「やっぱり男の人って胸が大きい方が良い?」


ある日俺の可愛い彼女の名前ちゃんが真顔でそんなことを聞いてきた、あれこの子どうしちゃったの急にそんなこと尋ねてくるだなんて。
名前ちゃんの胸の大きさは見る限り大きい方ではない、でも小さい方でもない、いわゆる標準のほうだと思う。男として、いや彼氏として何と答えるべきであるか。

「…いや、その前に何で急にそんなこと」

まずはそこからだ、普段そんなこと気にしないのに、女の子ってよく体重も気にしたりするけれど名前ちゃんの場合そんなことあまり気にせず食べ物はおいしそうに食べるし何があったのだろう。


「雑誌にね、かいてたの。私Cなんだけども男の人は皆できれば…彼女は大きい方が良い…って、」

思わぬところで彼女の胸のサイズを知ることができた俺ってラッキーなのかな、なんて考えたけれどそんな雑誌に惑わされる姿も可愛いなあと思ってしまう。

「雑誌にかいてるのは他の人の意見じゃん、俺は別にそんなの関係ないし名前ちゃんだから好きなんだけどな」

にっと笑うと顔を赤くするからまた可愛い。胸が大きくなくてもたとえ見た目が変わっても俺は名前ちゃんだから好きなのだ。

「そ、そっか…うん。そうだよね私も和成君だったら身長低くても好きだよ」

「そっかー、嬉しい」

とは言ったものの身長俺は別に低いわけではないけど今の発言はちょーっと気にかかっちゃうなって、俺が小さいんじゃないよ周りがでかいんだって真ちゃんとか。なんつーかバスケ部皆大きいし俺が少し小さくみえちゃうだけなんだよ、全国男子の平均はあるっつーの。ということで今度は俺も疑問がでてきた。

「女の子ってやっぱ身長高い男の人のほうが好き?」

「……私は、別に気にしたりしたことないかなあ。高尾君だから好きになったんだしね」

なんだそれ反則だろ、あーもう自分でさっき言ったくせにいざ言われるとこんなに恥ずかしいものなのか、それと嬉しさが入り混じる。絶対今顔赤いんだろうな俺。もーほんとかなわねえなあ。


「じゃあもし俺が145でも好きになってた?」

「なってた、でもそれじゃあ私ロリコンみたいね」

迷いもなく返してくれるだなんて思ってなかった。俺だってその場合よそから見ると年上好きのませたがきにしか見えねえけど恋は盲目っていうし


「ていうか名前ちゃんて周りの意見気にしちゃうタイプだったんだ」

俺としては雑誌でもほかの男の意見は気にしてほしくはない、相当な独占欲である。もちろん名前ちゃんだけにこんな風に執着してしまうのは自分でも自覚しているし普段はそれを見せないように意外と俺も必死だったりする。

「友達がね雑誌を持ってたから、見てみたの」

「へえ、そうなんだ…」

「それとね……、あの、か、和成君は…」

視線をせわしなく動かして何か言おうとするたびにまた口をとざす。何かいいたげにしている名前ちゃんに「何、言ってごらん」と言うと意を決したように


「今すぐにでもそ、その…、大人な行為ってしたいものなの…?」

顔を真っ赤にして尋ねる彼女に対し俺の思考はフリーズ。大人な行為?つまりそれはそういうことなのか、その雑誌がどんなんだかしらないけど俺としてはゆっくり段階をふんで名前ちゃんの気持ちが追いつくまで待とうと思っていたのに全くとんでもないことをしてくれる。理性を抑えきれなくなりそうになるときだってそりゃあ俺にもあるわけだが、体目当てとかそんなこと好きな子には思われたくないわけで。


「あのね名前ちゃん、俺はね今でも充分幸せで今すぐしたいってことはないけど…、まあ俺も男だし」

「じゃ、じゃあ…」

「そういうのはゆっくりでいいんだって、周りがどうとか関係ないっしょ、俺たちは俺達なんだから2人のペースで進んでいきゃいいじゃん?」

「……う、うん」

納得したようにうなずく彼女、そのままで急におとなになろうだなんて思わなくたって全然いいのに、俺の気持ちはずっと変わらないのに。


「で、でもね和成君。わ、私はね和成君とそういうのしても、大丈夫…だよ」

「…………」

今日の名前ちゃんなんだかやけに積極的というか俺の頭が爆発してしまいそうになるんだけどどうすればいいんだろう。彼女の方からOKが貰えた、ととらえてもいいのだろうかこれは。


「……ほんとにいいの?俺は嬉しいけど、なんつーか、そういうのって一生付き纏う経験になるっつーか…、」

「いいの、和成君だから」

俺だから、って言葉はすごく狡いしその言葉を言われると何でも許してしまいそうになる。彼女から紡がれる言葉だからこそ魔法の言葉のように俺の心をとらえて離さない。


「俺だって、名前ちゃんだから覚悟は決めてる」

一生責任を背負う覚悟も、はなっから俺は決まっているわけで。
名前ちゃんが嬉しそうに笑った後、思いだしたようにまた真面目な顔つきに戻って

「……雑誌っていろんなことかいててすごいの」

とりあえずもう名前にそういう方向の雑誌は読ませないようにしなければならないなと思った。今回のことは俺にとっても利益があったかもしれないが、俺が自分で彼女にいろいろ教えていくのも悪くないと考えている、薄っぺらい紙の上にのった情報に踊らされるより直接教えた方が早いだろ?



「ねー名前ちゃんすごいってどんな?」

彼女がこれからあわてふためくのを知っていて尋ねる俺はきっと俺は彼女に溺れてしまっているんだろう。照れた表情だって、慌てるとうまく言葉を言えなくなって目で訴える処だって全部全部すきでたまらない。