのことはいうのだ。けれどもきちんとした会話をするとなればそれは変わってくる。
七瀬遙は非常にわかりづらい。今まで会ってきた人間でトップに食い込むようなわかりにくさなのだ。真琴にとってはそうでもないらしいが私にとっては違う。
表情はあまり変えないし、言葉もうまく言わない。私にとっては少し理解し難い対象だった。けれども理解はしたい対象だった。そんなわけのわからない男に恋をしていたからだ。

いつのまにか七瀬遙のいうことには首を降らなくなる、そして七瀬遙のいう間違ったこともずっと訂正することができないままだった。
間違ったことというのも些細なことでそれも真琴がいつもおせっかいで助けてくれるレベルのことなのだ。例えば三食鯖はおかしいとか、ずっと水に浸かると風邪をひくとか、店のなかで服を脱ぐとか。この時点でどうしてこんな人をすきになったんだろうかと悩んだけれど仕方ない。それでも好きな私は嫌われることのないように、ずっと関係を保っていられるように笑顔とその場を取り繕う言葉だけが染み付いていた。

「お前、俺が怖いのか」

と小さいときに聞かれたことがある、その時の私は何故?としか思わなかったし怖いなんて答えるはずがなかった。むしろ好きなのだから。
その時の返答は忘れてしまったけれどあたりさわりのないことをその時も述べたような気がする。

七瀬遙の間違ったことをただせなかった私には後悔しえいることがある。私なんかが口を挟めるようなことでもなかったし私なんかに後悔されてもきっと迷惑なだけなんだろう。
ひとつ、どうしてそんなに自分の思いにノロマなのか。
私もスイミングスクールに通っていただけあって、そして、七瀬遙のことが好きだっただけにかれのことは見てきたつもりだ。あきちゃんになにも言わずに成長したこいつは、なんなんだろう。それでも男なのか、といいたくなった。
しかしそこで言わなかった私も所詮は女。自分がかわいいだけであの二人が一緒にいるのをみるのはつらかった。みたくなかった。だからこそただそうとはしなかった。

そしてもうひとつは今だ。
ここでひとつ抑えておきたいのだけれど、これはあくまで私が間違えていると捉えているだけで七瀬遙は悪くない。悪くないのだ。

「なんで、部活やめるなんて言い出したんだ」

私が上手に話すことができない相手でもある七瀬遙とこうして二人きりになる日が来るとはおもいもしなかった。好きだからとか関係ない、何を言おうか、なにを犠牲に言い訳しようか、頭のなかはそればかりだった。


「ま、マネージャーだってちゃんといるし私もういらないかな、って」

私はもともと選手としてはいっていたけれどそれをやめることにした。

「マネージャーはいるけど、お前がやめる理由はないだろ」

「泳ぐのが好きじゃない…」

「スイミングスクールもやってたくせにか」

なんで今日はよくしゃべるんだろう、私が苦手であまりしゃべらないままの七瀬遙なら適当に言い訳を作ってでも逃げたのに。今回はそれをさせてくれない七瀬遙だ。

「な、なんで遙にいわなくちゃいけないの」

そう言うと彼の瞳が一瞬だけ開かれた、さすがに言い過ぎたかなと思ったけれど今回はどうしても、私は引くわけにはいかなった。

「じゃあ、俺じゃなく真琴にならいってくれるのか」

「……い、言わないと思う」

「じゃあいつ言おうが変わらないな、言え」


私がやめようと思った理由の中にはこの中ではきっと私はそのうちやっていけないだろうと思った。怜君も渚君も真琴だって皆私に優しくしてくれるし女子だからって不便することはなにひとつない。けれども私の中の私がそう言った。なんで、どうしてなんて私が自分の中で一番問いかけてきた。


「どうして……、どうしてなんだろうね」

私は七瀬遙とうまくしゃべることができない。それはいつだってどんなときにも変わらないことで今も言葉を選んでこんな状況、もうどうしようもないのに彼に悪くない方向に捉えてもらおうと必死なんだ、ばかばかしい、けれどもそれが昔から少しずつ積み重なってきた結果がこれなのだ。成果は何もないというのに。


「お前もメドレーにでたいのか」

「違う、そんなんでやめたりしないよ」

もしかすると自分たちように、と遙は考えたのかもしれない。けれど、違う。
むしろ七瀬遙のメドレーを私はおかしいと感じてしまったのだ。確かに彼らのあのときの泳ぎは誰がみたって、何も知らなくたってまわりを引き込んで感動させるものがあっただろう。けれど、同様に私の隣にいた怜君の表情を私は見ていたから、彼の心中と同様のことを考えるときっと私だってここにいられないと私の中の誰かが囁いた。確かに美しい景色だったはず、なのに私の考えることは怜君と同じ場所でみていた自分の景色の中のことばかり。結局はどれだけその人の心にいれるかということを思い知らされた私の今までのことが全て無駄だったような気がした。
メドレーを見て、今まで七瀬遙に対して気を遣ってきた自分は、傍にいるのを優先しようとしてそこから前進できていただろうか。結果、何も私は昔のまま、あの場所から一歩も動けていない。
七瀬遙と一緒に長くいようが、そんなの関係ないのだ。実際昔私よりアキちゃんと仲が良かったなんて今更自嘲したって遅いのだ。全て遅かった。私がここまでずるずる引きずってきたものはただの未練たらたらな思いだけ。私はこの先に何を期待していつまで続けるつもりだったんだろう。


「……私は、ここじゃなくても泳げる」

七瀬遙達とは違う、きっと私はこの場所じゃなくて、違うメンバーでだって泳げるのだ。彼らのようになにかこだわりをもっているわけではない。その一言で全て彼が察してくれたらよかったのに、ああでもきっと彼には私のことなんてきっとわからないんだろうけど。


「………」

「私じゃなくてもここで泳げる」

つまり直接的に言葉として伝えればそうなる。私はもういる意味がないのだ。


「それはお前が思っているだけなんだ、俺は…」

「違う、違う、そうじゃないよ七瀬遙」

ここにきて私は初めて彼に違う。ということができたんではないだろうか。






「こんなの私が勝手に思ってるだけなんだけど、私には皆と同じ景色を見ることができないもん」

きっぱりと言い切るとなんで、とでもいいたげね表情でこちらをじっとみていた。

「なんで、どうして、あのとき凛じゃなきゃだめだったの。どうして、短い間でも仲間として一緒に泳いできた怜くんじゃないの」

それはつまりあのとき怜くんと同じ場所から見ていたわたしにとっては、もしかするとわたしでなくてもいいのかもしれないという疑問を確定させるには充分だった。


「……あのとき凛じゃなきゃ、きっとあいつとはもう泳げなかった。あのとき、あの瞬間じゃなきゃだめだったんだ。」

私の考えていることと彼らの思いは違うということ、ずっと一緒にいたのに私は七瀬遙のことを全く理解していなかったということを思い知らされたようなそんな感じだった。


「………今、この瞬間、私じゃないとだめってことはない…でしょう…?」

裏を返して言う私はどれだけひねくれているんだろう、今まで頑張ってきたもの全て無駄だってことがわかってしまうともうどうでもいい、そう思った。


「お前は昔から俺にはなにも言わなかった、言う必要がなかったのかも知れないけど。……凛は泳ぐことをやめようとしてた前にも俺は同じような体験をしたから、今度こそはあいつを、今度は俺があいつに見たことのない景色を見せてやろうと思ったんだ」


七瀬遙は一度水泳をやめている、松岡凛はオーストラリアへ一度いった。きっと二人の間になにかあったんだろうなとは思っていた、けれどわたしはずっと、七瀬遙のことをなにもしらかった。水と鯖が大好きなこと、知ってることはそのぐらいかもしれない。もしかすると今までの自分の気持ちはただの嫉妬だったのかもしれない、よくわからないけれどひとつだけ言えるのはもう私には七瀬遙のそばでうまく笑っていられる自信がないということ。
わたしの問いかけにはぐらかして答えたのはきっと、



「けど、俺は」

「ごめんなさい、ハル」

いつぶりだろう、彼のことを昔のようにハルと呼ぶのは、いつぶりだろう、彼の前で泣いてしまったのは。私が消えてなくなってしまえばいいとおもった。


「なんでお前が謝るんだ」

泣いてしまった私に少し驚いたような顔をした後、眉を寄せて少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。

「私の醜い心があるせいなの、ごめんなさい、もう一緒に泳げないきっと」

嫉妬するのもハルのことが好きだから、うまくしゃべれなかったのもハルが好きだから、ずっと取り繕って生きてきたのもハルのことが好きだから、

好きになってごめんなさい。
間違っていたのは最初から私だったのだ。七瀬遙はなにも間違えてなんかいなかったのだ。


「名前」

ハルに名前を読んでもらうことも好きだった、ハルから紡がれるたったすこしの短い言葉なのにすごく嬉しくなって胸が弾んでいた。
それなのに、今はなぜか苦しかった。

「どうして俺が今ここにいるのかわかるか」

わからない、首を横にふりそう伝えれば

「もう我慢するな、無理して笑うな、泣きたいなら今みたいに泣けばいいだろ、泳ぎたいなら泳ぎたいって言えばいいだろ、昔からずっとお前はどうしてそうなんだ、自分の気持ちを殺すことは楽しいのか」


なんで、どうして、ハルはしっているの。自分の気持ちをなくしてしまうことは得意だったのに、どうして知ってるの。そんなずるいこといってもわたしはどうしたって一番になれないのに。



「お前がそうやって自分の心を隠すから俺はずっと気付けないんだろ、何を考えてるか真琴みたいにお前はわかりやすくないから俺にはわからないけど、お前のそれは間違ってる」

はっきりと否定されてしまった、もうわかっていた。間違っていたのは私だと、もうすでに気付いていたことだけれど、ハルもわかっていたのだ。


「……私、周りの人がよくなればそれでいいと思った、ずっとそれで正しいと思ってたの…」

私は七瀬遙とうまくしゃべることができなかった、嘘をついて生きるのも無理をするのも全てやめたらどうだろう、今は普通にしゃべることもできて気持ちが落ち着いているようなそんな気分だ。


「ハルにだってずっとずっと、長い間……ごめんなさい」

ぽろぽろと涙がまた溢れてくる、謝罪を何度したってきっとだめなんだろう。それだけ自分に対し嘘をついてきた時間が長すぎたのである。

すっと手を伸ばしたハルはいまだに流れる頬の涙をなぞる。


「きっと、俺は今までのお前のおかしいところに気付いてて知らないふりをしてたんだろうな。ただお前が変わってしまっただけだって思いこんでだけど違ってたんだな。お前は何も変わってなかったけどそれを隠すことを覚えたんだな。そうさせたのもきっと俺だ。けどお前だけが間違ってるっていうのは違う」

「は、はる…」

「俺もずっと間違えてきたんだ。ずっと前から……」

凛のことを言ってるのか、よくわからかったけれどただ今のハルは何を考えて何を思っているのか感じ取れない。


「お前が泣くのは好きじゃない、お前が我慢するのも。それを言ってくれないのも、水に入ってもうまく息ができないままなんだ、地上じゃないのに。理由がずっとわからなかった、けど今ならわかる、気がするんだ」

ハルの目に自分の姿がうつる




「きっと俺はお前のことが好きなんだ」



二人とも自覚したならきっともう間違えることはない。