「赤司君今日何の日か知ってる?」
赤司君を探していたら図書室で何やら本を読んでいたので邪魔にならないようにそっと座る。本を読む姿すら絵になるなあなんておもいつつ私がここに来た目的は赤司君をながめることじゃない。
「人間の連帯国際デーだろう?」
「なにそれわからないよ、そうじゃなくて今日赤司君のお誕生日じゃない」
さすが赤司君と言うべきか一回も聞いたことないような、そして今日はその日だったということを生まれてから知らずに生きてきた私にとっては赤司君の答えは予想の斜め上をいった。
「ああ、記憶にはちゃんと残っているよ。今日は僕が生まれた日だ」
「赤司君の誕生日何で知ってると思う?」
「桃井だろう」
ばれていたかと思ったが情報を尋ねるには彼女が一番だった。なんせ同じ部活の人でも赤司君の誕生日を尋ねると全員が首を傾げるのだった。
自分から誕生日だとアピールする赤司君は想像がつかないが少しくらい自分のことをまわりに教えてくれたって良いと思う。
「それで名前はどうしてここへきたんだい?」
本を閉じてこちらを見る赤司君、いざ向かい合うと緊張してしまってむしろ本をずっと読んでくれていたほうがありがたかったかもしれない。
「あ、赤司君がお誕生日と聞いたのでぜひお祝いの言葉を贈りたいなあと思いまして、お誕生日おめでとう」
「僕はそれほど誕生日というものに執着はないけどお礼はいっておくよありがとう」
せっかく言葉を述べたのにそう返されてはなんだかすっきりしない。
「赤司君誕生日はねその人に生まれてきてくれてありがとうって感謝する日なんだよ。私はね赤司君が生まれてきてくれて嬉しいよ、感謝してるよ。誕生日だからじゃない、赤司君が生まれた日だから私はこうしておめでとうを言うんだよ」
そう言うと僅かに赤司君の表情が驚きに変わってからふっと笑顔をこぼした。
「名前はほんとにおもしろいね」
「そうでもないよ」
「いや、今まで正直誕生日なんて年をとる1つの行事にすぎないと思っていたが名前の言葉で少し特別な日になった気がするよ」
「ほんと?なら良かった」
「ああ、でも1つ年をとるということは1つ死に近づくんだ」
「どうしてそんな悲しいこと言うの」
「悲しくはないよ、僕はまだ未来があるから誰も死ぬなんていってないだろう」
「…でも」
「僕がいくつになって年を重ねても名前は毎年こうして祝ってくれるか?」
少しだけ寂しさが見えるその瞳に答えはもちろん決まっている。
「何年たっても祝うよ」
「感謝するよ」
そう言って笑みを浮かべる赤司君。何年たってもなんて言葉自惚れだったら恥ずかしいのだがプロポーズみたいだったよ赤司君。
なんて本人に言えるわけもなく、もしかしたら気まぐれで発した言葉だったのかもしれないしなあと考えていると、
「じゃあ僕も毎年名前の生まれた日にはお祝いするよ、2人で暮らすようになっても、年老いて相手のことが忘れる日がきても、もしかしたら思いがけない事故にあっても…そうだなその場合僕は上から見守るよ」
「赤司君…」
「僕と一緒に人生歩んで行かないか名前」
おかしいね今日は赤司君をお祝いするつもりだったのに私が喜んじゃっていいのかな。
「赤司君のこと忘れる日なんて来ないよ…」
頬につたう暖かいものを感じながらそう言った。
「そうだな、できれば名前にだけはずっと覚えていてもらいたいな」
すっと綺麗な手がのびてきてゆっくりと涙をぬぐう。
「生まれてきてくれてありがとう赤司君」
「僕と出会ってくれてありがとう名前」
改めてそう言うと少しの照れくささがある、赤司君を好きだなあとか思ったり意識したことはなかったけど今のではっきり分かったきがする。
私は赤司君が好きだ、この人と一緒に人生を歩んでいけたら幸せだと思った。
「プレゼントまだ用意してないの、ごめんね…」
謝罪の言葉をのべると少し笑ってから本を置いて両腕で私を抱きしめた。
「何もいらないよ僕は、名前がこうしているだけで充分だ」
今日は赤司君にほんとに感謝するばかりだ。
ありがとう赤司君。