「いやいやモデルだからって調子乗ってないでよ涼太君」

「そっちこそ俺と付き合ってること普通だと思ってるけど特別なんスよ?わかってるんスか」

ラブラブなカップルを見ると私は心の底から羨ましいと思う。喧嘩なんてしなさそうな素敵なカップルを見てるといいなあと思ってばかりだ。私とこの黄瀬涼太は喧嘩ばかりなのだ、一応恋人というのに意見が食い違うことばかり。付き合ったらきっと自分も幸せにほんわかした漫画で見るような素敵な青春が待ってるんだろうなと思っていたのにいざ付き合ってみれば毎日のように喧嘩。理由はちっぽけ、涼太がモデルさんと雑誌でくっついていたとかこの間私が約束忘れて先に帰ったこととか、基本自分たちが悪いことばかりなのだが今回は私の発言が原因だった、雑誌をみながら一言ぽろりとそう無意識に出てしまったのだ、

「皆モデルってどこがいいんだろうね」

そう言った後の涼太は少し泣きそうな表情で「俺だってモデルなんスけど、名無しっちはじゃあ俺のこといいとは思わないんスか」なんて言ってきて吃驚だ。私は別に涼太がモデルだろうがなんだろうが好きだから別にそこは気にすることはないと思ったけれどどうやら彼はモデルをしてる自分はかっこよくないと私に思われたと思ったらしく口喧嘩はヒートアップそして冒頭にいたる。

「…特別、ねえ」

別に特別なんてほしくないし私は付き合ってるだけで幸せだと思っているのに特別だとかそんなことを言われるとなんだか複雑な気持ちになる。普通でいいのに、普通にデートしたりお話したり手つないだり笑ったりできたらそれでいいのに。つまり涼太は、俺が付き合ってやってるんだぞ、って言いたいのか。

「モデルと付き合うだなんてそんなやすやすある機会じゃないっスよ、なんでそんなこと言うんスか」

「じゃあなんで涼太もそんなこと言うの」

機会だなんてまるでお試しで付き合ってるみたいな気分だ、こんなこと考えてしまう自分も嫌だけど私と涼太は付き合った時はそりゃあまあ恋人っぽかっただろうけど今は喧嘩ばかりでもうすぐ別れてしまうのだろうかとか考えてしまう。

「……もういいよ、別にそんなつもりで言ったんじゃないのに」

それからは学校が終わるまで彼と口をきくことはなかった。




「君教育係だったんでしょう?もう少し厳しくしつけても良かったんじゃないの」

『そんなこと僕に言われても困るんですが』

黒子君には申し訳ないが八つ当たりできて、しかも怒らないのは彼だけなので毎回こうして電話してしまう。申し訳ないとは思うが黒子君は優しいので電話をきったりはしない。

『第一名前さんだって素直にモデルじゃなくても好きだと伝えればよかったじゃないですか』

「…ごもっとも、でもその時の涼太話し聞いてくれそうになかったんだもの」

『…僕にはどうしようもないです、今の教育係はあなたでしょう』

電話越しにため息をついたのがわかった、面倒なカップルでごめんなさいと心の中で謝っておく。電話をしながら歩くというのもなかなか恥ずかしいなと思った。内容まではばれないだろうけど会話がほかの人に聞かれるだろうし今度からメールにしようかなと思った。

「教育係じゃなくてさ、かの……」

視線をむける前方にうつるたった今話題にでていた彼氏と自分ではない女の子。そこでやっと理解することができた。なんだ、そういうことならいってくれればよかったのに。そしたらこんなに悩むこともなかったのに。


『どうしました?』

「ああ、黒子君。私もうだめみたい」

通話を一方的に切る、一方的にかけたのに勝手にしゃべって勝手に切って申し訳ないなと思うけれど今はそれどころではない。仲良く腕も組んじゃって、ああそうですか、いつの間にか涼太の心は違う子にむいてしまっていたらしい。そりゃあそうだろうなあいっつも喧嘩ばっかだったしそれも仕方ないと思うけど、ならさっさと別れようって言ってくれればよかったのにさ。別に別れたくないとか縋ったりなんてしないし、最近じゃあ喧嘩することばっかりで好きだなんて言葉もうずっと言ってなかった。涼太も私の前じゃ前みたいに笑うことはすくなっていたしもっと早く気付くべきだったのかな私が。もちろんちゃんと好きだったし今でも私は好きだしほんとは喧嘩なんてしたくないし素直に気持ち伝えられたらどんなにいいかって何回も思ったけどもう遅いんだね。好きっていって手をつないで、どっかで2人に遊びにいったり、学校でも一緒にご飯たべたりとかもっとしとけばよかったなあ。モデルさんと街にでかけるなんてこときっともうないんだから。
最後まで喧嘩で終わっちゃった。素直に謝れば良かった。

「……後悔してばっか」

空を見上げるとかちょっと青春っぽいことしてみるけどそんなのただ真っ白なそらが目に痛いだけだった。