「寒いね大輝君」
「だなー寒いっていうなよ余計さみいから」
初詣というのはどこの神社もこんでいて行列に並ぶだけでも億劫である。それに1がつとなると雪も少し積もっていて気温も低くただ立っているのは寒かった。
「別に今日じゃなくてもいいんじゃねえの?こんなにこんでるじゃねえか…」
まだまだ順番が来ないのを見てげんなりとした表情でそう言った大輝君、確かにそうだけど私としては新年の初めの日に祈ってこそ意味があると思ってしまう。
「青峰君はお願いしたいこと叶わなくてもいいの?」
「そんなん自分の力で叶えるわ」
「かっこいい」
「だろ」
青峰君と会話してたら待ち時間もそれほど苦ではなかった。
「そういえばさつきちゃんは?誘われなかったの?」
「あーうん、あいつなりに気ぃ使ったんじゃねえの」
「そっかあなんだか悪いことしちゃったな…」
大輝君とさつきちゃんが幼馴染で去年まで初詣に一緒に行ってたことは聞いてたから知ってたけど私と青峰君は付き合い始めたばかりだから気を使ってもらったならなんだかさつきちゃんに申し訳ない。
「なんでお前がそう思うんだよばかだろ」
「さつきちゃんも誘えば良かったかな」
「だから!俺はお前と2人で来れて嬉しいんだよ!」
驚いて大輝君のほうを見つめると少し耳が赤くなっていて「ばーか」と言われた。寒いせいじゃないと思いたい。
「へへ、私も嬉しい」
そう言って笑うと離れていた手を握られて「こうしたほうがあったけえな」と言われて確かにその部分は熱を持っていた。
そろそろ順番がまわってくるころだなと思い手にお賽銭を握って願い事を考える。
「大輝君願い事ないんだっけ」
「んー…おしえねえ」
「けち!」
「うっせほらお前の番だぞ」
そう言われて渋々と前に出る。
軽く会釈をしてからお賽銭を入れて鈴をならす。頭を下げてから手を合わせ2拍してから祈る。
来る前からもうすでにほとんど願い事は決まっていたようなものだった。
(大輝君がずっと笑っていられますように)
本当は大輝君とずっと一緒にいられますようにとか、大輝君と長く続きますようにとか願いたいことはたくさんあった。
けどどれがいいんだろうと考えたときバスケをして楽しそうにしている彼の姿がずっと見れればそれでいいと思った。
自分のことじゃないけど惚れてしまった弱みと言うのだろうか1年に1回の大事な行事も大輝君のためなら別にいいと思った。
(少し重いかも)
自分で願っておいてあれだが笑いがこぼれる。
自分の番が終わったので横で大輝君の願い事が終わるのを待つことにした。
意外にも真剣に手を合わせていて何を願ってるんだろうと気にはなったけど自分で叶えると勝気なことを言っていたから小さなことなんだろうか。
「おみくじひこっか」
「そうだな」
近くにあったおみくじにお金を入れてくじを引く。
「わー小吉だ」
「残念だったな、俺は大吉だ」
にやりと笑って紙をみせびらかす大輝君に羨ましくなったけど大事なのは書かれてる中身だと思い目で追ってみると
恋 祈れば実る、じっくり時を待て
「………?」
よくわからなかったけど大輝君と一緒にいたいとも思ったからこれはこれで当たってるのかなと自己完結。
「おみくじって当たってるのか当たってねえのかよくわかんねえよな」
「そうだよね、当たってるのもあるけど」
とりあえず結んでいかなくてはと思い、「ちょっと待っててね」と言って並んでいる紐に取り付ける。
「そういうのは高い方がいいんだろ?かせよ」
そう言うと紙をとって高いところへ括りつける大輝君。
「ありがとう」
「おーいいって、ところで名前は願い事何にしたんだよ」
「………い、言えないよ…!」
本人を前にして言えるわけがない。
「なんでだよ教えろ」
「大輝君こそ教えてくれなかったじゃない」
「名前と家族になる、ほらお前」
「え?」
「あ?」
さらりと言われた言葉に聞き間違いかと思った。家族になると今大輝君は言った。
「え、え、あの…大輝君…ほ、ほんとに?」
「本当だぞ言っただろ、だから名前も」
大輝君がいったなら私が言わないわけにはいかなくなるので渋々口を開いて「大輝君が…笑顔でいられますように…って」
「ぶはっなんだそれお前自分のことじゃねえだろ」
「いいじゃない…!だって願い事他にもあったんだけどね、これが一番かなあって…」
やっぱり恥ずかしい、大輝君は笑ってぽんぽんと頭をなでた後、
「俺は名前と家族になれたらもっと笑顔になる、一石二鳥ってやつだな」
「……うん」
「帰ってあったまるぞ」
ぎゅっと手を握って2人で歩いていく。
大輝君、2人の願い事が長い時間かかっても叶うといいね。